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キラは女の子です | ||
「・・・キラ?」 閉じられた瞼が震えるのを目にし、アスランが優しく名を呼ぶ。 彼は眠り続けていたキラの枕元の椅子から立ち上がった。 ベットに手をつき、彼女を間近から見下ろす。 初めはぼうっと焦点の定まらない目をしていたが、何度か瞬きを繰り返し、キラとアスランの目が合った。 「・・・アスラン」 「おはよう、キラ」 「・・・おはよう」 まだ少し寝ぼけているのか、覇気の無い声で挨拶を返すキラ。 と、その顔が嬉しげに綻んだ。 「・・・どうしたの、キラ?」 「うん、あのね。 綺麗だなぁ、と思って」 「何が?」 「アスランの顔」 言いながら、キラの右手がシーツから出て、アスランの頬に添えられる。 ほんとうに綺麗、と。 ため息を漏らしながらの言葉に、アスランがしばし固まった。 だがキラはそんなことはお構いなしに、その白い指先でアスランの顔をなぞる。 「・・・キラ、綺麗というのは、女性を指すんじゃないか?」 「そんなこと、ないよ。 男とか、女とか関係なく、綺麗なものは綺麗。 特にね、アスランの目が好き」 「キラの方が綺麗だよ」 「アスランの目が腐ってる。 綺麗って言うのは」 言葉を切ったキラは、左手もシーツから出すと、両手でアスランの顔を挟んだ。 息が触れるほど引き寄せ、にっこりと微笑む。 「これ。 初めて会ったときは、女の子かと思ったよ。 あ、もちろんすぐにわかったけどね」 最後に慌てて付け加え、手を戻しながら顔を赤らめた。 そのまま、キラはアスランから、スッと視線を逸らす。 「あれ?」 横を向いたことで、キラの視界に味気ない無機質の壁が見えた。 気だるそうに上体を起こす。 視界を遮っていたアスランは、気配を察して既に退いていた。 部屋の中をぐるりと見回し、やがてキラの顔が曇る。 「・・・ああ、そっか。 夢じゃなかったんだっけ。 でも、なんでこの医務室に」 俯いて息を吐き、キラは横に立つアスランを見た。 「アスラン? どうしたの?」 彼は口元に片手をあて、顔を背けて、なにかをキラに差し出している。 顔つきが強張っていた。 キラは眉をひそめる。 「気分、悪い? 大丈夫?」 「ちょっと待って!」 心配そうにベットから滑り降りようとしたキラを、しかしアスランが強く止めた。 そして顔をキラに向け、だが視線は合わせずに、手に持ったものをキラに押し付ける。 「いいから、起きられるならこれを着てくれ」 「着・・・って、やだ・・・っ」 アスランの言葉で、渡されたものが服だとわかり、ふと自分を見下ろしたキラは小さく悲鳴を上げた。 その服をぎゅっと胸元に抱きしめる。 な、なんで・・・!? キラが身に着けているのは、肌触りの良い布でできたキャミソールだけだった。 薄地のそれは、下着を着けていない彼女の胸の形をしっかりとかたどっている。 恐る恐る目をアスランに向ければ、しっかりと背を向けてくれていた。 「いいか?」 「ま、待って、ちょっと」 慌てて服を広げ、素早く着込む。 顔を真っ赤にしたまま、キラはアスランにもういいよと言った。 その声を受けて振り向くアスランを、そっと見上げる。 「アス」 恥ずかしそうに呼びかけようとしたキラの言葉が、第三者の声に遮られた。 「起きたのかい? なら、早くこっちに来なさい」 キラはびっくりして声のした方を見ると、そこにはライラが入り口に手を掛けて立っている。 気が逸れたキラの背に手をあてて、アスランは医師に従った。 *** next |
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