no title - 30


キラは女の子です


「無理を承知でお願い致します。

 私にも、モビルスーツをお貸し下さい」

「お願いします」



艦長であるタリアへと願い出るアスランの横で、キラも同じように頭を下げる。

キラはアスランについて、艦橋へと来ていた。

アスランの気持ちがわかるから、彼の望み通りにしてあげたい。

その為には、ここの責任者たる、タリアの許可が必要だ。

こんな時、キラには何の力もない。



こうして、一緒にお願いするしかない・・・。



「気持ちはわかるけど」



言葉を重ねるアスランへ、タリアは渋い顔をした。

拒否を示すそれに、キラが唇を噛んだその時、別の声が艦橋に響く。



「いいだろう。

 私が許可しよう」

「議長・・・」



デュランダルだった。

先の戦闘時と同じ場所に座った彼が、穏やかに告げる。

思いがけない援護に、アスランと、そしてキラも彼に意外の目を向けた。

当然、タリアは、これには咎める声を上げる。



「議長!」

「戦闘ではないんだ、艦長。

 出せる機体は、一機でも多い方がいい。

 腕が確かなのは、君だって知ってるだろう」



その言葉に、タリアは顔を顰め、しかしアスランの希望を呑んだ。

不承不承とわかるその答えに、アスランとキラはもう一度頭を下げる。



「議長も、ありがとうございます」

「なに。

 最悪の事態は、なんとしても避けなければならない。

 そうだろう?」

「・・・はい」



最悪の事態。

なんとか考えないようにしていたその光景が、キラの脳裏に思い浮かんだ。



どれだけ砕けば、いいんだろう?



「ところで、アレックス君。

 彼女がモビルスーツを操縦できるのはこの目で見ているが。

 いくらなんでも、彼女にまで許可は」

「とんでもない!

 あ、いえ、キラはここに置いて下さい」



一緒になって頼んだことで、誤解されたらしい。

焦って否定したアスランは、さらに別の要望を出した。

キラを、またも艦橋にいさせて欲しいと。



「ふ・・・む。

 さて、どうしたものかな、タリア?」

「・・・どうぞ」



かまわないだろう?というニュアンスが、デュランダルの声に込められていた。

それに承諾するタリアが諦めたように肩を落とすのを、キラは申し訳ない気持ちで見る。



艦長さんの立場なら、部外者の私を艦橋になんて・・・。

わかってるんだけど、・・・ごめんなさい。



同行しない代わりに、キラがアスランへと条件を出したのだ。

すなわち、キラが艦橋で作業を見守る。

もちろん、実際の作業が見られるわけではないのだ。

それでも、状況を知るには一番いい。

デュランダルの口添えのお陰だと、キラは彼に感謝の眼差しを向けた。



***



パイロットスーツを身に纏ったアスランについて、キラも格納庫に来ている。

アスランに宛われた機体の前で、キラはちょっと顔を曇らせた。



「これ・・・」

「どうした、キラ?」

「これ、私が乗ってきたのかもしれない」

「そうですよ」

「きゃ・・・っ」



唐突に聞こえた第三者の声に、キラが驚いてバランスを崩す。



「おっと」

「ありがと」



うっかり飛び上がりそうになったキラの腕を、アスランが掴んで止めた。

そして改めて、先ほどの声の主を振り返る。



「これが、一番状態がいいですから」

「あなたは・・・?」

「キラ、彼は技師だよ」

「元々ミネルバに積んでいた機体は、まだ調整中だったんです。

 パイロットがいないから、出港してからもほったらかしで。

 これは、君が一度動かしているからか、かなり状態はいいです。

 問題は無いですよ。

 そちらが乗ってきたのは、片腕がもげたままですしね」

「・・・え?

 アスラン、戦闘をしたの!?」



言葉の意味を覚り、キラは驚愕してアスランを振り仰いだ。

詰め寄る勢いの彼女に、アスランが少し身を引く。

さらに言葉を重ねようとしたキラを振り切るように、コックピットへと飛び上がった。



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