no title - 39


キラは女の子です


「キラ」



不自然な体勢に、キラの足が疲れてきた頃、アスランが彼女の名を呼ぶ。

腕の力が緩み、アスランはキラをそっと手放した。

その際によろけそうになる彼女を支えることは忘れない。



「アスラン、無理しないでね」



見上げたアスランの顔色が、さっきよりも幾分良くなっていることに気づきながらも、キラはそう言った。

そんな彼女に、アスランはフッと微笑む。



「ああ、大丈夫。

 それより・・・。

 キラも部屋へ帰って、休め」

「・・・イヤ」

「キラ?」



眉根を寄せるアスランに、キラは首を振った。

両腕を組んで、ちょっと怒ったように上目遣いになる。



「私を何だと思ってるの?

 そんな、取り繕った顔なんか、見たくないの。

 ・・・わかるに、決まってるでしょう。

 お父さんのこと」

「それは」

「そして、あのジン。

 地球の人達が事実を知って、どうなるか。

 ・・・心配事を抱えたまま、無理に笑わなくてもいいの」



そりゃ、私には何も出来ないけど、と。

小さく付け加えるキラを見るアスランの目が、不意に閉じられた。



「アスラン?

 あの、悪いこと、言った?」

「いや」



ゆっくりと上がる瞼の下から、翠の瞳が現れる。

続いて、アスランがふわりと微笑んだ。

それは先ほどとは違う、心からの笑みに、キラの胸がドキリとする。



「キラに何も出来ないなんて、誰が言った?

 俺は、キラがいてくれるだけでいいのに。

 キラのこの目が、俺だけを見て。

 こうして傍にいてくれるだけで」

「・・・って、それじゃ、なんにも解決しないわ」

「そうでもない。

 俺1人に、出来ることには限りがある。

 何を優先するのか。

 それを思い出させてくれるよ、キラは」

「優先?」



キラは小首を傾げた。

それを見て、アスランは笑みを深くして答える。



「キラ、だよ。

 それと、キラにとって大切なもの」



言って、しかし顔を曇らせた。



「でも、だからこそ、今度のことは辛いな。

 オーブの被害が、酷くないといいんだが」

「・・・それは、今考えなくてもいいと思う。

 何も、できないもの」

「・・・ああ、そうだな」



アスランが口ごもる様子を見せる。

敢えて言わないでくれている彼に、キラは自分からそれを口にした。



「父さんも母さんも、きっと無事よ。

 もちろん、根拠なんか、ないけど・・・」

「キラ」

「だけど、アスランが無事で良かった。

 ほんとに、それだけは良かったわ。

 ・・・信じていなかったわけじゃないけど。

 でも、アスランと一緒に彼も戻ってこなかったから。

 なにかあったんじゃないかって。

 アスランなら、経験の少ないらしい彼のために無理するんじゃないかって」

「・・・反対だよ。

 俺が、シンに助けられた」



意外なことを告げられ、キラの目が見開かれる。

その彼女に、アスランは大気圏突入時にあったことを話し出した。



***



「私、彼に謝らなくちゃ」

「シンに、キラが?」



聞き終えたキラがぽつりと漏らしたそれを、アスランが聞きとがめる。

彼女はばつが悪そうに、目を逸らした。



「彼、カガリに突っかかっていたでしょう?

 あの時、私、追いかけて言ったの。

 アスランやカガリに関わらないで、って」



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