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キラは女の子です | ||
「心配かね?」 デュランダルが、横に座ったキラに話しかける。 しかし、胸に沸き上がってくる根拠の無い不安に囚われていた彼女は、反応が遅れた。 「・・・え?」 「・・・君も、彼の実力を知っているのだろう?」 「あ、・・・はい。 それに、今度は戦闘じゃない。 わかっては、いるんです」 「モビルスーツ発進、1分前」 そのキラの言葉にメイリンの声が被り、キラはハッとして彼女を見る。 「到着後は、ジュール隊長の指示に従うよう、言ってちょうだい」 ジュール・・・隊長? ジュールって、あの人・・・? イザーク・ジュール。 アスランやディアッカの同僚で、デュエルのパイロット。 キラは、微かな驚きと共に思い出した。 だが、別のクルーから発せられた次の言葉に、息を呑む。 「ユニウスセブンで、戦闘と思しき熱力を検知。 ・・・モビルスーツです!」 キラだけではなかった。 艦橋のクルー全てが、一瞬そちらを向き、しかしすぐに各自すべきことをする。 タリアの指示が飛び、メイリンから各モビルスーツへと命令変更が伝えられた。 「発進停止!状況変化! ユニウスセブンにて、ジュール隊がアンノウンと交戦中。 各機、対モビルスーツ戦闘用に装備を変更して下さい」 それを聞きながら、キラはデュランダルへと向き直る。 「アスは、どうするんですか? まさか、戦闘に」 「止めて、彼が聞くかね?」 冷静な問い返しに、キラは言葉に詰まった。 彼の言うとおりだと、彼女も思う。 先の戦闘の折り、アスランは見ているしかなかった。 窮地に陥ってしまうまで。 それだって、提案という形だった。 さぞ、はがゆかったことだろう。 ましてや、今。 戦っているのが、あのイザークさんなら。 アスランが、放っておけるはず、ない・・・。 キラにも覚えがあった。 仲間の窮地を、どうして放っておけるだろう? 命が、掛かっているのだ。 守るために、出来ることをする。 力を、尽くすのだ。 「ボギー1確認!」 キラが諦めのため息を吐いたその時、さらに驚愕の事実が伝えられる。 反射的に立ち上がり、キラはメイリンへと駆け寄った。 パネルを覗けば、そこにはアスランが映っている。 『どういうことだ!?』 「わかりません。 しかし、本艦の任務はジュール隊の支援であることに、変わりなし。 換装終了次第、各機発進願います」 「アスラン!」 キラはメイリンから、インカムを取り上げた。 咄嗟に反応出来ないでいる彼女の前に乗り出し、モニターのアスランと向き合う。 「気を付けて、アスラン! あの艦は・・・強い」 「キラ」 「行くなって、言いたいけど」 「すまない」 「私が、我慢できるうちに終わらせて。 でないと、私も出るからねっ。 ・・・でも、無茶はしないで」 「ああ、わかった」 息を吐いてふと見れば、メイリンは横の席に移って、他機の発進準備に掛かっていた。 邪魔をしてしまったと後ろめたく思いながら、キラはインカムをパネル上に置く。 小さく謝罪の言葉を口に乗せ、キラは席に戻った。 と、こちらを見ていたデュランダルと、キラの目が合う。 じっと黙ったまま見つめられ、キラは居心地が悪く、ギクシャクと腰掛けた。 「すみません。 邪魔をしてしまいました・・・」 「そうだな。 これっきりにしてもらいたい。 心配は、わからないでもないが、な。 ところで、君は彼の名前を叫んでいたが?」 「・・・そう、でしたか? でも、戦闘に出る以上、偽る意味は無いから」 「それと、まさか君も出るとでも・・・? 彼は特例だ。 第一、足手まといではないかな?」 「可能性の話です。 この艦のパイロット達だって、彼と同等に戦えるとは思えませんけど」 不安が募り、キラは苛立っている。 デュランダルの穏やかな言いようが、さらにキラを煽っていた。 *** next |
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