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キラは女の子です | ||
「お帰りなさい、キラさん」 「マリューさん・・・」 フリーダムから顔を出したキラを、マリューが出迎えている。 彼女の前に降り立ち、顔を上げた。 目を合わせたキラを見て、マリューの優しい笑顔が曇る。 「・・・疲れた?」 「あ、いえ。 すみません、お待たせして」 「ううん。 実は、そんなに待っていないのよ。 ちょっと、出航前にゴタゴタしてて」 「なにがあったんですか?」 「いろいろと、ね。 まぁ、それは後で話すわ。 キラさんも話してくれるわね。 その、顔のわけ」 「・・・顔?」 「迷子の、子犬みたいよ。 大丈夫?」 強い決意で飛び出していったキラと、戻ってきたキラはまるで違っていた。 マリューの言うとおり、心細いような、泣きそうで泣けないような表情をしている。 まさにそんな気分でいたキラは、俯いてしまった。 そんな少女を、マリューはそっと抱きしめる。 「マ、マリューさん!?」 「たまには、お姉さんに甘えなさい。 言いたくなかったら、言わなくてもいいわ。 でも、口に出すと何かが変わるかもしれない。 ・・・アスラン君だけじゃなくて、私にも頼って欲しいわ」 「・・・っ」 マリューは、腕の中のキラが身を強張らせるのに気付いた。 「キラさん?」 「あ・・・」 「うん?」 「・・・」 キラは、両手をそろそろと動かし、マリューの背にまわす。 そして、ぎゅっとしがみついた。 *** キラが落ち着くのを待って、2人は居住区へと向かう。 泣きも話もしないキラに、それ以上マリューは問い掛けなかった。 「キラさんの部屋は、前と同じでいいわね?」 「はい。 そういえば、ラクスはどうしたんですか?」 いつもであれば、ラクスが一番に出迎えてくれる。 キラにとって、それが当たり前になっていた。 今ここにいないということは、彼女はオーブに残ったのだろうか? 「・・・ああ、ラクスさんは」 言いづらそうに、口ごもる。 だがちょっと間を置いて続けた。 「医務室で寝ているわ」 「え? 病気・・・いえ、怪我ですか!?」 コーディネイターが病気にかかることはほとんどない。 だが、いつもゆったりと、優雅に動くラクスが怪我をする事態など、キラには想像がつかなかった。 しかしマリューは肯定する。 「どうして!? 怪我は酷いんですか!?」 「落ち着いて、キラさん。 ラクスさんは、大丈夫。 怪我はしてないのよ。 ただちょっと、転倒した時に頭を打ってしまって。 安全をとって、医務室に押し込んだの。 今さっきも、私と来るって言うのを止めさせたところ。 だから、部屋に行く前に、医務室に行きましょうね」 「もちろんです。 でも、ラクスはなんで、・・・どこで?」 それに対する答えは、キラの想像を絶するものだった。 マリュー達の暮らしていたあの家に、武装した集団が攻め入ってきたというのである。 それも明らかに、コーディネイターの集団が。 バルトフェルドは彼らをザフトの特殊部隊だと判じたという。 「ザフトが? なんで、・・・いったい誰を、何の目的で?」 「わからないわ。 変な気配を感じて、すぐにシェルターに移動したの。 途中、ちょっと銃撃戦になったりしたから、私もラクスさんを庇いきれなくて。 あ、でも、子供達は全員無事よ。 カリダさんも、マルキオ師も。 ラクスさんは、・・・彼女は躓きそうになった子供を庇ったの」 「そんな・・・」 その後、アークエンジェルのある地下ドッグへ移動した。 そこで彼らを待っていたのは、あの家が爆発したという知らせ。 潜入と戦闘の証拠隠滅のためだろうと推測された。 *** next |
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