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キラは女の子です | ||
「なんで、あんなこと言っちゃったんだろ・・・」 自分の部屋がある方へと進みながら、キラは呟く。 彼は、私より少し下くらいだから。 あの頃の私と同じくらい、ということよね・・・。 なんで、軍になんて入ったんだろう? アスランは、戦争を終わらせたかったから。 私は、友達を守りたくて、状況に流されてしまった。 それが正しかったなんて、思わない。 でも、他に選べる道が、あの時の私には見えなかった。 紅を身に纏うシンが、コーディネイターの中でも優秀なのは間違いない。 まして、量産機ではない新型のガンダムが与えられているのだ。 その彼が、軍以外に道が無かったとは、キラには思えない。 だけど私は、オーブからプラントへと移住した人々がどうしたかなんて、知らない。 ずっと、知ろうとしなかった。 彼に何かを言う資格なんて、私には・・・。 *** 「アスラン・・・」 キラは部屋の前で、カガリを連れたアスランと顔を合わせた。 カガリは、キラの声に反応せず、俯いている。 アスランはキラを目で止め、さらに指を口にあてた。 頷くキラへとアスランも頷き返し、カガリを彼女自身の部屋へと導く。 それを見送り、キラはフッと息を吐いた。 そして、部屋が並ぶのと反対側にある窓から、宇宙を眺める。 この艦は今、先の戦闘による補修を進めていた。 それがある程度済むまで、艦は動けない。 「キラ」 ぼうっとしていたキラは、アスランがすぐ横に並んだことに気付かなかった。 「アスラン」 「話は」 「ちょっと、聞いた。 ユニウスセブンが地球に、って」 「・・・そうか」 アスランが、窓の外へと視線を移す。 横顔を見つめるキラの前で、彼のその顔が唐突に歪んだ。 「くそ・・・っ!」 アスランの握りしめられた拳が振り上げられ、壁へと叩きつけられる。 一瞬キラの目が見開かれ、次いで伏せられた。 「なぜだ・・・? どうしてこんなことになる?」 「・・・アスラン」 絞り出されるアスランの声に、キラは一歩彼に近づく。 壁に付けられた彼の拳を、彼女は伸ばした両手で包み込んだ。 アスランはその感触にハッとして、その手から力が抜ける。 キラに手を引き寄せられ、自然、2人は向かい合った。 「怪我、するよ」 「そんな、柔じゃないさ」 「うん、そうだろうけど」 キラはアスランの手を放すと、さらに一歩近づく。 そのまま伸び上がりながら両腕をアスランの首へと回し、力を込めた。 互いの顔が擦れ違い、相手の表情が見えなくなる。 キラにはアスランの目を見て、話せる自信が無かったのだ。 「キラ・・・? キラ、腕・・・っ」 「いいからっ」 唐突なキラに戸惑った後、アスランはキラの左腕の怪我を思い出す。 慌てて外そうとするアスランを、しかしキラは言葉で止めた。 「今、優先することは何?」 「キラ?」 「アスランは、カガリを助けるためにここにいるんでしょう?」 「・・・カガリを」 「だから。 アスランが落ち込んでいる場合じゃない」 「・・・ああ」 「私じゃ、カガリを浮上させられないから。 アスランじゃなきゃ、ダメなの」 「そんなことは、ないだろう? カガリは、俺のことよりキラのことを」 「でも、ダメ。 私にだって、わかってる。 カガリは、私に弱音は吐けない。 だって今の私は、庇護されるだけの存在になってる。 私の前で、泣いたりしない。 私じゃ、ダメ」 キラは、こんなことは言いたくはない。 できることなら、アスランの辛さをこそ和らげたかった。 しかし、カガリをこのままにはしておけない。 第一、キラが言うまでもなく、アスランがカガリを放っておくはずもなかった。 キラは、アスランから腕を外す。 「後で、話を聞かせて。 カガリを休ませたら、私の部屋に来てね」 「いや、キラも少し休め」 「眠れるわけないでしょ?」 ニコッと微笑み、じゃあ後でと言いながら、アスランを残して部屋へと入った。 *** next |
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