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キラは女の子です | ||
「放してっ」 「キラ」 強く抱きしめられた上に押し倒された形で、キラは身動き一つ出来ない。 自由になるのは声を出すことだけだ。 「放してったらっ。 馬鹿アスランっ」 「ば・・・って・・・」 「馬鹿でしょっ。 勝手に決めてっ。 ・・・るって言ったのにっ」 「え?」 「一緒にいてくれるって言ったじゃないっ。 なんだってまた、軍に戻るのよ!? ・・・もうあんなの、イヤ・・・」 「キラ・・・」 キラの体から力が抜けたのを感じ、アスランがゆっくりと体を起こす。 彼女の両脇についた手で上体を支え、見下ろした。 キラは目を逸らし、頬を濡らしている。 アスランが手をその頬へと伸ばすと、ゆっくりと視線を合わせてきた。 無言で見つめあうと、キラの手がアスランの手へと重なる。 「また戦うの? この手は、また命を奪うものになるの?」 「・・・っ」 アスランの顔が、苦しげに歪んだ。 情勢が思わぬ方に進んでいる。 オーブが連合と同盟を結んだことで、今度もまた、世界は2色に分かれてしまった。 コーディネイターであるキラはオーブにはいられない。 まして、その力をまたも示してしまった。 彼女はまた、戦わなくてはならなくなるだろう。 しかしそれがどんな立場でのことになるか、今はまだわからなかった。 アスラン自身が一つの陣営に身を置く以上、キラと対立しない保障はない。 「プラントで、何があったの? アスランをその気にさせたのは、誰?」 キラはアスランをじっと見つめ、穏やかに、だが少し哀しげに問いかけた。 「議長に会いに行く前、その気は無いって言ってたでしょう? なにか、あったんでしょう?」 プラントでの話をして、とキラが乞う。 アスランは小さく頷くと、宇宙に上がってからの出来事を詳しく話し出した。 *** プラント市民の様子は、キラもわかっていたのだろう。 またも行われた核攻撃。 それによる、連合、ひいてはナチュラルへの反発。 だがそれを治めた方法には。 「ラクス・・・って。 だってラクスは」 「オーブにいる。 わかってるよ。 彼女は、議長が仕立てた偽者だ」 「アスラン?」 「話をした。 本名は、ミーア・キャンベル。 確かに、見かけはよく似ていた。 俺も一瞬、目を疑ったほどね」 「でもなんで? どうして、ラクスの偽者を議長が?」 「プラントをまとめるため、だそうだ。 確かに、ラクスの名でミーアがした演説はプラント市民の気持ちを落ち着かせた」 「でもそれは・・・っ」 「褒められたことじゃあ、ない。 まして、当のラクスの意思を無視してのことだ。 その上、俺まで協力を求められた」 「・・・何を?」 「ミーアをラクス・クラインと扱って欲しい、とね。 婚約者、アスラン・ザラとして」 「!」 「もちろん、断った。 だいたい、俺はもう、ラクスの婚約者じゃない。 ミーアもラクスも関係ない。 俺にはキラがいる。 お芝居だろうとなんだろうと、キラ以外を恋人扱い出来ないからね」 「アスラン・・・っ。 そういう問題じゃないでしょ!?」 含みを込めた言葉と笑みに、キラの顔が赤く染まった。 抗議しながらも恥ずかしそうな彼女の様子に、気を良くしたアスランは、そっとその頬に口づける。 「そういう問題だよ。 もちろんラクスのことは好きだけどね。 キラ以外の女性の手をとるつもりは、まったく無い」 「アスラン・・・」 「だから、議長にもきっぱりと断った。 そして妥協案は、偽ラクス・クラインの正体を暴かないこと」 「でも」 「当面は、ね」 「は?」 「その交換条件が、あのモビルスーツとこれだ」 アスランがキラに示したのは、襟元に付けられた、翼を模した徽章。 議長がアスランに与えた、力の証だった。 *** next |
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