no title - 24


キラは女の子です


「アスラン!」



キラの部屋を出て、アスランが自室に入ろうとしたその時。

隣から出て来たカガリが、彼を呼び止めた。



「一緒に来てくれ」



手に持っていた上着に袖を通しながら歩き出す彼女に、アスランは無言で従う。

急ぎ足のカガリの横に並ぶと、彼女はチラリと横目に見上げてきた。



「どこにいたんだ?

 てっきりもう、休んでいると思っていたぞ」

「キラを寝かしつけてきた」



いろいろと省いた説明だったが、結果的には間違っていないだろう。

現にキラは、それはもう気持ちよさそうに眠っているのだ。

その寝顔を思い出して、アスランは苦笑を零す。



「・・・なんだか、嬉しそうだな。

 ってことは、キラは大丈夫だったわけか」

「怪我は薬が効いていたからな」

「いや、そうじゃなくて。

 戦闘を見て・・・。

 平気そうにしていたが、あいつはすぐ強がるからな」

「ああ、そういう意味か。

 それは、どうやら杞憂のようだ。

 そういう意味ではな」

「・・・他にも問題が?」



カガリは思わずというように足を止めた。

合わせるようにアスランも止まり、斜めに彼女を見下ろす。



「まだ、問題はある。

 君もわかっているはずだろ?」

「それは・・・」

「だが、キラも自覚していた」

「キラが!?」



驚きを露わにするカガリに、アスランは眉を寄せた。



「カガリ。

 君はもう少し、感情を出さないようにするべきだ」

「わかってる!

 いいだろう?

 ここには私とお前しかいないんだ。

 お前と違って、私は得意じゃないんだからな。

 作りっぱなしじゃ、疲れる」



プイッと余所を向くカガリは、拗ねた子供のようである。

その様子に、アスランは声に出さずに笑った。



こうしてると、やはりキラに似ているな。



普段は思い出さない彼女たち2人の血の繋がりをアスランは思う。

見かけのことではなかった。

育った環境は全く違うのに、彼女達はたまに、とてもよく似た仕草をする。



しかしキラならともかく、一国の代表がこれでは・・・。



「だがここは、オーブじゃない。

 敵ではないが、身内とは違う。

 少なくとも、いつ誰が通るかわからないこんな場所は、論外だ」

「・・・確かに、そうだな。

 悪い」



素直に反省するカガリに、アスランは微笑んだ。

だがすぐに、それは真摯な表情に取って代わる。



「キラの話は、後だ。

 いったい、何があったんだ」

「デュランダル議長から内線が入った。

 問題が、起こったらしい」

「問題?」

「今度は、戦闘だのの話というわけじゃないとは言っていた。

 しかし緊急事態で、と。

 ただ、すぐにでも対応できるような事柄でもないそうだ」



それで、カガリはアスランへと連絡を取ろうとしたが、応答が無かった。

その時、彼はキラと彼女の部屋にいたのだから、当然である。

そうとは知らないカガリは、首を傾げながらも、1人で行こうとしていたのだ。



「・・・悪かった」

「いや、いいさ。

 キラを放っておくわけにもいかないからな」

「人のことは、言えないな、俺も。

 カガリの護衛が任務だというのにな」

「この艦で、私に何がある?

 あるとすれば、平和が破られた時だが、ここには議長もいる。

 第一、本当にそうなれば・・・」

「俺1人では、守りきれるものじゃない」



***



ぐっすりと眠っていたはずのキラは、唐突に、むくりと起きあがる。



「ん・・・、ア・・・ラ・・・?」



ベットの上でペタンと座り、手で目をこすりながら、部屋を見回した。

目当ての人物がいないと認識すると、キラは床に降り立つ。



「・・・なんだろう?」



なぜか、胸騒ぎがした。



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