no title - 50


キラは女の子です


「よろしいんですの?」



こちらを気にしながら子供達に家へと連れ込まれるキラを見送り、ラクスはアスランへと問いかける。

アスランはそれには答えず、彼女を促して、家への階段を上った。

扉を開けて支え、ラクスを先に通す。



「キラがいてくださるのは嬉しいですけど。

 カガリさんが、おひとりになってしまわれますわ」

「今は、カガリも私的なことに割く時間はありませんから」

「・・・どこへ行かれるのか、お聞きしてもよろしい?」



今まで、ラクスが彼らの仕事についてたずねた事は無かった。

いつもただ、相手をほっとさせる笑顔で出迎え、送り出してくれる。



「プラントのデュランダル議長を訪ねようと思います」

「・・・お1人で?」

「・・・」

「あらあら」



アスランの無言を肯定ととったラクスは、大げさに呆れてみせた。



「キラに心配を掛けるのですわね。

 よく、カガリさんが了承しましたこと」

「まだ、話していません」

「キラにもですわね」

「・・・はっきりとは」



目を合わせようとしないアスランに、ラクスが厳しい目を向ける。

沈黙が続き、やがてアスランが口を開いた。



「戦闘が、あったんです。

 巻き込まれて、プラントの戦艦に同乗することになって・・・。

 そこでもまた、戦闘になりました。

 キラの、目の前で」



言葉を切り、アスランはラクスを見る。

彼女は息を呑んでいた。



「二度と、戦争を起こさせるわけにはいかない。

 けれど、このオーブで俺に出来ることはありません」

「カガリさんを手伝うことはできますわ」

「出来ません。

 ご存知でしょう、ラクス」



アスランの声には、穏やかな中にも、否定を許さないという意思が込められている。

今度は、目を逸らすのはラクスの方だった。



「・・・キラは、自分と向き合えるようになったのですね」

「わかりましたか」

「目が、違いましたわ。

 その戦闘が、キラの心境に変化を与えましたのね。

 でもそんな状況で、キラを置いていくおつもりですの?」

「あなたがいます。

 カリダさんがいて、あなたがいて。

 今はマリューさんもご一緒でしょう。

 キラは大丈夫です。

 泣き虫で、甘ったれで、・・・だけど、強い」



***



走り去る車が視界から消え、ラクスは窓辺から離れる。

と、部屋の入り口にキラが立っていた。



「アスラン、行っちゃったのね」



それは質問ではなく、断定。

キラは部屋の中央に置かれたソファに、ぽふっと腰を下ろした。

俯いてちょっと唇を噛み締め、しかしすぐに顔を上げる。

ラクスを見つめ、にこりと笑顔を作った。



「しばらく、よろしく」

「歓迎しますわ、キラ。

 しばらくなんておっしゃらないで、ずっといらっしゃいませ。

 みんな、大喜びしますわよ。

 もちろん、私もです」



歩み寄ってきたラクスはキラのすぐ横に、斜めに座る。

キラの目を覗き込むようにして、ラクスは労わるようにキラの手に手を重ねた。



「無理をしないでくださいな。

 泣きたい時は、泣いてもよろしいのですよ」

「・・・ラクス」



キラの声が、微かに震える。

瞳が揺れ、しかし彼女は堪えた。



「アスランはプラントへ行ったんだね?」

「・・・お忘れにならないで。

 アスランとカガリさんだけではございませんのよ。

 キラが大切なのは」

「・・・どうして?

 アスランは幼馴染で親友で、・・・うん。

 カガリは血の繋がりがあるし・・・。

 でもラクスは・・・、って、何?」



ラクスが目を丸くしているのに気づき、キラは首を傾げる。

そのキラの前で、ラクスはあらあらと意味ありげな笑みを浮かべた。



「アスラン、やっと伝えましたのね。

 ふふふ。

 キラの先ほどの顔つきでバレバレですわよ」



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