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キラは女の子です | ||
「先生、キラは・・・っ」 「カガリ、落ち着け」 叫ぶように問うカガリを、後から入室してきたアスランがたしなめる。 シンがキラのことを艦長に伝えたのだ。 ちょうど艦橋でオーブとの通信を試みてもらっていたカガリはそこで同時に聞き、この医務室まですっ飛んで来ている。 アスランはその頃、ルナマリア達の訓練の場に居合わせており、同じく訓練の為に現れたシンから聞かされた。 距離の違いもあり、カガリより遅れたアスランは、カガリが女医師に詰め寄っているところだったのである。 「お前だって、心配だろうがっ」 「薬で落ち着いていると聞いた。 ここで騒いでも仕方ない」 冷静なアスランの態度が気に障ったのか、カガリはキッとばかりにそちらを睨んだ。 が、そこに冷静とは程遠い顔を見て、口を噤み、プイッとそっぽを向く。 静かになったカガリに、アスランはライラへと口を開いた。 「キラの容態をお聞きできますか?」 「シンから聞いたんだね? それなら、それほど言うことはないよ。 今は、眠っているだけだしね」 「・・・付き添って、いいですか?」 「あんたがかい?」 「私もだっ」 アスランが肯定する前に、カガリが口を挟む。 2人の顔を見比べ、ライラは首を振った。 「立場を考えなさい。 一国の代表が、秘書の付き添い?」 「だがキラは私の」 「カガリ!」 妹と、口走ろうとしたカガリの言葉を、かろうじてアスランの声が止める。 彼女もすぐに、はっとして顔を強張らせた。 「キラには俺が付く。 それに2人もいては、キラも安心できないかもしれない。 君は部屋へ」 「だが」 「カガリ」 「・・・・・・・・・わかった。 顔だけ見たら、戻る」 *** 「君は、代表の護衛なんだろう」 カガリを医務室から送り出したアスランに、ライラは面白そうに話しかける。 「1人にさせていいのかい? それに君らは随分と気安げだね」 普通、国のトップとガードたる人間が、親しく話すなどありえなかった。 とはいえ、ライラは別にそれを批判しようというわけではない。 軽い笑みを含んだその声に、アスランもそれはわかった。 「この艦内に、オーブ代表に危害を加えるような愚かな人間はいないでしょう」 「ふむ? 代表と眠り姫は親戚だってことだったね。 確かに見た目はよく似てる」 「似て・・・見えますか?」 意外そうにアスランは返す。 キラとカガリの顔つきは、とても良く似ていた。 それは事実で、アスランも認めている。 しかし、それを指摘されることは、今まであまりなかった。 おそらく、その性格の違いからか、彼女達から受ける印象が異なっているのだろう。 「似てるじゃないか。 ・・・まぁ、黙っていればな」 セリフに、苦笑が付け加えられた。 「あの、キラのところへ」 「まぁ、ちょっと待て」 このまま話し続けそうな雰囲気に、さすがにアスランがキラの元へ行こうとするのを、ライラが手を上げる。 腰を上げかけた彼に、もう一度座るように指で示した。 「君と代表は、先の大戦で、戦場で親しくなったんだな」 問いというより、確認しているというような言い方である。 真剣なまなざしは、アスランが、あのアスラン・ザラであると知っていると伝えてきていた。 そして彼女が、それを好奇心なんかで尋ねているわけでないことも。 だから、アスランは正直に頷いた。 「そうです」 「で、その場にあの眠り姫もいたか?」 「・・・なぜ、そんなことを」 不意をつかれ、動揺を隠し切れない。 そのアスランをじっと見つめ、ライラはキラが魘されていたと言った。 「運ばれてきて、ほんの一時だがね。 小さく、うわごとのように。 殺してしまった、と。 ごめんなさい、とな」 *** next |
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