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キラは女の子です | ||
「おい、シン! シン、待てよ!」 シンを追ってきたヴィーノが、呼びかけても止まらないシンの腕を掴む。 無理矢理引っ張られ、たたらを踏んだシンは、ヴィーノをキッと睨んだ。 「なんだよ?」 「あ、いや・・・。 なぁ、少し落ち着けよ」 「俺は」 「珍しいよな、お前があんなに怒るの。 オーブじゃなくて、アスハが嫌いなの、お前? それに家族が殺されたって、どういうことだよ? 国を脱出するときに、ってのは聞いてたけどさ」 シンの言葉を遮り、微妙に視線を逸らしたヴィーノが早口に言う。 それを、シンは唇を噛んで聞いていた。 待っても返事をしないシンに、ヴィーノは小さくため息を吐く。 「まぁ、な・・・。 誰だって、言いたくない話ってのはあるよな」 「・・・ごめん」 「いいさっ」 ヴィーノはずっと掴んでいた腕を放し、その手でシンの背を力一杯叩いた。 よろけるシンに、ヴィーノがニッと笑いかける。 「さっ、行こうぜ」 「ヴィーノが止めたんだろ・・・」 「はっはっはっ。 気にするなって」 「・・・いいけど。 でも、先に行ってくれ」 「シン?」 「少し、頭を冷やしていく」 「・・・そっか」 展望室に行くというシンに手を振り、ヴィーノはあんまり考え込むなよと言葉を投げて別れた。 *** キラは、シンとヴィーノの会話を通路の陰から聞いていた。 シンが1人になると、キラはゆっくりと近づく。 足音に気付いたシンが、振り返った。 「あんた・・・。 あの男と一緒にいた?」 「・・・ええ、そうです。 キラと言います。 あなたは、ルナマリアさんと同じパイロットのシンさん、ですね?」 「・・・ああ。 それで、なんの用だ?」 「軍に入ったのは、なぜ?」 「は?」 「オーブで、戦渦に巻き込まれたのでしょう? どうして、戦おうとするの?」 「聞いていたのかよっ」 目元を険しくするシンに、キラは目を伏せる。 それでも、問うことは止めなかった。 「平和に、なったのに。 どうして、銃を手にとるの?」 「そんなこと、あんたに関係ないだろっ」 「オーブを憎んでいるの? プラント・・・、いいえ。 ザフト軍のことは、憎くはないの?」 「家族を殺したのは、オーブだ! 中立がどうのって言って、地球軍の宣戦布告を受けたんだ! ザフトは、関係ない!」 「そう・・・」 「だいたい、あんたは何なんだ!?」 喚くように言うシンに、キラは顔を上げる。 「アスハ代表の、秘書官。 プライベートの、ね」 「オーブ、オーブ、オーブ・・・っ。 何であんた達は、放って置いてくれないんだよっ」 「それは、私のセリフだわ。 これ以上、アスの心に負担を掛けるような真似をしないで」 「な・・・っ!?」 「家族を戦争で失ったのは、確かに不幸でしょう。 戦闘に関わった私達には、同情されたくないのでしょうし。 だけど。 だからって、他人を傷つけていい権利があなたにあるわけじゃない。 言ったところで、あなたの心が晴れるわけでもないでしょう?」 「そんな、こと・・・」 「とにかく。 オーブが嫌いだっていうのは、仕方ない。 でもそれなら、カガリにもアスにも関わらないで」 一方的に話したキラは、踵を返し掛けて、止まった。 もう一度、シンの目を見て口を開く。 「力を持つなら、心を憎しみに染めないで。 そんな力は、平和を壊す。 幸せを奪い去ってしまう」 「あんたなんかに、何がわかる!?」 「・・・わかってからじゃ、遅い」 一瞬にして目を潤ませたキラが今度こそ立ち去るのを、シンは呆然と見送った。 *** next |
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