no title - 52


キラは女の子です


「し、してないっ」

「あら、それでは、・・・お断りに?」

「違うってばっ」



キラは必死になって、ラクスの言葉を否定する。

実際、アスランにプロポーズなどされていないのだ。



「好きって、言われただけっ。

 キ、キスもしたけどっ、それだけだからっ」

「それだけ、ですの。

 まぁ、まぁ・・・。

 予想が外れましたわ」



ラクスは残念そうにため息を吐く。



「予想・・・?

 友達から、一気にプロポーズする人なんて」

「アスランなら、あり得ると思いません?」

「え?

 そんな、こと・・・。

 それにまだ、結婚なんて考える年齢じゃないから」

「そうですか?

 まぁでも、それは今後の楽しみにしておきますわね」

「楽しみ・・・って、ラクス。

 やっと、自覚したばっかりなのにそんな話なんて」



キラは疲れたように肩を落とした。



***



「キラさん、無事で良かったわ」

「マリューさんも」



帰宅してきたマリューは、居間でくつろぐキラを見て、嬉しそうに笑う。

キラも立ち上がり、彼女に笑い返した。

だがその笑顔に何かを感じたのか、マリューは心配そうにキラに近寄る。



「どうしたの?

 何か、あった?」

「え、別に。

 あ、それより、お仕事で疲れているでしょう?

 座ってください」

「ありがとう。

 ・・・とりあえず、怪我は無いようね」

「え、ええ」



もうほとんどなんともないが、実際にある腕の怪我を思い浮かべてしまい、キラの返事は実に怪しかった。

それに気づかないマリューではなかったが、とりあえずこの場は黙っていることにする。



「皆は、もう寝たのね」

「はい」

「待っていてくれたの?」

「・・・会いたくて」

「嬉しいことを言ってくれるわね。

 うふふ。

 でも、今日は遅くなってしまったの。

 いつもはもっと早いんだけど」

「いえ。

 お仕事、忙しいんですか?」

「ん・・・、まぁ、キラさんになら言ってもいいわね。

 ほら、あなた達を連れてきてくれた艦」

「ミネルバ、ですか?」

「そう。

 それの修理を私のところが担当することになったの」

「・・・マリューさんが?」



どこか複雑そうに顔をするキラに、マリューは言いたいことを察した。



「気にしないで。

 確かに、私のいた地球連合軍はザフト軍と戦っていたけど。

 今はオーブに亡命したのだし、それに彼らは敵じゃないわ」



そうでしょう、とマリューが笑う。

それに、キラはこくんと頷いた。



「彼らは地球への被害を減らそうと、命をかけてくれました。

 艦長さんの判断が無ければ、もっと被害が広がっていたはずです」

「そうね。

 たいしたものだわ、彼女」

「・・・お会いになったんですか?」

「ええ。

 タリア・グラディス艦長。

 あの若さで、すごいわよね」

「マリューさんだって」

「私は、成り行きですもの。

 ・・・頼れる副官もしたしね」



マリューの副官だった、ナタル。

彼女の命を奪ったのは、マリュー自身である。

暗い顔になった彼女に気づき、キラはわざと明るい声を出した。



「ミネルバの、副官さんには会いました?

 なんかちょっと、頼りない感じの」

「え?ああ、ああ彼ね・・・」



おそらくは辛かったあの戦闘のことを思い出していたのであろうマリューは、キラの声で我に返る。

キラの言うタリアの副官を思い浮かべ、マリューは苦笑を浮かべた。



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