no title - 33 | ||
キラは女の子です | ||
「ええっ!?」 背後からの声に、キラは思わず振り向いた。 そこには、カガリが呆然と立ちつくしている。 「カガリ・・・」 このミネルバ艦橋では、ここから観測される情報が報告されていた。 ジュール隊が交戦しているのは、ザフトのモビルスーツであるジン。 地球に落ちようとしているユニウスセブンを破砕しようとする軍を妨害するジンの群が、何を意味するのか? 誰もが考えたくなかった可能性を口にしたクルーの言葉に、カガリが驚きの声を上げたのだ。 この度のこれが、人為的に引き起こされたものであるという、可能性。 いや、可能性どころではない。 今のところ、他に説明のつけようが無いのだ。 「キラ・・・。 これは、いったい・・・?」 艦橋内で交わされる情報に、カガリの顔色が悪くなっていく。 おそらくは、希望を求めての問いに、キラは目を伏せた。 「聞いての、通り、みたい」 「だれかが、わざと地球を・・・?」 「・・・座って、カガリ。 それとも、部屋に戻る?」 キラは立ち上がり、未だ立ちつくしながら力なく首を振るカガリを、椅子に座らせる。 そしてそのまま、キラは彼女に抱きついた。 「お・・・い、キラ? ちょっ、腕、怪我した腕、大丈夫か?」 「・・・平気」 ぎゅっ、と。 しがみついてくるキラに、カガリは戸惑って、目を泳がせる。 と、その目が、キラの座っていた席の横に止まった。 眉を寄せ、艦橋内を見渡す。 「あいつは? 一緒じゃないのか?」 ピクリと肩を揺らすキラに、彼女のこの行動の原因が、アスランにあるとカガリにも知れた。 しかし、キラは返答しようとしない。 代わりに、横から別の声が答えた。 「彼は自分も作業を手伝いたいと言ってきて。 今は、あそこですよ」 デュランダルの指し示すスクリーンには、宇宙を飛んでいく数機のモビルスーツの背中が映っている。 「・・・あれに?」 カガリの体に回されていたキラの腕から力が抜け、キラがのろのろと顔を上げる。 「カガリ、ごめんなさい。 黙って、勝手に行動して」 「なぜ、キラが謝る?」 「気持ちはわかるから、止められなかったんだもの・・・。 私も、行こうとも思ったんだけど」 「冗談じゃない!」 「うん。 反対されたし、私じゃ許可されない。 ・・・議長が、出させてくれたのよ」 「彼が大変優秀なパイロットであることは、私も知っていますからね」 補足するように、デュランダルが口を挟んだ。 「手は、多いに越したことはない。 ・・・こうして戦闘になるなら、余計にね」 「戦闘・・・?」 「先行している部隊が、交戦中なの。 その上、あの不明艦まで同じ宙域にいるんですって」 「な・・・んだと!?」 「あちらの戦略は、見事だったよね。 あれが、あのジン達と関係あるのかわからないけど。 あの3機まで出てきたら、作業どころでは無くなる。 だって、互角に戦うのがやっとみたいだった。 アスランは強いけど・・・。 だからこそ、無理をしそうで怖い。 ・・・ザクと、あの新型との性能差はどうなんですか?」 最後の言葉は、デュランダルへと向けられている。 しかし、機密にあたるだろうそんなことを答えるはずもなく、またキラとてそんな期待はしていなかった。 沈黙で返す彼へはちらりと目をやるのみで、ミネルバから出撃したモビルスーツが映るスクリーンへと視線を移す。 話をしているうちに、やはり例の3機が出てきたことが報告された。 *** デュランダルの指示で、ミネルバからボギー1へのメッセージが発信される。 あの3機が、ジンもジュール隊をも無差別に攻撃しているからだ。 三つ巴の戦闘になっており、このままではユニウスセブンの破砕作業が間に合わない。 アスラン達も交戦を余儀なくされて、作業するに至っていなかった。 アスラン・・・っ! キラに今できるのは、アスランの無事を祈ることだけ。 地球も、地球にいる両親や友人達のことも、キラの頭には無かった。 ただひたすらに、アスランの無事を祈る。 戦況さえ知ることの出来ない今の自分が、悔しかった。 *** next |
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