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キラは女の子です | ||
「メイリン!」 「シン・・・」 駆け寄ってくるシンの浮かべた怒りの表情に、メイリンは思わず回れ右をしたくなる。 別に後ろめたいことがあるわけでもないのだが。 「な、なぁに? どうか、した?」 「あの人は!?」 「えぇとぉ・・・、誰?」 「キラのことだっ。 フリーダムが無いんだっ。 メイリンなら、知ってるだろう!?」 確かに、知っている。 だがそれをなぜシンが怒るのか、メイリンには見当もつかなかった。 「あ、だって、ねぇ。 昨日、帰るって言っていたんでしょう?」 「予定を変えたはずだろう!?」 「・・・って、私に言われても。 副長はいいって言ったから・・・」 本当のことなのだが、シンの勢いに負け、まるで言い訳のような口調になってしまう。 「じゃあ、やっぱりもう出て行ったのか!?」 「う、うん、そう。 少し前に。 オーブの方へ飛んでいったけど・・・」 シンはそれ以上、聞いていなかった。 ちくしょうっ、と罵るように呟き、身を翻してどこかへ駆けていってしまう。 残されたメイリンは、呆然と立ち尽くして見送った。 *** 出てっただって? まだ、答えを聞いてないっ。 逃げないって、言ったくせにっ。 「!」 「・・・っと」 怒りのまま走っていたシンは、周囲への注意を怠っていたようである。 脇から出てきた人影にぶつかりそうになってしまった。 幸い、相手が身をかわしてくれ、事なきを得る。 「気をつけろよ」 「すみま・・・、あんたっ」 自分が悪い自覚はあったシンなので素直に謝罪を口にしかけ、しかし相手が誰かに気付いてその胸倉を掴んだ。 いや、掴んだつもりなのだが、気付けばシンは投げ飛ばされている。 床に四肢を伸ばすシンを、アスランが見下ろした。 「シン? 手加減したつもりだが、大丈夫か?」 「な、なにするんだ!?」 「それは、こっちのセリフだろう。 いきなり、人に掴みかかろうとして」 身を起こしたシンは、もっともな言葉に、ぐっと詰まる。 そして差し出された手を無視して、立ち上がった。 「艦内を、あんなスピードで走るもんじゃない」 「いいだろ、別に」 「よくない。 ぶつかれば、双方怪我をする危険がある」 「うるさいっ。 そんなこと、わかってるっ」 「・・・まぁ、今後は気をつけてくれ」 子供のように反発するシンの様子に、アスランは内心で苦笑する。 しかしそれを表に出すことなく、行き過ぎようとした。 だがシンが、言葉で止める。 「待てよっ」 「急いでいるんだろう?」 「俺は、あんたに用があるんだっ」 「俺に? ・・・なるほど」 アスランは、シンのこの行いの原因に思い至った。 「キラを帰したのが気に入らないか」 「俺との話が済んでいなかったんだっ」 「ああ、聞いてるよ。 フリーダムの、パイロットについてだろう?」 「そうだっ。 あんたも、知ってるんだよな? 代わりに、答えろよっ」 「知って、どうする? 復讐でもするつもりか?」 「・・・それは」 「もしそうなら。 君は軍を辞めるべきだな」 「なんだと!?」 激昂して、シンはアスランを睨む。 だがアスランも、より厳しい目でシンを見つめていた。 *** next |
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