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キラは女の子です | ||
「ルナ」 「なによ?」 さっさと医務室から出て行こうとしたルナマリアを、シンが引き止める。 彼女は、いかにも嫌そうに振り返った。 いつもの彼女らしくなく、目を合わせようとしないその様子に、シンの不安が増す。 「キラは、・・・彼女はどうしたんだ?」 先ほどの騒ぎは、奥の部屋にいたシンにも聞こえていた。 慌てて立ち上がろうとしたのだが、看護師たちに押さえつけられてしまったのである。 その上、戻ってきた医師によって諭された。 曰く、他国の人間を自由にさせておくことはできない。 前回とは事情が違う、と。 納得しきれたわけではないが、迷ううちにキラはルナマリアが連れて行ってしまった。 「艦長室よ。 艦長と、副長が話しをするって」 「乱暴なことは」 「してないわよ。 する必要も、無いし」 「だけど、さっきは」 「あの時はっ。 あれは、咄嗟のことだったからよ」 言い訳するように話すルナマリアを、シンはじっと見つめる。 居心地が悪いのか、口早にシンを促した。 「とにかく、着替えなさいよ。 手当ては、終わったんでしょ? 私は、機体の様子を見に行きたいから先に行くわ。 じゃあね」 「待てよ!」 「・・・なによ」 「何、隠してる?」 「隠してなんか、ないわよ」 「・・・怪しい」 明らかに挙動不審な彼女に、シンは思いついたことを聞く。 「キラは何でここに・・・ミネルバにいたんだ? ずっと乗っていたのか?」 「わけないでしょっ」 「だよな。 キラ、パイロットスーツを着ていた。 見たことの無いデザインだった」 「・・・そうね」 「なんでだ?」 「知らないわよ。 今、それを艦長達が聞いているんでしょうけど」 「そもそも、あの戦闘はどうなったんだ?」 シンが憶えている限り、戦況は最悪だった。 絶対多数の連合艦隊に対し、ミネルバ一隻とモビルスーツ3機。 唯一飛翔能力を持つシンのインパルスは、墜とされた。 あの状況から一転。 今のこの艦は戦闘配備は解除されている。 でなければ、戦闘員であるルナマリアがここにこうしていられるわけがなかった。 「勝った、のか?」 迷う仕草を見せたルナマリアは、ちらりとシンを見て、大きくため息を吐く。 諦めたように口を開いた。 そしてどこか、悔しそうに。 「助けられたのよ」 「・・・誰に? 援軍が来たのか?」 「いいえ」 「オーブ、なわけないよな」 「当然」 「じゃあ」 「彼女、よ。 キラ・ヤマト。 あの人が、モビルスーツでね。 インパルスを海から引き上げたのも、そう」 話し始めてしまえば、彼女の口は滑らかだ。 「私たちがあんなに苦戦したのにね。 彼女はあっさり撃退したの。 信じられる? 目を疑ったわよ」 「1人で?ほんとに?」 「本当のことよ。 そりゃ、機体性能が良いんでしょうけど。 多分、私があれに乗っても無理ね」 シンもルナマリアも、紅い軍服を纏っていることに誇りを持っている。 その彼女が、キラに劣る自分を認めたことに、シンは目を見張った。 それに気づき、ルナマリアはキッと彼を睨む。 「なによ?」 「あ、いや、・・・なんでもない。 それより、ああ、と、キラの機体って?」 「・・・自分の目で見なさいよ。 さっさと着替えて、格納庫に行ってみればいいわ」 「あ、おい、ルナ!?」 なぜか逃げるように立ち去る彼女を、シンは呆然と見送った。 *** next |
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