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キラは女の子です | ||
「キラ」 不自然な体勢に、キラの足が疲れてきた頃、アスランが彼女の名を呼ぶ。 腕の力が緩み、アスランはキラをそっと手放した。 その際によろけそうになる彼女を支えることは忘れない。 「アスラン、無理しないでね」 見上げたアスランの顔色が、さっきよりも幾分良くなっていることに気づきながらも、キラはそう言った。 そんな彼女に、アスランはフッと微笑む。 「ああ、大丈夫。 それより・・・。 キラも部屋へ帰って、休め」 「・・・イヤ」 「キラ?」 眉根を寄せるアスランに、キラは首を振った。 両腕を組んで、ちょっと怒ったように上目遣いになる。 「私を何だと思ってるの? そんな、取り繕った顔なんか、見たくないの。 ・・・わかるに、決まってるでしょう。 お父さんのこと」 「それは」 「そして、あのジン。 地球の人達が事実を知って、どうなるか。 ・・・心配事を抱えたまま、無理に笑わなくてもいいの」 そりゃ、私には何も出来ないけど、と。 小さく付け加えるキラを見るアスランの目が、不意に閉じられた。 「アスラン? あの、悪いこと、言った?」 「いや」 ゆっくりと上がる瞼の下から、翠の瞳が現れる。 続いて、アスランがふわりと微笑んだ。 それは先ほどとは違う、心からの笑みに、キラの胸がドキリとする。 「キラに何も出来ないなんて、誰が言った? 俺は、キラがいてくれるだけでいいのに。 キラのこの目が、俺だけを見て。 こうして傍にいてくれるだけで」 「・・・って、それじゃ、なんにも解決しないわ」 「そうでもない。 俺1人に、出来ることには限りがある。 何を優先するのか。 それを思い出させてくれるよ、キラは」 「優先?」 キラは小首を傾げた。 それを見て、アスランは笑みを深くして答える。 「キラ、だよ。 それと、キラにとって大切なもの」 言って、しかし顔を曇らせた。 「でも、だからこそ、今度のことは辛いな。 オーブの被害が、酷くないといいんだが」 「・・・それは、今考えなくてもいいと思う。 何も、できないもの」 「・・・ああ、そうだな」 アスランが口ごもる様子を見せる。 敢えて言わないでくれている彼に、キラは自分からそれを口にした。 「父さんも母さんも、きっと無事よ。 もちろん、根拠なんか、ないけど・・・」 「キラ」 「だけど、アスランが無事で良かった。 ほんとに、それだけは良かったわ。 ・・・信じていなかったわけじゃないけど。 でも、アスランと一緒に彼も戻ってこなかったから。 なにかあったんじゃないかって。 アスランなら、経験の少ないらしい彼のために無理するんじゃないかって」 「・・・反対だよ。 俺が、シンに助けられた」 意外なことを告げられ、キラの目が見開かれる。 その彼女に、アスランは大気圏突入時にあったことを話し出した。 *** 「私、彼に謝らなくちゃ」 「シンに、キラが?」 聞き終えたキラがぽつりと漏らしたそれを、アスランが聞きとがめる。 彼女はばつが悪そうに、目を逸らした。 「彼、カガリに突っかかっていたでしょう? あの時、私、追いかけて言ったの。 アスランやカガリに関わらないで、って」 *** next |
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