no title - 40


キラは女の子です


「あ、ま、待ってっ。

 シ、・・・シン、・・・さん」



艦内を1人で歩いていたキラは、前方にシンの姿を認め、大声で呼び止める。

この艦にいる紅い軍服を着ているのは、3人だけだ。

女性のルナマリア、金髪のレイ、そして黒髪のシン。

だから、一瞬横切っただけで、それがシンであるとキラにもわかった。

声と同時に駆け出したキラが、角まで来て減速して曲がる。

と、そこに彼は立っていた。



「何?」

「あ、あの、私。

 シ、シンさんに、その」

「シン」

「え?」

「シンでいい。

 そんな風に呼ばれると、変な気がする」

「あ、でも」

「いいから。

 俺もあんたのこと、・・・なんて名前だっけ?」

「キラ。

 キラです、キラ・ヤマト」

「キラ、ね。

 ・・・あの人と幼馴染なんだって?」



意外な問いに、キラはちょっと目を瞬く。

だがすぐに、メイリンに説明したことを思い出し、こくりと頷いた。



「なら、知ってるか?

 なんだって、あれだけの人がオーブなんかにいるんだ?

 それも、あんなのの護衛なんかしてて」



シンの中で、アスランの評価がかなり上がったようだと、キラは感じる。

同時に、カガリへの、そしてオーブへの評価は変わっていないようだとも。



「それは、本人に訊くべきことです。

 私が答えるようなことじゃありません。

 でも、オーブを悪く言うのは控えて下さいませんか?

 あなたにとってどうでも、私たちにとっては大切な国なんです。

 どうか」



懇願するように見つめるキラから、シンが目を逸らした。

ちょっと頬を赤くして、ぼそりと言う。



「・・・プラントから、オーブに移住したのか?」

「は?」

「キラはアスラン・ザラと幼馴染だっていったろ?」



アスラン・ザラは、プラント出身だ。

それは周知の事実で、シンがそう考えても不思議はない。



「あ、ああ。

 いえ、私は月に住んでいたんです。

 アスランもお母さんと。

 私の両親はナチュラルなので、プラントには・・・。

 だから、オーブのような国が必要なんです」



立て続けの質問に戸惑いながらも、キラは律儀に答えていった。

だが次の言葉には、さすがに顔を強張らせる。



「・・・モビルスーツ、動かせるって?

 そうは見えないけど、軍人?」

「あ、それは・・・。

 でも軍には、入っていません」

「メイリンから聞いた。

 戦闘に出て来ようとしたって」

「・・・アスランが心配だったんです。

 許可、されませんでしたけど」

「そりゃ、そうだろ。

 ・・・でも、妙に自信有り気だったってな」

「そ、れは・・・、経験、有りますから。

 先の大戦の時に」



言いながら俯いてしまった。

キラは彼がどんな顔をしているのか見られない。

唇を噛んだ彼女は、次の瞬間、乱暴に両腕を掴まれた。

引き寄せられ、驚いて顔を上げる。



「なにを」

「オーブで戦ったのか!?」

「え?」

「地球軍が攻めてきた時だっ。

 あそこに、いたのか!?」



必死な顔つきでキラを揺さぶりながら、シンは迫った。

真紅の瞳に圧倒されながら、キラはなんとか声を絞り出す。



「な・・・ぜ、そんなことを?」

「知りたいからさっ。

 あんなところで戦闘なんかしやがった奴を。

 まだ避難していたんだ、俺たちは。

 あいつさえ・・・っ」



憎しみのこもった声に、キラの体が震えた。

そんな彼女に構わず、シンはさらに問いただす。



「同じモビルスーツのパイロットなら、知っているはすだっ」

「・・・あ、でも、モビルスーツは何機も」

「あいつは、一機だ。

 ザフトから奪われた、白いモビルスーツ・・・」



キラの目が見開かれた。



「あれと、地球軍の機体が、マユと父さん母さんを殺したんだ!」



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