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キラは女の子です | ||
「帰艦信号・・・?」 ボギー1からの発光弾に、ミネルバ艦橋内のそこここで安堵のため息が漏れる。 キラも例外ではなく、祈るように組んでいた両手を下ろし、肩の力を抜いた。 「よかった・・・」 「だが、敵はまだいる。 そして、肝心の作業も終わっていない」 気を抜いたキラに、デュランダルの声が突き刺さる。 そう、確かにそのとおりだった。 先行の部隊が、ユニウスセブンを二分することには成功している。 しかし、その大きさでは地球への被害を減らすことには足りないのだ。 もっと、砕かねばならない。 そして、それを妨害するだろうジンの群れはまだまだいた。 「私・・・」 「キラ?」 唐突に立ち上がったキラを、カガリが訝しげに見上げる。 と、そのまま身を翻そうとしたキラの手首を、カガリは反射的に捕まえた。 「ちょっ、待て、キラ! どこへ行くつもりだ!?」 「放して、カガリ」 「だから、どうするつもりなんだ?」 「決まってるでしょう。 アスランを手伝いに行くの」 「行かせるわけないだろっ」 言い合いながらも、カガリの手はキラから外れない。 キラが本気で振り払えば簡単だろうが、それではカガリに怪我をさせてしまうえおそれがあった。 それでもなお、キラは行かせてと、カガリの目をまっすぐに見る。 だがもちろん、カガリは首を振った。 「どれだけ、ブランクがあると思ってるんだ!? 怪我だってしてるんだぞ。 今のお前が、アスランと同等に戦えるのかっ」 「・・・っ」 「第一、戦闘ができるのか?」 「で、でき・・・っ」 「無理だろう? ずっと、避けてきたんだ。 そう簡単に、戻れるはずがない」 「だけど」 引かないキラをしかし、カガリとは違う穏やかな女性の声が止める。 「あなたにまで、モビルスーツは貸せないわ。 もちろん、出撃など以ての外」 キラは、艦長席を振り返った。 そこでは、タリアが厳しい表情でこちらを向いている。 無言で見つめあい、目を伏せたのはキラの方だった。 唇を噛み締める彼女に、タリアは諭す。 「どちらにしても、時間切れね。 ジュール隊も引き上げ始めたから」 それは、ユニウスセブンの地球への落下が始まることを示していた。 アスランも、そう遠からずミネルバに戻ってくることだろう。 反論しないキラを確認し、タリアはずっと静観していたデュランダルへと向き直った。 「こんな状況下に申し訳ありませんが。 議長方はボルテールへお移りいただけますか」 穏やかな中にも微かに緊張を感じる声を発する彼女を、デュランダルと、そしてキラとカガリも驚いたように見る。 「ミネルバは、これより大気圏に突入し、限界までの艦主砲による対象の破砕を行いたいと思います。 何処まで出来るかわかりませんが。 でも、出来るだけの力を持っているのに、やらずに見ているだけなど、後味悪いですわ」 「タリア、しかし」 「私はこれでも運の強い女です。 お任せください」 危険を伴うそれに、デュランダルも快諾はしなかった。 けれど、真剣なまなざしを向けられ、彼はタリアの決意を覚る。 諦めたように小さく息を吐き、だが微笑みを浮かべた。 「・・・わかった。 すまない、タリア。 ありがとう」 「いいえ、議長もお急ぎください」 決まれば、行動は早い。 デュランダルは立ち上がると、カガリと、そしてキラを促した。 しかし、カガリは首を振る。 「私はここに残る。 ミネルバがそこまでしてくれるというのなら、私も一緒に行く。 アスランがまだ戻らないしな。 私だけ、議長と行くことはできない」 「・・・カガリ、待って、でも」 「キラは、アスランを置いて行くける?」 「そ、れは・・・。 でも、・・・でも、私とカガリじゃ」 「代表がそうお望みでしたら、お止めはしませんが」 口ごもるキラの言葉に、デュランダルの声が重なった。 そのまま身を翻して艦橋から出て行く彼の背を見送りながら、キラはカガリを見る。 「・・・アスラン、怒るよね」 カガリはここに残るべきではないと思いながら、キラは大きくため息を吐いた。 「知るか。 あいつがいないから悪いんだ」 *** next |
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