no title - 58


キラは女の子です


「オーブが、連合と同盟・・・」



聞かされたその事実は、キラを呆然とさせる。

もちろんその可能性を考えなかったわけではないが、現実にそうとなると違った。

中立のオーブが、つまりはその立場を捨てたということである。



「ええ。

 カガリさんも頑張ったんだろうけど」



そう応えるマリューの顔色も優れなかった。



「だが、結果は結果だ」

「バルトフェルドさん・・・」



いつの間にか部屋に来ていたバルトフェルドも口をはさむ。

キラとマリューがそちらを向くと、彼は不敵に笑った。



「満を持した攻撃が、不発に終わったんだ。

 連合も必死だろう。

 彼らにとって、オーブの軍事力はさぞ魅力があると思うぞ」

「そうでしょうね」

「俺にしてみれば、これも当然のことだがな」

「・・・どうして、ですか?」



当然と言い切るバルトフェルドに、キラは暗い声で問う。

ソファに体を預けたまま俯いているキラに、彼はことさらに明るく問い返した。



「わからないか?」

「・・・ウナト・エマ・セイラン。

 彼は、大西洋連邦寄り、だっだわよね」

「そういうことだ」



キラの代わりに答えたマリューに、バルトフェルドは頷く。



「そして今、この国にウズミ・ナラ・アスハはいない。

 現代表には、首長達を抑える力はまだ無いからな」

「そうね。

 ・・・今まで、よくもったと思うべきかしら?

 ミネルバの修理がほとんど終わってからで、良かったって」

「あ、・・・そうだ、ミネルバは?」



マリューの言葉でやっとあの艦のことを思い出したキラは、身を乗り出すようにしてマリューに訊いた。

それに、マリューは苦笑を返す。

意味ありげにバルトフェルドを見やる彼女に、キラも彼を見た。



「警告は、しておいた。

 優秀な指揮官なら、ちゃんと準備をしているだろうさ」

「彼女なら、大丈夫よ、きっと」

「問題は、オーブ軍がどうでるか、だがな」

「・・・バルトフェルドさんは、どう思っているんですか?」



唇を噛み締め、しかしすぐに顔を上げてキラは彼の意見を求める。

キラには、政治というものがまだわからなかった。

もちろん想像がつかないわけでもなかったけれど、ともすれば考えたくない可能性ばかりが浮かんできてしまう。

すがるような目で見上げてくるキラの頭に、バルトフェルドはポンと手を載せた。

次いでクシャクシャと髪を、・・・いや、頭を撫でる。



「な、なに・・・っ」

「そんな顔、している場合じゃないぞ」



言い置いて、彼は手ぐしで髪を整えるキラの横を通り過ぎて、彼女の正面に座った。

肘掛に腕を置き、顎に手を当て、言葉を選ぶ。

そのまましばし逸らされていた視線が、キラのそれと合わされた。



「まだ、こんなのは序の口だぞ。

 連合は、もう仕掛けてしまった。

 既に、開戦しているんだ。

 それは、わかるだろう?」

「・・・」



力なく頷くキラに、マリューは痛ましげな目を向けている。

これからバルトフェルドが話すことは、キラを悲しませることは想像に難くなかった。



キラさんも、本当はわかっているんでしょうね・・・。

ただ、もしかしたらという希望を捨てられないだけで。



「そしてオーブはその連合と同盟を結んだ。

 つまり、オーブにとってもプラントは敵国となったわけだな。

 そしてミネルバは、そのプラントのザフト軍の軍艦。

 さて、オーブはミネルバをどうするだろうね?」

「・・・出航を促す」

「ふっ。

 まぁ、まずはそうするだろうねぇ。

 それで、ミネルバはどうするね?」

「・・・ザフト軍の基地へ向かう」

「すんなり、着けるかな?」

「・・・連合軍に鉢合わせしなければ」

「しない、かねぇ?

 それにな、言っただろう。

 オーブは今や」

「そんなっ」



相手の言葉を遮るように、キラは叫んで首を振る。

バルトフェルドの話は、一つの結論へと導いていた。

聞きたくない、考えたくない、それ。

しかしキラの口は喘ぐように、自らそれを紡いでいた。



「オーブが、ミネルバを連合に差し出す、なんて、そんな・・・」



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