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キラは女の子です | ||
「オーブが、連合と同盟・・・」 聞かされたその事実は、キラを呆然とさせる。 もちろんその可能性を考えなかったわけではないが、現実にそうとなると違った。 中立のオーブが、つまりはその立場を捨てたということである。 「ええ。 カガリさんも頑張ったんだろうけど」 そう応えるマリューの顔色も優れなかった。 「だが、結果は結果だ」 「バルトフェルドさん・・・」 いつの間にか部屋に来ていたバルトフェルドも口をはさむ。 キラとマリューがそちらを向くと、彼は不敵に笑った。 「満を持した攻撃が、不発に終わったんだ。 連合も必死だろう。 彼らにとって、オーブの軍事力はさぞ魅力があると思うぞ」 「そうでしょうね」 「俺にしてみれば、これも当然のことだがな」 「・・・どうして、ですか?」 当然と言い切るバルトフェルドに、キラは暗い声で問う。 ソファに体を預けたまま俯いているキラに、彼はことさらに明るく問い返した。 「わからないか?」 「・・・ウナト・エマ・セイラン。 彼は、大西洋連邦寄り、だっだわよね」 「そういうことだ」 キラの代わりに答えたマリューに、バルトフェルドは頷く。 「そして今、この国にウズミ・ナラ・アスハはいない。 現代表には、首長達を抑える力はまだ無いからな」 「そうね。 ・・・今まで、よくもったと思うべきかしら? ミネルバの修理がほとんど終わってからで、良かったって」 「あ、・・・そうだ、ミネルバは?」 マリューの言葉でやっとあの艦のことを思い出したキラは、身を乗り出すようにしてマリューに訊いた。 それに、マリューは苦笑を返す。 意味ありげにバルトフェルドを見やる彼女に、キラも彼を見た。 「警告は、しておいた。 優秀な指揮官なら、ちゃんと準備をしているだろうさ」 「彼女なら、大丈夫よ、きっと」 「問題は、オーブ軍がどうでるか、だがな」 「・・・バルトフェルドさんは、どう思っているんですか?」 唇を噛み締め、しかしすぐに顔を上げてキラは彼の意見を求める。 キラには、政治というものがまだわからなかった。 もちろん想像がつかないわけでもなかったけれど、ともすれば考えたくない可能性ばかりが浮かんできてしまう。 すがるような目で見上げてくるキラの頭に、バルトフェルドはポンと手を載せた。 次いでクシャクシャと髪を、・・・いや、頭を撫でる。 「な、なに・・・っ」 「そんな顔、している場合じゃないぞ」 言い置いて、彼は手ぐしで髪を整えるキラの横を通り過ぎて、彼女の正面に座った。 肘掛に腕を置き、顎に手を当て、言葉を選ぶ。 そのまましばし逸らされていた視線が、キラのそれと合わされた。 「まだ、こんなのは序の口だぞ。 連合は、もう仕掛けてしまった。 既に、開戦しているんだ。 それは、わかるだろう?」 「・・・」 力なく頷くキラに、マリューは痛ましげな目を向けている。 これからバルトフェルドが話すことは、キラを悲しませることは想像に難くなかった。 キラさんも、本当はわかっているんでしょうね・・・。 ただ、もしかしたらという希望を捨てられないだけで。 「そしてオーブはその連合と同盟を結んだ。 つまり、オーブにとってもプラントは敵国となったわけだな。 そしてミネルバは、そのプラントのザフト軍の軍艦。 さて、オーブはミネルバをどうするだろうね?」 「・・・出航を促す」 「ふっ。 まぁ、まずはそうするだろうねぇ。 それで、ミネルバはどうするね?」 「・・・ザフト軍の基地へ向かう」 「すんなり、着けるかな?」 「・・・連合軍に鉢合わせしなければ」 「しない、かねぇ? それにな、言っただろう。 オーブは今や」 「そんなっ」 相手の言葉を遮るように、キラは叫んで首を振る。 バルトフェルドの話は、一つの結論へと導いていた。 聞きたくない、考えたくない、それ。 しかしキラの口は喘ぐように、自らそれを紡いでいた。 「オーブが、ミネルバを連合に差し出す、なんて、そんな・・・」 *** next |
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