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キラは女の子です | ||
「あ、ま、待ってっ。 シ、・・・シン、・・・さん」 艦内を1人で歩いていたキラは、前方にシンの姿を認め、大声で呼び止める。 この艦にいる紅い軍服を着ているのは、3人だけだ。 女性のルナマリア、金髪のレイ、そして黒髪のシン。 だから、一瞬横切っただけで、それがシンであるとキラにもわかった。 声と同時に駆け出したキラが、角まで来て減速して曲がる。 と、そこに彼は立っていた。 「何?」 「あ、あの、私。 シ、シンさんに、その」 「シン」 「え?」 「シンでいい。 そんな風に呼ばれると、変な気がする」 「あ、でも」 「いいから。 俺もあんたのこと、・・・なんて名前だっけ?」 「キラ。 キラです、キラ・ヤマト」 「キラ、ね。 ・・・あの人と幼馴染なんだって?」 意外な問いに、キラはちょっと目を瞬く。 だがすぐに、メイリンに説明したことを思い出し、こくりと頷いた。 「なら、知ってるか? なんだって、あれだけの人がオーブなんかにいるんだ? それも、あんなのの護衛なんかしてて」 シンの中で、アスランの評価がかなり上がったようだと、キラは感じる。 同時に、カガリへの、そしてオーブへの評価は変わっていないようだとも。 「それは、本人に訊くべきことです。 私が答えるようなことじゃありません。 でも、オーブを悪く言うのは控えて下さいませんか? あなたにとってどうでも、私たちにとっては大切な国なんです。 どうか」 懇願するように見つめるキラから、シンが目を逸らした。 ちょっと頬を赤くして、ぼそりと言う。 「・・・プラントから、オーブに移住したのか?」 「は?」 「キラはアスラン・ザラと幼馴染だっていったろ?」 アスラン・ザラは、プラント出身だ。 それは周知の事実で、シンがそう考えても不思議はない。 「あ、ああ。 いえ、私は月に住んでいたんです。 アスランもお母さんと。 私の両親はナチュラルなので、プラントには・・・。 だから、オーブのような国が必要なんです」 立て続けの質問に戸惑いながらも、キラは律儀に答えていった。 だが次の言葉には、さすがに顔を強張らせる。 「・・・モビルスーツ、動かせるって? そうは見えないけど、軍人?」 「あ、それは・・・。 でも軍には、入っていません」 「メイリンから聞いた。 戦闘に出て来ようとしたって」 「・・・アスランが心配だったんです。 許可、されませんでしたけど」 「そりゃ、そうだろ。 ・・・でも、妙に自信有り気だったってな」 「そ、れは・・・、経験、有りますから。 先の大戦の時に」 言いながら俯いてしまった。 キラは彼がどんな顔をしているのか見られない。 唇を噛んだ彼女は、次の瞬間、乱暴に両腕を掴まれた。 引き寄せられ、驚いて顔を上げる。 「なにを」 「オーブで戦ったのか!?」 「え?」 「地球軍が攻めてきた時だっ。 あそこに、いたのか!?」 必死な顔つきでキラを揺さぶりながら、シンは迫った。 真紅の瞳に圧倒されながら、キラはなんとか声を絞り出す。 「な・・・ぜ、そんなことを?」 「知りたいからさっ。 あんなところで戦闘なんかしやがった奴を。 まだ避難していたんだ、俺たちは。 あいつさえ・・・っ」 憎しみのこもった声に、キラの体が震えた。 そんな彼女に構わず、シンはさらに問いただす。 「同じモビルスーツのパイロットなら、知っているはすだっ」 「・・・あ、でも、モビルスーツは何機も」 「あいつは、一機だ。 ザフトから奪われた、白いモビルスーツ・・・」 キラの目が見開かれた。 「あれと、地球軍の機体が、マユと父さん母さんを殺したんだ!」 *** next |
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