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キラは女の子です | ||
「力が、必要だと思ったからだよ」 「でも、力は争いを呼ぶ・・・」 反論しかけて、キラの声は途切れる。 自分が、まさに力・・・フリーダムを使ったことを思い出したからだ。 「力は争いを呼び、守るために力を欲する。 わかっていても、既に争いは起こっているんだ。 そしてもう、簡単には止まらない。 せめて出来ることを、俺はしたい。 キラも同じだろう?」 「・・・うん、そう・・・よね」 「守りたいものは、小さくはない。 ・・・でも、まさかこんな風になるとは思わなかったけどな」 「何が?」 「オーブ」 「!」 キラの目が見開かれる。 アスランの言いたいことに思い至ったからだ。 そんな彼女をじっと見つめながら、アスランは言葉を続ける。 「オーブは中立を貫くのだと、思っていた。 だからこそ、ザフトに戻ることを承諾したんだ。 それなのに連合と同盟を結ばれてしまってはな」 「敵、なの? オーブは、プラントの敵?」 「・・・オーブの今後の出方次第、だろう。 ただ、このミネルバは・・・」 はっきり語られずとも、キラにもわかった。 この艦の誰もが、オーブによって連合軍の前に差し出されたことを知っている。 自国の代表を送り届けてくれた、ミネルバを、だ。 今はまだ、軍へは情報は伝わってはいないだろう。 けれど、ミネルバがカーペンタリア基地に着けば、確実に状況は変わるのだ。 オーブはザフト軍の、つまりはプラントの敵性国家と判断されるだろう。 「アスランは、この艦と行くのね?」 「ああ、そうなる」 「私は、ここにはいられない・・・よね?」 「・・・っ、当たり前だっ」 「怒鳴らないで。 わかってるんだから」 「冗談でも、そんなことを言わないでくれ、キラ」 「だって、当然だもの。 私は、あの機体をザフト軍から奪って。 ううん、それ以前に、私は連合のパイロットだったんだから。 私自身が、本当は敵として扱われて・・・」 「違うっ。 キラ、そんなことは今更だ。 そのことで、俺は反対するんじゃない」 「・・・え?」 意外なことを言われ、キラは目を瞬いた。 伸ばされたアスランの手が、彼女の両肩を掴む。 痛みに顔を顰めるキラに気付かず、真剣な顔を近づけた。 「キラは、もう軍に近づいちゃいけない。 フリーダムは、・・・キラのフリーダムは現在でも最強だ。 少なくとも、俺のセイバーはフリーダムよりも性能が落ちる。 ザフトの最新鋭機であるにも関わらず、ね。 そんなキラがザフトに来れば、利用される。 戦いを、強要されるんだ」 「私、が・・・?」 「そうだ。 軍に入る、入らないじゃない。 確実に、取り込もうとするだろう」 「じゃあ、なんで!? なんで、アスランはそんな軍に戻るの!?」 「言っただろう、俺は力が欲しい。 守りたいものを、守りきる力が。 ・・・キラを守りたい」 「矛盾してるわっ。 ザフトは、プラントを守るのでしょう? 私は、オーブにいるのよ? ・・・もう、いられないけど。 でも、・・・ううん、それだけじゃない。 私は、守って欲しいなんて」 「俺が、そうしたい。 キラの傍で、キラだけを守るならできるかもしれない。 けど、それじゃあ、この戦火は消えない」 否定したいのに、キラは言葉が出てこない。 別離の後に、敵として対峙し、再び手を取り合うことの出来た過去。 それをまた、繰り返すのだろうか? 今現在、敵ではなくとも、今後の情勢でどうなるかは誰にもわからない。 「また、会えなくなるのよ?」 「それ・・・は」 アスランは目を逸らした。 「オーブが連合と同盟を結んだから、私はオーブにはいられない。 ・・・フリーダムで出たから、そもそも戻れないけど。 マリューさん達が、迎えに来てくれる。 ねぇ、アスランも、一緒に行こう?」 「それは、出来ない」 「アスラン・・・」 「すまない。 復隊した以上、簡単に除隊できない」 「バカ・・・っ」 再び滲んできた涙に、キラはアスランから離れようと身をよじる。 力の抜けかけていたアスランの手は肩から簡単にはずれ、しかし代わりに、その胸に抱きこまれた。 *** next |
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