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キラは女の子です | ||
「フリーダムのせいで、あなたの家族が・・・?」 「そうだ」 震える声で、キラは確認するように訊く。 違って欲しいという思いのこもるそれは、だがあっさりと否定された。 「あの時は、どれがなんだか、わからなかったさ。 だが、プラントに来て、アカデミーで機体について学んだ。 ・・・フリーダム。 あれがオーブを守るために戦ってたのも知った。 でもオーブ軍に所属してはいなかった。 ヤキン・ドゥーエの戦いで、活躍したことも。 だけど、パイロットについては、わからなかった。 どんなに調べても、だ。 ・・・あんたがあの時一緒に戦っていたなら、知っているはずだろう?」 秘されているからには、それなりの理由がある。 関係者が口を噤んでいるのだ。 たとえ知っていてもキラがそう簡単に答えるとは、シンも思っていない。 しかし、やっと手の届くところにきたのだ。 絶対に口を割らせると、言葉に力が入る。 だが。 「戦闘中に、まだ避難していた?」 まったく聞いていなかったらしいキラの様子に、シンは眉を顰めた。 掴んでいた腕を放す。 「あの時、民間人の避難は済んでると思ってた。 でも、犠牲者は出た。 ・・・戦争を終わらせるのだと。 際限なく殺し合う、あの戦争を。 その為に、命が失われていくのを防ぎたくて、戦った。 でも戦うほどに、人が死んで。 その上、僕の、この手は・・・」 「お・・・い」 キラは広げた両の手のひらを、キラは虚ろに見つめた。 言葉をつむぎながら、彼女の頭は自分の考えでいっぱいになる。 様子がおかしいと気づいたシンの声も、届いていなかった。 「平和になったって、無かったことになるわけじゃ、ない。 戦うことを止めたって、血に染まったこの手は、戻らないんだ。 失われた命も、戻らな・・・い」 シンの前で、キラは糸が切れたように崩れ落ちる。 咄嗟に伸ばされたシンの腕が、辛うじて彼女の頭が床に打ち付けられるのを防いだ。 「おいっ。 ・・・くそっ」 キラの意識が無いことを見て取ると、シンは彼女を抱き上げる。 そのまま医務室へと駆け出した。 *** 「おい、誰かいないか!?」 「・・・なんだい、騒がしい」 無人の医務室に入って怒鳴るシンの声に、ライラが物憂げに髪をかき上げながら姿を現す。 と、彼の腕に抱えられた見覚えのある姿に、彼女は顔つきを改めた。 「どうした? また無理して出血でもしたのか?」 「気を失ってる」 ライラの指示に従い、シンはキラを診察台に横たえる。 キラの診察を始める医師は、カーテン越しに状況を聞いた。 「話をしていて、突然倒れたのか?」 「いえ。 その前に、なんだか変だった・・・」 「どんな風にだ?」 「俺の声が聞こえていないみたいで。 それで・・・、なんだか辛そうに話し出したんだ・・・っです」 「普通に話していいぞ。 それで、何て言ったんだ?」 「・・・小さい声で、よくは聞こえなかった。 ただ、僕は、って」 「僕?」 「女なのに、変だなって」 「・・・まぁ、珍しいがいないわけでもない」 「でもキラは、それまで私って言っていたから」 シャッと音を立てて、カーテンが開かれる。 「精神的なものだね。 君との話がきっかけで、嫌な過去を思い出したのかもしれない」 何の話をしていたのか、と無言で問うライラから、シンは目を逸らした。 その横顔に視線を向け、ライラは嘆息する。 「とりあえず、手を貸しておくれ」 シンの手で、キラはまた奥の部屋に寝かされた。 薬で幾分よくなった顔色に、しかしシンは唇を引き結ぶ。 話を訊きたい気持ちに変わりはないが、しかしこんな風に彼女を苦しめたいわけでもなかったのだ。 *** next |
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