no title - 42


キラは女の子です


「先生、キラは・・・っ」

「カガリ、落ち着け」



叫ぶように問うカガリを、後から入室してきたアスランがたしなめる。

シンがキラのことを艦長に伝えたのだ。

ちょうど艦橋でオーブとの通信を試みてもらっていたカガリはそこで同時に聞き、この医務室まですっ飛んで来ている。

アスランはその頃、ルナマリア達の訓練の場に居合わせており、同じく訓練の為に現れたシンから聞かされた。

距離の違いもあり、カガリより遅れたアスランは、カガリが女医師に詰め寄っているところだったのである。



「お前だって、心配だろうがっ」

「薬で落ち着いていると聞いた。

 ここで騒いでも仕方ない」



冷静なアスランの態度が気に障ったのか、カガリはキッとばかりにそちらを睨んだ。

が、そこに冷静とは程遠い顔を見て、口を噤み、プイッとそっぽを向く。

静かになったカガリに、アスランはライラへと口を開いた。



「キラの容態をお聞きできますか?」

「シンから聞いたんだね?

 それなら、それほど言うことはないよ。

 今は、眠っているだけだしね」

「・・・付き添って、いいですか?」

「あんたがかい?」

「私もだっ」



アスランが肯定する前に、カガリが口を挟む。

2人の顔を見比べ、ライラは首を振った。



「立場を考えなさい。

 一国の代表が、秘書の付き添い?」

「だがキラは私の」

「カガリ!」



妹と、口走ろうとしたカガリの言葉を、かろうじてアスランの声が止める。

彼女もすぐに、はっとして顔を強張らせた。



「キラには俺が付く。

 それに2人もいては、キラも安心できないかもしれない。

 君は部屋へ」

「だが」

「カガリ」

「・・・・・・・・・わかった。

 顔だけ見たら、戻る」



***



「君は、代表の護衛なんだろう」



カガリを医務室から送り出したアスランに、ライラは面白そうに話しかける。



「1人にさせていいのかい?

 それに君らは随分と気安げだね」



普通、国のトップとガードたる人間が、親しく話すなどありえなかった。

とはいえ、ライラは別にそれを批判しようというわけではない。

軽い笑みを含んだその声に、アスランもそれはわかった。



「この艦内に、オーブ代表に危害を加えるような愚かな人間はいないでしょう」

「ふむ?

 代表と眠り姫は親戚だってことだったね。

 確かに見た目はよく似てる」

「似て・・・見えますか?」



意外そうにアスランは返す。

キラとカガリの顔つきは、とても良く似ていた。

それは事実で、アスランも認めている。

しかし、それを指摘されることは、今まであまりなかった。

おそらく、その性格の違いからか、彼女達から受ける印象が異なっているのだろう。



「似てるじゃないか。

 ・・・まぁ、黙っていればな」



セリフに、苦笑が付け加えられた。



「あの、キラのところへ」

「まぁ、ちょっと待て」



このまま話し続けそうな雰囲気に、さすがにアスランがキラの元へ行こうとするのを、ライラが手を上げる。

腰を上げかけた彼に、もう一度座るように指で示した。



「君と代表は、先の大戦で、戦場で親しくなったんだな」



問いというより、確認しているというような言い方である。

真剣なまなざしは、アスランが、あのアスラン・ザラであると知っていると伝えてきていた。

そして彼女が、それを好奇心なんかで尋ねているわけでないことも。

だから、アスランは正直に頷いた。



「そうです」

「で、その場にあの眠り姫もいたか?」

「・・・なぜ、そんなことを」



不意をつかれ、動揺を隠し切れない。

そのアスランをじっと見つめ、ライラはキラが魘されていたと言った。



「運ばれてきて、ほんの一時だがね。

 小さく、うわごとのように。

 殺してしまった、と。

 ごめんなさい、とな」



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