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キラは女の子です | ||
「あの、造船課の、えぇと、マリア・・・」 「ああ、はいはい。 聞いています。 キラ・ヤマトさんですね」 キラの提示したIDカードを確認し、受付に座る女性の1人が立ち上がる。 キラの前まで来ると、手に持っていたパスを差し出した。 身に付けるように言われ、キラは長い紐に首を通す。 「社内にいる限り、必ず身に付けておいてください。 また、場所によっては再度のID確認が必要な場合もございます。 それと、パスの有効期間は1週間となっております。 但し、退社時には受付に戻し、来社時にまた受け取ってください」 「わかりました」 「それでは、ご案内いたします」 *** 案内役が途中で2度も代わり、最後はマリューの部下だという男性だった。 「キラさん。 来て下さってありがとう」 ミネルバの搭乗口近くに待っていたマリューは、キラを目にするなり顔を輝かせる。 彼女はキラの背に手を回し、あっという間にキラをミネルバへと連れ込んだ。 既に見慣れた艦内を目にし、思わずキラの足が止まる。 「・・・キラさん? あの、やっぱり、イヤかしら?」 「え? あ、いえ」 心配そうに問いかけられ、キラはハッとして首を振った。 歩き出しながら、自分から軍艦に乗り込むなんてもうないと思っていたので、と言い訳をする。 「でも、この艦には、助けられましたから。 私で出来ることでしたら、お手伝いさせてもらいます」 「そう? ・・・でも、無理はしないでね」 お願いした私が言うのもなんなんだけど、と。 肩を竦めるマリューに、キラは素直に頷く。 「無理はしません。 ですけど、・・・メイリンさん?」 マリューがキラを呼び出した理由を訊こうとしたその時、前方から1人の女性兵士が駆け寄ってきた。 頭の横で揺れる赤いツインテールに、キラは彼女の名を呟く。 「マリアさんっ。 艦内を1人で歩き回らないでくださいっ」 「ああ、ごめんなさいね。 ちょっと急いでいたものだから。 だけど、アーサーさんには言って来たわよ」 「・・・そうなんですか?」 「ええ。 まぁ、作業に夢中だったけどね」 正確には、エラーを繰り返すそれに、だったけれど。 敢えて口にしなかったマリューに、同じことを考えていたメイリンも、小さくため息を吐いた。 「でもほら、頼りになる助っ人が来てくれたから」 「・・・キラさん?」 「こんにちは、メイリンさん」 「どうしてまた、ここに? もしかして、アスハ代表も来たんですか?」 「ああ、いえ。 今は休暇中です」 「キラさんは私が呼んだの」 話は歩きながらね、と2人の背をマリューが押す。 それに従いながら、メイリンが不思議そうにキラを見ていた。 キラもその視線を感じながら、困ったようにマリューを見つめる。 「マリューさん・・・」 「大丈夫よ。 キラさんの身元がはっきりしているってことなんだから」 そうだろうか、とキラは疑問に思った。 確かに、このオーブの代表たるカガリの秘書であることは、この艦では周知の事実ではある。 彼女と血のつながりがあることも、話してあった。 だから、キラを危険人物とは思わないだろうが、しかし今度は別の心配がある。 スパイ、とか思われたりしないかな? そんなキラの考えを読み取ったのか、マリューはキラににっこりと笑った。 「このままじゃ、艦の航行に支障があるかもしれないの。 だけど、キラさんの力があれば、きっと上手くいくわ」 「・・・根拠が」 「ちょっと修理不能な機器があってね。 オーブ製のを仮付けしたのよ。 だけど、・・・わかるでしょう?」 戦時中、オーブ製のアークエンジェルに、ザフト製の機器を繋いだことがある。 キラはそのシステム変更全てを、任されてしまったのだ。 微かに頷くキラに、さらにマリューは続ける。 「キラさんも、ここ数日の報道を見たと思うけど。 この艦は、万全の状態で送り出してあげたいの」 キラはマリューの言いたいことを察し、俯いた。 *** next |
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