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キラは女の子です | ||
「ほら、ここの髪が跳ねてるよ」 左腕に負担を掛けないように身を起こすキラに手を貸しながら、もう一方の手を彼女の後頭部へと伸ばす。 指でそっと梳くと、癖の無い髪は、すぐに流れを取り戻した。 「誰のせい?」 「俺のせいだね」 キラの髪を弄っていた手に力が入り、キラの顔がアスランの胸に押し付けられる。 彼の腕はキラの肩から上を抱きしめており、彼女の怪我を負っている腕が痛むことはなかった。 声を上げ、身を離そうとしたキラは、頭の上にアスランの息遣いを感じて、動きを止める。 「アスラン・・・?」 「嫌か?」 「イヤなんて、そんなことないけど。 でも・・・、ちょっと体勢が苦しい」 「ああ、悪い」 アスランの両腕がキラの腰に絡んだ。 それを認識した途端、キラの体が浮く。 「へ?な・・・、何!? きゃっ、ちょっと・・・っ」 訳の分からないうちにバランスを崩したキラは、目の前にあるものにしがみついた。 それは、アスランの頭。 「キラ、大丈夫だから、落ち着いて。 ほら。 君は軽いけど、ずっとこのままじゃさすがに、ね」 自分の胸元からする、聞き取りづらい声に、キラは事態を自覚した。 いや、全部を把握したわけではないが、自分が今、アスランの頭を抱え込むようにしていることを、である。 恐る恐る腕に込めていた力を解き、そっと見下ろせば、ちょうど彼の顔を自分の胸に押しつけていた。 キラの顔が、羞恥に染まる。 離れようと体を反らすと、すとんと彼女の体は落ちた。 腰掛けたアスランの、脚の間にお尻がはまり、両脚は彼の片脚の上を通って、ベットの上に投げ出されている。 まるで膝に横座りさせられたようなその体勢に、さらにキラは慌てふためいた。 そこから抜けだそうと藻掻くが、腰に緩く絡んだままのアスランの腕が邪魔で果たせない。 「ア、アスランっ。 ど、どくから、どいてっ」 「落ち着けよ、キラ。 話を続けていいんだろう? この体勢、苦しいか?」 「く、苦しいって、そういう問題じゃないでしょっ。 は、話するなら、もっと普通に座ろう、ね?」 「苦しくないなら、いいな。 それで話を戻すが・・・」 アスランは、まだ動こうとするキラの首に手を伸ばし引き寄せ、素早く唇を盗んだ。 ピクンとして硬直する彼女に、真剣な眼差しを向ける。 「キラは、今キスしたのが、俺以外だったら、どうだ? キスでなくても、抱きしめられるだけでもいい。 やっぱり、嫌ではないと思う?」 言葉に、キラがやっとアスランと目を合わせた。 その彼の顔つきから、話が冗談やからかうような気持ちで発せられた訳ではないとキラにも伝わる。 それきり口を噤んで彼女の答えをじっと待つアスランに、キラは自分の唇に指先で触れた。 アスラン以外の、人? キラの脳裏に、親しい人々の顔が、次々と浮かぶ。 老若男女を問わず、思いつくまま、アスランの言うとおりに想像してみた。 結果は。 「イヤじゃない」 「・・・キラ?」 「・・・わけ、ないでしょ。 もう、なんてこと、考えさせるのっ」 思わず身を震わせるキラに、アスランの方が眉を顰める。 「いったい、誰を想像したんだ?」 「言いたくない」 「・・・まぁ、いいが。 それで、やっぱり俺はキラの友達でしかないか?」 「友達・・・じゃないかもしれない。 カガリ相手でも、さすがにキスはイヤだわ」 「・・・だろうね」 アスランと両親を除けば、キラにもっとも近しいのはカガリだ。 その彼女とでもダメだから、アスランが特別というのでは、アスランも少しばかり複雑な心境になる。 知り合って3年弱でも、キラとカガリは血の繋がった兄弟であり、そして。 カガリは、女だろう。 なんでここで、彼女を引き合いに出すんだ? わかってないのか、やっぱり・・・。 と、そこでアスランの思考が中断した。 彼の腕から抜け出すことを諦めたのか、キラがアスランの胸に体を預けてきたのである。 キラはもぞもぞと少しだけ体を移動して、楽な姿勢をとった。 黙りこんでしまった彼女に、アスランもまた、静かに待つ。 「キラ?」 アスランの望む答えを出すか、と期待していた彼の耳に聞こえてきたのはしかし、すぅすぅという寝息だった。 *** next |
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