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キラは女の子です | ||
「本気ですの?」 「・・・まだ言うの、ラクス?」 ピンク色のハロ・・・ピンクちゃんを抱えて俯くラクスに、キラは困ったように横を見る。 白い無機質な壁に囲まれた室内には、キラとラクス、そしてバルトフェルドがいた。 キラの視線を受けて、パルトフェルドも口を開く。 「本人がそう決めたんだ。 俺たちがどうこう言うことじゃない。 ・・・らしくないな、ラクス・クライン」 「ですがっ。 私はもう、キラに傷ついて欲しくありませんわ。 あの時は、それが必要なのだと思ったから。 だから、キラ、あなたに新たな剣をお渡ししたのです。 あなたと、そしてアスランにとっても」 最期の一言に、キラの顔色がわずかに変わった。 そしてラクスは、それを見逃さない。 「アスランが、戻るのを待つ方がよろしいのではありませんか? 今のあなたは1人ではないのです。 他人の意見や状況に流されての決断は、もちろん良いことではありませんけれど。 ・・・1人で結論を出すことぱかりが、良いことではありませんわ。 信頼する相手に相談することも、大切なことです」 「・・・アスラン、いないもの。 こんな状況で、プラントに連絡なんてとれないでしょう? マリューさんも、バルトフェルドさんも了承してくれた。 ラクスだって、一度は頷いてくれたんだから」 「でも、キラ。 ・・・カガリさんには、言っていないのでしょう?」 「言えないわ。 カガリは、私とは立場が違う。 責任も違う。 第一、オーブを出ると言っただけで、反対されたもの。 こんなの、相談しても止められちゃうだけだから」 だから鍵を出して、とキラはラクスを促した。 そんなキラから、ラクスは手元のハロに視線を落とす。 黙り込んでしまったラクスに、しかしキラはそれ以上何も言わなかった。 無言で、ラクスが鍵を取り出すのを待っている。 そう、キラはラクスがそうしてくれるとわかっていた。 ただただ、キラを心配していくれているだけで、彼女はちゃんと知っている。 ここでキラが行かなければ、無駄に命が失われてしまうだろうことを。 そして事実、そうなった。 ラクスの指がハロの背面に触れ、ハロがぱっかりと口を開く。 そこには、金色と銀色、一対の鍵が並んでいた。 「ありがとう、ラクス」 キラの手がそっと、2つの鍵をとる。 ラクスの目は、その指先が一瞬ためらったのに気づいた。 だから、キラと、そしてバルトフェルドがそれぞれ鍵穴に差し込んだ時、鋭い声でキラに問いかける。 「キラ」 「・・・ラクス?」 鍵に手を掛けたまま、キラはラクスを振り返った。 「最後に、一つだけ、よろしい?」 「・・・何?」 「それは、戦うための力です。 命を、奪うことの出来る力です。 守るために必要でも、そのことにかわりはありませんわ。 そして、これは始まりです。 始める以上、最後まで貫かなくてはなりません。 それだけの覚悟、出来ておりますわね?」 「・・・出来てなんか、無い」 「キラ!?」 「出来るわけ、ないじゃないっ」 叫ぶキラとラクスが睨みあう。 「戦いたくなんか、ないんだからっ。 もう私の手は、たくさんの命を・・・。 あんなのは、もうイヤだもの。 だけど、だからって彼らを見殺しになんか出来ないでしょう? そりゃ、私が出たからって敵うとは限らないけど。 でも、連合の艦隊に囲まれたら、ミネルバだってそうもつわけない。 みんな、いい人だわ。 命がけで、地球を守ろうと力を尽くしてくれた。 それを、私はこの目で見てる」 「ですが、迷っているなら、余計な手出しというものです」 「迷っているわけじゃないっ。 そんなんじゃ、ない。 戦いたくない気持ちと、彼らを助けたい気持ちは、決して相反するものじゃない。 わかって、ラクス」 キラは鍵から手を離し、既にラクスと向き合っていた。 対峙する2人に、バルトフェルドが口をはさむ。 「まぁ、戦いたくて戦うような奴は、そうはいないわな。 いいんじゃないかな、歌姫さんや。 今回は、巻き込まれたわけじゃあない。 本人がそう決めたってんだから。 ま、遠からず俺たちもこの国を出なきゃならない。 それに彼らは、同胞だ。 助けられるものなら、助けたいのは俺も同じだ」 その言葉を聞きながら、しかしラクスはキラを見つめ続けていた。 そして目を伏せたのは、ラクス。 わかりましたわ、と小さく呟く彼女に、キラもありがとうと小さく返した。 *** next |
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