no title - 60


キラは女の子です


「キラ、来てたのかっ」

「・・・カガリ」



ミネルバの出航を見送っていたキラは、駆け寄ってくるカガリを待つ。

今、キラはある決意をしていた。

しかしそれをカガリに伝える気はない。

だから、ごく普通に接しようと、キラはふわりと微笑んだ。



「久しぶりだね、カガリ」

「ああ。

 良かった、元気そうだな」

「カガリは、ちょっと疲れてる?」

「ん・・・、まぁ、忙しくてな。

 その、・・・聞いたよな」

「同盟のこと?」



目を泳がせていたカガリは、キラがあっさりとそれを口にしたことで、やっと目を合わせる。

だが、すぐに俯いてしまった。



「そうだ。

 キラには・・・、いや。

 キラだけじゃないな。

 この国に住む、コーディネイター全員に申し訳ないと思ってる」

「なら、なんで同盟を受けたの?」

「・・・この国を、また戦場にするわけにはいかないんだ」

「それは、カガリの考え?」

「・・・」



意地の悪いことを言っている自覚が、キラにはある。

それでも、・・・それでも、だ。

カガリに非が無いとは言えなくても、カガリばかりのせいにもできないとキラにもわかっている。

わかっていても、言わないではいられなかった。

せめて、誰かに。

その相手がカガリなのは、彼女に甘えているからだろうかと、キラは思う。



「連合と同盟を結べば、オーブは助かるの?」

「・・・前の時のように、攻撃を受けるのは」

「そうね。

 連合は、同盟国に攻め込んだりはしないでしょう。

 連合は、ね」



でもこれで、オーブは中立ではなくなった。

そして、プラントが・・・敵。

わかってる、カガリ?



「だけど、私はもう二度と見たくないんだっ。

 あんな、・・・あんな風にこの国が燃えるのも。

 皆が死んでいくのもっ」

「カガリ・・・」



カガリの父、ウズミ・ナラ・アスハは、その燃える国と命運を共にした。

実父ではなかったと知ったとて、ずっと父と慕い、そして尊敬してきた彼の最期を目の当たりにしたカガリの心の痛みが薄らぐわけでもない。

やっと復興したこの国を、ウズミに代わり、カガリは守ろうと必死なのだ。



「あなたが、自分の意思でそう決めたなら、もういい。

 ・・・今まで、ありがとう」

「キラ?」



別れの挨拶ととれるその言葉に、カガリが眉を寄せる。

いったい・・・、と言いかける彼女を、キラは抱きしめた。



「キラ!?」

「カガリ。

 ・・・ありがとう。

 この2年間、ずっと守ってくれて」

「あ、と、・・・お前はっ。

 キラは、私の妹だっ。

 そしてオーブ国民でもあるんだからなっ」



なぜかうろたえたように答えるカガリに、キラがクスリと笑う。



「うん、そうね。

 カガリと私に血のつながりがあることは、ずっと変わらない事実だわ。

 ふふふ。

 大好きよ、カガリ」



カガリの体にまわした腕に力を込めた後、キラは彼女から身を離した。

そうして相手を見ると、そこには何か言いたげな顔がある。

その唇が開こうとしたその時、キラは視線を海へと向けた。



「ミネルバ、行ったね」

「あ、ああ。

 あ、いや、それよりもキラ。

 お前、いったい・・・?」

「私も、・・・私たちも行かなくちゃいけないわ」

「え?

 行くって、・・・キラが?

 どこへ、・・・なんでだ!?」



つめ寄るカガリに、キラは哀しげな笑みを浮かべる。



「だって、私はコーディネイターだもの。

 連合の同盟国にはいらなれないでしょう。

 私だけじゃなくて、コーディネイターは全員、国外退去になる」

「ばかなっ。

 コーディネイターだろうと、オーブ国民が国を出る必要は無いっ」

「・・・わかっているはずでしょう、カガリ。

 連合対プラントは、ナチュラル対コーディネイター」



キラの言葉に唇を噛み締めるカガリの様子は、わかっていなかったのではなく考えたくなかったのだ示していた。



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