no title - 32


キラは女の子です


「心配かね?」



デュランダルが、横に座ったキラに話しかける。

しかし、胸に沸き上がってくる根拠の無い不安に囚われていた彼女は、反応が遅れた。



「・・・え?」

「・・・君も、彼の実力を知っているのだろう?」

「あ、・・・はい。

 それに、今度は戦闘じゃない。

 わかっては、いるんです」

「モビルスーツ発進、1分前」



そのキラの言葉にメイリンの声が被り、キラはハッとして彼女を見る。



「到着後は、ジュール隊長の指示に従うよう、言ってちょうだい」



ジュール・・・隊長?

ジュールって、あの人・・・?



イザーク・ジュール。

アスランやディアッカの同僚で、デュエルのパイロット。

キラは、微かな驚きと共に思い出した。

だが、別のクルーから発せられた次の言葉に、息を呑む。



「ユニウスセブンで、戦闘と思しき熱力を検知。

 ・・・モビルスーツです!」



キラだけではなかった。

艦橋のクルー全てが、一瞬そちらを向き、しかしすぐに各自すべきことをする。

タリアの指示が飛び、メイリンから各モビルスーツへと命令変更が伝えられた。



「発進停止!状況変化!

 ユニウスセブンにて、ジュール隊がアンノウンと交戦中。

 各機、対モビルスーツ戦闘用に装備を変更して下さい」



それを聞きながら、キラはデュランダルへと向き直る。



「アスは、どうするんですか?

 まさか、戦闘に」

「止めて、彼が聞くかね?」



冷静な問い返しに、キラは言葉に詰まった。

彼の言うとおりだと、彼女も思う。

先の戦闘の折り、アスランは見ているしかなかった。

窮地に陥ってしまうまで。

それだって、提案という形だった。

さぞ、はがゆかったことだろう。

ましてや、今。



戦っているのが、あのイザークさんなら。

アスランが、放っておけるはず、ない・・・。



キラにも覚えがあった。

仲間の窮地を、どうして放っておけるだろう?

命が、掛かっているのだ。

守るために、出来ることをする。

力を、尽くすのだ。



「ボギー1確認!」



キラが諦めのため息を吐いたその時、さらに驚愕の事実が伝えられる。

反射的に立ち上がり、キラはメイリンへと駆け寄った。

パネルを覗けば、そこにはアスランが映っている。



『どういうことだ!?』

「わかりません。

 しかし、本艦の任務はジュール隊の支援であることに、変わりなし。

 換装終了次第、各機発進願います」

「アスラン!」



キラはメイリンから、インカムを取り上げた。

咄嗟に反応出来ないでいる彼女の前に乗り出し、モニターのアスランと向き合う。



「気を付けて、アスラン!

 あの艦は・・・強い」

「キラ」

「行くなって、言いたいけど」

「すまない」

「私が、我慢できるうちに終わらせて。

 でないと、私も出るからねっ。

 ・・・でも、無茶はしないで」

「ああ、わかった」



息を吐いてふと見れば、メイリンは横の席に移って、他機の発進準備に掛かっていた。

邪魔をしてしまったと後ろめたく思いながら、キラはインカムをパネル上に置く。

小さく謝罪の言葉を口に乗せ、キラは席に戻った。

と、こちらを見ていたデュランダルと、キラの目が合う。

じっと黙ったまま見つめられ、キラは居心地が悪く、ギクシャクと腰掛けた。



「すみません。

 邪魔をしてしまいました・・・」

「そうだな。

 これっきりにしてもらいたい。

 心配は、わからないでもないが、な。

 ところで、君は彼の名前を叫んでいたが?」

「・・・そう、でしたか?

 でも、戦闘に出る以上、偽る意味は無いから」

「それと、まさか君も出るとでも・・・?

 彼は特例だ。

 第一、足手まといではないかな?」

「可能性の話です。

 この艦のパイロット達だって、彼と同等に戦えるとは思えませんけど」



不安が募り、キラは苛立っている。

デュランダルの穏やかな言いようが、さらにキラを煽っていた。



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