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キラは女の子です | ||
「アスランは、ミネルバと一緒に行くのね?」 「ああ」 力無く、諦めを含んだキラの声に、アスランもまた辛そうに肯定する。 そしてキラの上から起き上がり、ベットから降りた。 「キラは、もう行った方が良いな」 「そう・・・ね。 ラクスもマリューさん達も、待たせてしまってるから。 ・・・何?」 手を引いて立たせてくれたアスランが、自分を見つめている。 伏せていた顔を上げたキラはそれに気付き、首を傾げた。 ゆっくりと上げられたアスランの右手が、キラの頭に触れる。 そのまま輪郭をなぞるように耳元を通り、顎を伝って止まった。 キラは軽く触れるだけの指先に、ちょっとくすぐったそうな顔をする。 「なぁに、アスラ・・・!?」 唇に触れるアスランの指に驚き、キラが硬直した。 アスランの左手はキラの右手を強く握っている。 右手はキラの顔を上向かせており、親指が動きの止まったキラの唇をなぞった。 その微かな感触に、キラの唇が震える。 「忘れないで、キラ。 俺が離れるのは、今だけだ。 戦争なんか続けさせない。 続けさせるわけにはいかない。 終わらせる。 だけどそれは、俺が力を尽くす。 そして俺は必ず、生きて戻る。 キラのところに、戻るよ。 忘れないで・・・」 真摯に語るアスランを見上げていたキラは、不意に近づく翠の瞳に咄嗟に目を瞑った。 唇に触れる、先ほどとは違う感触が、アスランの唇だとすぐに気付く。 キス、されているのだと、キラの頬に血が上った。 頭を後ろに引き、唇が離れる。 すると右手が一際強く握られ、後退りしようとした足は止まった。 「忘れないで。 俺は、キラのものだ。 そして、キラは俺のもの。 俺の、何よりも大切な・・・。 だから、決して無理をしないでくれ。 出来ればもう、フリーダムには乗らないで欲しい。 キラには向かない。 もうキラが戦う必要は無い」 言っても無駄だろうと、わかっていてもアスランは言わないではいられない。 そもそも、キラが戦いたくないと思っていることなど百も承知だ。 ただ現実が、彼女を戦いへといざなっていることも。 俺も、進歩がない。 わざわざキラから離れるなんて、な。 赤い顔をしたまま潤んだ目を伏せるキラを見下ろしながら、アスランは自嘲した。 「・・・ラクスとカガリの怒りが怖いな」 「え? ラクスとカガリが、何?」 「いや、戻った時の2人には怒られるだろうな、と」 「そう・・・、そうね。 プラントに戻るだけならともかく。 ザフトに・・・軍に戻ったことを知れば・・・」 「違うよ。 ああ、もちろんそれもあるんだけど。 ・・・キラを泣かせて、1人にすることにだよ。 特にカガリには、殴られるだろう」 「アスラン・・・」 苦笑し、身を引くアスランの手からも力が抜け、キラの右手が自由になる。 と、その手で、今度はキラがアスランの手を掴んだ。 「約束よっ」 「キラ?」 「絶対、・・・絶対に戻ってね。 もう二度と、イヤだから。 会えなくなるのも、・・・戦うのも」 「約束する。 ここで・・・ザフトで出来ることを済ませたら、必ず戻る。 キラがいる場所へ、必ず」 「・・・うん。 待ってる。 そうだ、ねぇ、アスラン。 あのモビルスーツ、弄らせてくれる?」 もちろん、そんなことは出来ない。 軍の最新鋭機を、部外者に触らせることなど論外だ。 首を横に振ろうとしたアスランは、しかし。 「フリーダムとの専用回線を確保するの。 そうすれば、もし近くにいれば話せるわ」 事態がどう転ぶかわからない今、その必要性は考えるまでも無い。 結局、ため息一つで了承した。 *** next |
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