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キラは女の子です | ||
「放せよ、もう」 「・・・彼女を、追うなよ?」 ぼそりと、明らかな不機嫌顔で開放を求めたシンから、ヴィーノが手を放す。 ヨウランもゆっくりと離れ、シンが自由を得た。 途端に歩き出す彼の腕を、左右から友人2人がなんとか掴む。 「なんだよ?」 「待て、待て、シンっ」 「追うなって、言っただろうがっ」 足を止めたシンに、口々に叫ぶヨウランとヴィーノ。 そんな2人を見もせず、シンは大きく息を吐いた。 「行かねぇよ」 「だ、だけど」 「インパルス、修理するんだろ? 俺も行かなくてどうするんだ。 お前らこそ、行かなくていいのか?」 「「あ」」 シンの指摘に同時に声を上げた整備士達は、顔を見合わせてから慌てて駆け出す。 さっさと歩き出していたシンを、バタバタと追い越していった。 「時間は、ある。 キラはまだこの艦にいる。 それに、知っているのは彼女だけじゃないんだからな」 自分に言い聞かせるように呟く。 その脳裏には、タリアに連れられていったアスランの姿が浮かんでいた。 *** 「ここで、待っていましょう」 通信機を通して艦長と話をしたルナマリアは、キラに座るよう勧める。 素直に従った彼女に、飲み物を用意した。 もちろん、自分の分も。 それで、ルナマリアが自分に付き合ってくれると気付き、キラは礼を言った。 「ありがとう」 「あ、これはタダですから」 「いえ、ジュースのことじゃなくて。 すみません、忙しいんじゃないですか?」 「ん・・・まぁ、そうですね。 でも、私のザクはかなり損傷してるから。 ざっとの確認は済んでいるんで、とりあえずは整備の仕事です」 「・・・ああ、そっか」 キラはちょっと不思議そうに説明を聞き、なにかに思い至ったというように頷く。 「そうですよね。 そのために、整備の人達がいるんですものね」 「そりゃ・・・、そうですよ。 もちろん、システムなんかは自分で見たりもしますけど。 専門の技術者に任せるのが一番でしょう。 ・・・オーブは違うんですか?」 「え?オーブ? ・・・ここと、同じだと思いますけど、たぶん」 「知らないんですか?」 「・・・」 知らない。 そう答えていいものかと、キラは沈黙する。 言うのは簡単だが、なんだかさらに根掘り葉掘り訊かれるような気がしたのだ。 それは、実は正しい推測だったのである。 答えがもらえないならと、ルナマリアはふと思いついたことを口にした。 「じゃあ、別のこと訊いちゃおうかな」 「?」 「モビルスーツの操縦、どこで習ったんですか? フリーダムって、操るのが大変だって聞いてますよ。 あのアスラン・ザラなら、私にも納得なんですけど。 キラさんも、元ザフト軍なんですか?」 今でこそ、ナチュラルもモビルスーツを使う。 連合にも、オーブにもモビルスーツはあるが、しかしそれはナチュラルのために作られているのだ。 キラがコーディネイターであることはわかっている。 ならば、ルナマリアがキラをザフト出身と考えるのも無理はなかった。 それはキラにもわかるが、これも答えられるものではない。 結局、またも口を開かないまま、俯いた。 「まぁ、いいんですけどね。 でも、シンには教えてあげてくれません? 先の戦争の時に、フリーダムに乗っていたパイロットを」 「・・・」 「言えない、ですか? まさか、知らないわけはないですよね。 黙っているってことは、・・・そういうことだと思っていいですか?」 「・・・あなたが」 言いながら、キラは顔を上げる。 立ったままのルナマリアを首を傾けて見上げ、目をしっかりと合わせた。 「シンのために言っているのは、わかります。 その問いの答えが、私の中にあることも、確かです。 だけど、ならば私は、彼に直接話すべきだと思います」 でも少しだけ待ってください、と。 泣きそうに顔を歪めたキラに、ルナマリアは慌てる。 「ごめんなさい。 今、頭の中がぐちゃぐちゃで・・・。 アスランがどうして、って。 シンとも話さなくちゃって思うんですけど。 だけど・・・っ」 キラの目から、涙が溢れ出した。 *** next |
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