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キラは女の子です | ||
「あんたが、フリーダムに乗ってきたんだな?」 「・・・」 答えなくてはと思うのだが、俯くキラの口は微かに開いては閉じられる。 声が、言葉が出て来なかった。 そんな彼女に焦れたのか、シンがキラの両腕を掴む。 はっとしたように顔を上げたキラとシンの視線が絡んだ。 「知ってるんだろう、キラ? 俺の家族を、マユを殺したのは、誰なんだ!?」 「・・・っ」 キラを揺さぶりながら、シンの手に力が篭っていく。 掴まれた腕が痛かった。 だがそれ以上に、心が痛む。 目を逸らしたい。 そう思いながらも、彼の気迫に圧されて動けなかった。 「知らないはず、無いだろう? あれを、どこから持ってきた? どこにいるんだ、あれのパイロットは? 生きているんだろう!?」 「生きて・・・る」 「どこにいる? 人を殺して、のうのうと生きているんだろう。 褒め称えられて、さぞいい気分でな!」 シンの憎しみが、その言葉がキラを苛む。 彼の目はキラを見ながら、その先にいるはずの家族の敵を見据えていた。 けれど、それはキラ自身なのである。 しかしそうとは知らないシンの友人達は、慌ててシンをキラから引き離そうとした。 「や、止めろって、シンっ」 「そんなに詰め寄ったら、答え難くなるだろう!?」 両肩を掴まれたシンだったが、まったく気にしない。 尚もキラに言い募ろうとするその時、格納庫にサイレンが響いた。 それと共にメイリンの声による艦内放送が事態を告げる。 「モビルスーツ一機が、右舷より進入します。 要員は退避してください」 聞いた途端、ヴィーノとヨウラン、そしてフリーダムに取り付いていた整備士達が、一斉に身を翻した。 キラとシンとを置き去りにし、パタパタと走り去る。 「・・・行くぞ」 「ど・・・こへ?」 「いいからっ」 ゆっくりとキラの腕から手を離したシンは、代わりに右の手首を握った。 そのまま踵を返して早足に歩き出す彼に、引きずられるようにキラも歩かざるを得ない。 「あの、・・・放して、・・・歩きづらい」 「やだよ。 放したら、逃げるかもしれないからな」 「に、逃げない、から・・・」 「悪いけど」 唐突に立ち止まったシンに、キラはたたらを踏んだ。 「信じられない。 俺は、答えを聞くまで放さない」 「・・・シン」 振り向くことなく再び歩き出したシンの足は、しかし先ほどよりはやや遅くなっている。 それでも早足であることには変わりないのだが、キラへの気遣いが感じられた。 キラはもう、黙って従うしかない。 無言のまま進む2人は、やがて人だかりのある場所までたどり着いた。 頭を巡らしたシンは、見つけたヴィーノに近づく。 「赤いモビルスーツ・・・。 これがさっき言われた奴?」 「そ」 気が立ったままのシンは、邪魔をしたそれを睨み上げた。 その赤い機体のコックピットハッチが開く。 降りてきた人物は、紫色のパイロットスーツを着ていた。 見慣れないその色に、シンの眉根が寄る。 そちらに気を取られていたシンは、彼の横でキラの目が見開かれたことには気づかなかった。 「なんだ、あいつ?」 「しっ。 よく見ろよ、あの人の胸元」 「・・・フェイス?」 フェイスであれば、ここにいる誰よりも上官ということになる。 気づいた誰もが慌てて敬礼をした。 シンと、そしてキラとを除いて。 「おいっ、シンっ」 しかしヴィーノに脇腹を肘でつつかれ、不本意そうに敬礼する。 そんな彼らの前に歩み寄ってきた相手は、ゆっくりとヘルメットを外した。 「アスラン・ザラ!?」 思わず、というように上げられたのはヨウランの声。 だがそれは、この場の全員の声でもあった。 *** next |
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