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キラは女の子です | ||
「はぁ・・・」 部屋に入った途端、キラの口からため息が出る。 両方の手で、自分の頬を軽くマッサージするように動かした。 「上手く、笑えなかったな」 自然に見えるようにしたつもりだったが、おそらく強ばって見えたことだろう。 アスランの目には。 笑う気分じゃないんだから、仕方ないけど。 私まで、アスランの負担になったら、困る。 もう一度息を吐くと、キラは壁のスイッチに手を伸ばした。 明るくなった室内で、彼女は部屋に据え付けられた端末へと近づく。 「少し、調べてみよ・・・」 椅子を引き寄せて腰掛けると、キラはキーボードの上に手を滑らせた。 *** キラは夢中になりすぎていたらしい。 扉が開いて人が入ってきたのも、彼女は気付かなかった。 「何か、わかったか?」 「ううん、あんま・・・っ、アスラン!?」 話しかけられた声に答え始めて、キラもやっと我に返る。 上体を捻る彼女の真後ろから、アスランは腕をキーボードへと伸ばした。 指を素早く動かし、キラの開いていたものを次々と閉じていく。 「キラのことだから、やると思ったよ。 これじゃ、俺の話なんかいらないだろ?」 「・・・別に、艦内の情報だけだもん」 「でも、いけないってわかってるんだろ?」 モニターへと向き直ったキラは、アスランに背を向けて小さくなっていた。 目の前から最後の文字が消えた直後、キーボードから離れた手が、キラに回される。 強く、抱きしめられた。 「アスラン?」 戸惑うキラの右肩に、アスランの頭が伏せられる。 キラはちょっと体を強ばらせたが、それ以上動かない彼に、力を抜いて、体をアスランに預けた。 「母上が、いるんだ・・・」 「うん」 「でも、砕くしかない・・・」 「そうね」 「母上は・・・」 「レノアさんは、気にしないわ。 たぶん、ね」 反論するでなく、アスランはキラの静かな声を聞いている。 「それより、地球への被害を見過ごしたりしたら、怒るわ。 そんなの、私が言うまでもないけど」 アスランの腕が緩み、キラの体が自由になった。 椅子を回して、アスランと向き合う。 「メテオブレーカーを持った艦が、ユニウスセブンに向かってる。 この艦も、もう移動を開始したわ。 作業は、モビルスーツ隊の仕事よね?」 「ああ」 「アスランも、行く?」 沈黙で答えるアスランが、それを望んでいることは明らかだった。 「艦長の口振りだと、この艦にはモビルスーツが余っているみたいね?」 「ザクは、何機もあった」 「そっか。 そうよね、これだけの艦ですもんね。 乗員が、足りなかっただけで。 だけど」 「頼んでみる」 決然としたアスランに、既に迷いは見えない。 話ながら心を決めてしまったらしい相手に、キラは顔を曇らせた。 「出来ると、思う? あんな大きな物、こんな短時間で砕ききれるかな?」 「するさ。 しなくちゃ、いけない。 だからこそ、手は多い方がいいんだ」 「なら、私も使う?」 「キラ?」 「私だって、作業くらい出来る。 2年間、ブランクはあるけど。 アスランがやるなら、私も」 「それは駄目だ!」 キラの言葉を遮り、アスランが叱るように言う。 鋭い一喝に、キラの目が驚きに見開かれた。 次いで、むっとした表情でアスランを見上げる。 「なんで!?」 「俺が嫌だから」 「・・・・・・・・・わがまま」 「そうさ」 「それなら」 立ち上がったキラは、アスランの胸に指を突き付けた。 「さっさと済ませて、すぐに帰ってきてね。 それと・・・」 *** next |
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