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キラは女の子です | ||
「よろしいんですの?」 こちらを気にしながら子供達に家へと連れ込まれるキラを見送り、ラクスはアスランへと問いかける。 アスランはそれには答えず、彼女を促して、家への階段を上った。 扉を開けて支え、ラクスを先に通す。 「キラがいてくださるのは嬉しいですけど。 カガリさんが、おひとりになってしまわれますわ」 「今は、カガリも私的なことに割く時間はありませんから」 「・・・どこへ行かれるのか、お聞きしてもよろしい?」 今まで、ラクスが彼らの仕事についてたずねた事は無かった。 いつもただ、相手をほっとさせる笑顔で出迎え、送り出してくれる。 「プラントのデュランダル議長を訪ねようと思います」 「・・・お1人で?」 「・・・」 「あらあら」 アスランの無言を肯定ととったラクスは、大げさに呆れてみせた。 「キラに心配を掛けるのですわね。 よく、カガリさんが了承しましたこと」 「まだ、話していません」 「キラにもですわね」 「・・・はっきりとは」 目を合わせようとしないアスランに、ラクスが厳しい目を向ける。 沈黙が続き、やがてアスランが口を開いた。 「戦闘が、あったんです。 巻き込まれて、プラントの戦艦に同乗することになって・・・。 そこでもまた、戦闘になりました。 キラの、目の前で」 言葉を切り、アスランはラクスを見る。 彼女は息を呑んでいた。 「二度と、戦争を起こさせるわけにはいかない。 けれど、このオーブで俺に出来ることはありません」 「カガリさんを手伝うことはできますわ」 「出来ません。 ご存知でしょう、ラクス」 アスランの声には、穏やかな中にも、否定を許さないという意思が込められている。 今度は、目を逸らすのはラクスの方だった。 「・・・キラは、自分と向き合えるようになったのですね」 「わかりましたか」 「目が、違いましたわ。 その戦闘が、キラの心境に変化を与えましたのね。 でもそんな状況で、キラを置いていくおつもりですの?」 「あなたがいます。 カリダさんがいて、あなたがいて。 今はマリューさんもご一緒でしょう。 キラは大丈夫です。 泣き虫で、甘ったれで、・・・だけど、強い」 *** 走り去る車が視界から消え、ラクスは窓辺から離れる。 と、部屋の入り口にキラが立っていた。 「アスラン、行っちゃったのね」 それは質問ではなく、断定。 キラは部屋の中央に置かれたソファに、ぽふっと腰を下ろした。 俯いてちょっと唇を噛み締め、しかしすぐに顔を上げる。 ラクスを見つめ、にこりと笑顔を作った。 「しばらく、よろしく」 「歓迎しますわ、キラ。 しばらくなんておっしゃらないで、ずっといらっしゃいませ。 みんな、大喜びしますわよ。 もちろん、私もです」 歩み寄ってきたラクスはキラのすぐ横に、斜めに座る。 キラの目を覗き込むようにして、ラクスは労わるようにキラの手に手を重ねた。 「無理をしないでくださいな。 泣きたい時は、泣いてもよろしいのですよ」 「・・・ラクス」 キラの声が、微かに震える。 瞳が揺れ、しかし彼女は堪えた。 「アスランはプラントへ行ったんだね?」 「・・・お忘れにならないで。 アスランとカガリさんだけではございませんのよ。 キラが大切なのは」 「・・・どうして? アスランは幼馴染で親友で、・・・うん。 カガリは血の繋がりがあるし・・・。 でもラクスは・・・、って、何?」 ラクスが目を丸くしているのに気づき、キラは首を傾げる。 そのキラの前で、ラクスはあらあらと意味ありげな笑みを浮かべた。 「アスラン、やっと伝えましたのね。 ふふふ。 キラの先ほどの顔つきでバレバレですわよ」 *** next |
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