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キラは女の子です | ||
「ルナマリア?」 「・・・っ」 壁に寄りかかって立っていたルナマリアが、驚いたように声の主を見る。 「1人? キラは?」 「こ、この・・・、中にいます 1人になりたいって言われたので」 「そう。 悪かったね、ありがとう」 微笑みながら礼を言い、アスランは歩みを止めずにルナマリアの前を通り過ぎた。 その袖を、ついと後ろに引かれる。 「・・・何か?」 「あの、あの人、泣いて・・・」 「・・・」 「あなたのことと、シンのことで。 混乱、してるみたいです」 「わかった」 頷くと、ルナマリアの手がアスランの軍服から離れた。 彼女の肩をそっと叩き、アスランは部屋へと入る。 それを見送ったルナマリアは、小さく息を吐き、格納庫のある方へと歩き出した。 *** キラは椅子に座り、机に肘を突いて、組んだ手の上に額をのせている。 シュンッという扉の開く音には気付いたが、顔を上げなかった。 「キラ」 コツコツと近づいてきて、間近に呼ばれて初めて、キラは相手を見る。 「アスラン」 「ごめん」 「なんで、謝るの?」 「キラを泣かせて一人にしたから」 「・・・別に、アスランのせいじゃないもん」 「そうか?」 「・・・違うもん」 ぷい、と。 キラは、潤んだ目のまま横を向いた。 「グラディス艦長から、話を聞いた。 キラはこの艦・・・いや、彼を。 シンを守りたかったんだな」 アスランはキラの横に膝をつき、彼女の手をやさしく握る。 びくりと反射的に振り返ったキラと、アスランの目が合った。 途端、ふわりと微笑んでみせたアスランに、キラは視線が逸らせなくなる。 固まってしまったキラを、アスランは両手で抱き寄せた。 「きゃっ」 椅子から転げ落ち、キラは驚いて目の前のアスランの首に抱きつく。 しがみついてくる彼女を、アスランはそのまま抱き上げた。 「な、なに!?」 「そのままじゃ、話がし辛いからね」 1人部屋であるここには、残念ながら話をするためのスペースが無い。 部屋を見回したアスランは、結局キラをベットの上に降ろした。 自分もその端に腰掛ける。 手を伸ばし、キラの頭を撫でた。 「怖かっただろう?」 「アス・・・」 「ごめんね、一人にして」 「・・・っ、アスランっ」 胸に抱きついてきたキラを、アスランは優しく抱き返す。 緊張が一気に緩んだのか、キラはそのまま泣き出してしまった。 「私、私・・・っ」 「うん」 「守らなくちゃって・・・っ」 「うん」 「せめて、シンは、って」 「うん」 「・・・怖かったの。 また、誰かの命を奪ってしまうかもしれない。 もう、死なせないって思ってたのに。 でも、結局私はあの人を殺してしまった。 だから忘れていたかった・・・のに」 「でも、キラは選んだんだろう? 決断するのは、辛かったね。 そんな時に、傍にいないなんて。 すまない、キラ」 アスランの胸の中で、キラは無言で首を横に振る。 ぎゅっと、アスランの体に回されたキラの腕に、力が篭った。 そのまま言葉を発しなくなった彼女の髪を、アスランの指が梳く。 長い沈黙が続き、やがて涙の止まったキラがゆっくりと顔を上げた。 「アスランは、必要と思うからプラントに行ったんでしょう? だけど、これはなんで? なんで、またこの軍服を着ているの?」 涙を拭いながらの、問い。 キラの顔にも声にも、不安が色濃く表れていた。 *** next |
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