no title - 76


キラは女の子です


「あ、ま、待って、アスランっ」



タリアに続いて歩き出したアスランに手を取られ、ついそのまま従いそうになったキラは、一歩踏み出したところで慌てて止まる。



「キラ?」

「私、フリーダムを移動させないと。

 邪魔になってるから」

「・・・どこにある?」

「アスランはダメ。

 タリアさんを、これ以上待たせたらいけないでしょう。

 私はすぐ、追いかけるから。

 それとも、話・・・、長くなる?」

「いや。

 それほど時間はかからないだろう。

 だが、1人にさせるのは心配だ」

「でも・・・っ」



キラだって、彼と離れたくなどなかった。

しかし彼女の理性がそれを止める。

さらに言葉を重ねようとしたキラを、別の声が救った。



「私が、彼女に付き添いますから。

 あなたは艦長の所へどうぞ」



いつの間に近寄ってきていたのか、ルナマリアが2人のすぐ前でニコリと笑む。

そのまま強引にアスランからキラを引き離した。



「大丈夫ですよ。

 艦長が許可したんです。

 それに、キラさんもこのままパイロットスーツでは辛いでしょう。

 着替えをお貸しします」



ですから、さっさと行ってください。

そう言わんばかりなルナマリアに、キラはここぞとばかりに頷く。

アスランはキラを見て、ルナマリアを見て、もう一度キラを見た。



「1人で、平気か?」

「・・・うん」

「・・・わかった。

 ルナマリア、キラを頼む」

「了解しましたっ」



敬礼をしてみせるルナマリアに頷き、キラをちらりと見やってから、アスランは踵を返す。

その背中を見送るキラの視界に、ルナマリアが立ちはだかった。



「さぁ、キラさんはあっちですよ」

「待てよ、ルナっ」

「なによ、シン?」

「キラとは話している途中だったんだ。

 こっちが先だ」

「・・・聞いてなかったの?

 彼女はモビルスーツの移動後、すぐにアスラン・ザラのところへ行くの。

 フェイスの、彼のところへね。

 シンと話していたら遅れてしまうじゃないの。

 時間は出来たんだから、後にしなさいよ」

「そんなの、関係ないっ」

「関係あるわよ。

 とにかく、あれ、動かすのが先だから。

 でないと、あなたのインパルスだって壊れたままよ。

 それじゃ、困るでしょう?」

「そんなことは」



言いかけた口が、ヴィーノの手で塞がれる。



「頼むな、ルナ。

 シンはこっちで引き受けるからさ」

「了解。

 さ、行きましょう、キラさん」



ルナマリアに背を押され、キラは肩越しにシンを振り返りながらも、歩を進めた。

ヴィーノとヨウランに押さえつけられたシンにはどうにも出来ない。

睨むシンと目が合うと、キラは目を伏せ、それ以上後ろを見なかった。



***



キラがフリーダムをどけると、後についてきていた整備士達がてきぱきと動き出す。

インパルスを、専用の格納庫へと移すのだ。

それを横目に、キラはルナマリアに連れられ、パイロット待機室へ。



「これ、どうぞ」

「・・・また、すみません」

「かまいません。

 それより、話、してもいいです?」

「・・・話せること、なら」



自分のロッカーから予備の服を取り出し、キラに着替えさせながら、ルナマリアは興味津々という顔つきで質問を始めた。



「恋人、ですか?」

「・・・え?」

「アスラン・ザラ、ですよ。

 前に幼馴染ってのは聞きましたけど。

 あの人と、恋人なのかなって思って」

「・・・」



意外な質問に思わず手を止めたキラは、ルナマリアへと振り向く。

彼女は、真面目な顔をしていた。



「ま、違うって言っても信じませんけど。

 でもほら、婚約者がいましたよね?」



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