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キラは女の子です | ||
「無理を承知でお願い致します。 私にも、モビルスーツをお貸し下さい」 「お願いします」 艦長であるタリアへと願い出るアスランの横で、キラも同じように頭を下げる。 キラはアスランについて、艦橋へと来ていた。 アスランの気持ちがわかるから、彼の望み通りにしてあげたい。 その為には、ここの責任者たる、タリアの許可が必要だ。 こんな時、キラには何の力もない。 こうして、一緒にお願いするしかない・・・。 「気持ちはわかるけど」 言葉を重ねるアスランへ、タリアは渋い顔をした。 拒否を示すそれに、キラが唇を噛んだその時、別の声が艦橋に響く。 「いいだろう。 私が許可しよう」 「議長・・・」 デュランダルだった。 先の戦闘時と同じ場所に座った彼が、穏やかに告げる。 思いがけない援護に、アスランと、そしてキラも彼に意外の目を向けた。 当然、タリアは、これには咎める声を上げる。 「議長!」 「戦闘ではないんだ、艦長。 出せる機体は、一機でも多い方がいい。 腕が確かなのは、君だって知ってるだろう」 その言葉に、タリアは顔を顰め、しかしアスランの希望を呑んだ。 不承不承とわかるその答えに、アスランとキラはもう一度頭を下げる。 「議長も、ありがとうございます」 「なに。 最悪の事態は、なんとしても避けなければならない。 そうだろう?」 「・・・はい」 最悪の事態。 なんとか考えないようにしていたその光景が、キラの脳裏に思い浮かんだ。 どれだけ砕けば、いいんだろう? 「ところで、アレックス君。 彼女がモビルスーツを操縦できるのはこの目で見ているが。 いくらなんでも、彼女にまで許可は」 「とんでもない! あ、いえ、キラはここに置いて下さい」 一緒になって頼んだことで、誤解されたらしい。 焦って否定したアスランは、さらに別の要望を出した。 キラを、またも艦橋にいさせて欲しいと。 「ふ・・・む。 さて、どうしたものかな、タリア?」 「・・・どうぞ」 かまわないだろう?というニュアンスが、デュランダルの声に込められていた。 それに承諾するタリアが諦めたように肩を落とすのを、キラは申し訳ない気持ちで見る。 艦長さんの立場なら、部外者の私を艦橋になんて・・・。 わかってるんだけど、・・・ごめんなさい。 同行しない代わりに、キラがアスランへと条件を出したのだ。 すなわち、キラが艦橋で作業を見守る。 もちろん、実際の作業が見られるわけではないのだ。 それでも、状況を知るには一番いい。 デュランダルの口添えのお陰だと、キラは彼に感謝の眼差しを向けた。 *** パイロットスーツを身に纏ったアスランについて、キラも格納庫に来ている。 アスランに宛われた機体の前で、キラはちょっと顔を曇らせた。 「これ・・・」 「どうした、キラ?」 「これ、私が乗ってきたのかもしれない」 「そうですよ」 「きゃ・・・っ」 唐突に聞こえた第三者の声に、キラが驚いてバランスを崩す。 「おっと」 「ありがと」 うっかり飛び上がりそうになったキラの腕を、アスランが掴んで止めた。 そして改めて、先ほどの声の主を振り返る。 「これが、一番状態がいいですから」 「あなたは・・・?」 「キラ、彼は技師だよ」 「元々ミネルバに積んでいた機体は、まだ調整中だったんです。 パイロットがいないから、出港してからもほったらかしで。 これは、君が一度動かしているからか、かなり状態はいいです。 問題は無いですよ。 そちらが乗ってきたのは、片腕がもげたままですしね」 「・・・え? アスラン、戦闘をしたの!?」 言葉の意味を覚り、キラは驚愕してアスランを振り仰いだ。 詰め寄る勢いの彼女に、アスランが少し身を引く。 さらに言葉を重ねようとしたキラを振り切るように、コックピットへと飛び上がった。 *** next |
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