no title - 25


キラは女の子です


「アスラン、どこに行ったんだろ・・・?」



キラが内線で呼んでも、アスランは出ない。

カガリもだ。

アスランとカガリの間に恋愛感情は無いというアスランの言葉を、キラも今さら疑ったりしてはいない。

2人が一緒なのであれば、何か事態が動いたのだろうと、キラは思った。

同時に、緊迫した事態ではないことも、自分を眠るに任せて置いたことでわかる。

だが、なぜかキラは落ち着かなかった。

おそらくは、彼女を気遣って声を掛けなかったのだろうが、眠る気にはなれない。



なんだろう?



少し考えたが、もちろん答えは出なかった。

ふぅ、と息を吐き、キラは踵を返す。

そのまま部屋を出る扉へと歩き掛けて、自分の恰好に気付いた。



あ・・・、上着・・・?

ああ、あった。



壁に掛けられていた服を手に取る。

きっちりと着込み、キラは部屋を出た。



***



どこ、行こうかなぁ。

・・・ライラさん、いるかな?



できれば、人のいるところがいいと、キラは医務室へと向かう。

しかし今は真夜中だ。

一部のクルーを除き、皆休んでいて当たり前である。

まして、医師である彼女が、病人も怪我人ものいないそこにいる意味は無いのだ。

しかし。



「あれ、ライラさん・・・」

「・・・おや?

 どうしたね?」

「ライラさんこそ、こんな時間までお仕事ですか?」

「違うよ」



ライラは疲れたように首を横に振る。



「とても、寝る気になれなくてね」

「あなたも、ですか・・・」

「君もか?

 そう・・・、そうだね。

 地球は、君達の住んでいる場所だ。

 さぞ心配だろう」



納得したように頷いたライラに、キラは首を傾げた。



地球?

心配?



「どういうことです?

 地球が、どうかしたんですか!?」

「・・・知らないのか?」

「何のことをおっしゃっているのか、わかりません。

 私は、今さっきまで寝ていたんです。

 目が覚めて、そうしたらアスラ・・・、アスも代表も部屋にいなくて。

 それで」

「・・・聞いて、いないのか。

 そうか・・・」

「教えて下さい。

 地球に何があったんですか?」

「・・・いや、私が言うことじゃない。

 おそらく、アスハ代表が議長あたりから説明を受けているだろう。

 そちらから、聞くといい」

「オーブ、いいえ、地球に関することなのでしょう?

 私にも、知る権利があります。

 そんな、気になることだけ聞かされては・・・」



真剣な表情で迫るキラと、ライラはしっかりと目を合わせる。

しばしそのまま睨み合った後、目を逸らしたのはライラだった。



「私も、艦内に広まった話を聞いただけなんだ。

 詳しいことは、わからない」

「かまいません。

 そのお聞きになったことを、教えて下さい」

「・・・血のバレンタインは知っているか?」

「・・・ええ、もちろん。

 それが?」

「あの標的となったユニウスセブンは今、デブリ帯を漂っている」

「・・・知ってます。

 だけど、それがなにか?」



キラの脳裏には、かつて見た、そのユニウスセブンの光景が甦る。

思い出したくはなかった。

あそこにはまだ、あの時亡くなった人々が、眠っている。

それを、キラは間近に見た。



「それが、動き出したらしい」

「・・・動く?

 それは、もともと静止しているわけでは」

「ないよ、もちろん。

 だがそういう意味じゃないんだ。

 地球に、引かれ始めている、らしい」

「・・・地球、に?」

「そうだ」

「嘘・・・」



キラは震えだした手で、口元を覆う。

そうしないと、叫びだしてしまいそうだった。



*** next

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