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キラは女の子です | ||
「ずっと、こうしたかったよ」 耳元で囁かれ、キラの体が微かに震える。 赤く染まった耳朶に、アスランの唇が触れた。 彼の言葉と共に、キラの上に重みが掛かる。 「アスラン・・・?」 キラは、恐る恐る顔を正面に向けた。 そこには見慣れたアスランの、見慣れない顔がある。 どうしていいかわからず、キラは泣きそうな気持ちでそれを見上げた。 「重い?」 「・・・平気、だけど。 でも、動けない」 「嫌か?」 「・・・心臓が、ドキドキする。 イヤじゃ、ないと・・・思うんだけど。 泣いちゃいそう・・・」 その言葉を終えないうちに、キラの瞳に透明の雫が溜まる。 彼女が瞬くと、それが目尻から耳へと流れた。 それを追うように、アスランの唇が、キラの目元に降りる。 「私、変よ・・・。 こんな」 言いかけたキラのその唇が、アスランのそれによって塞がれた。 キラは未知のことに驚き、反射的に逃げようとする。 だが、いつの間にか頭の後ろに回された彼の手で、キラの頭はしっかりと固定されていた。 「アス・・・っ」 声を上げようとした唇に、もっと深く口づけられる。 見開かれていたキラの目は、やがて閉じられた。 *** どれだけ、時が経っただろうか。 息苦しくてアスランの胸を叩いたキラによって、長いキスは終わりを告げた。 やっとのことで息を整えたキラは、見下ろすアスランをキッと睨む。 だが、潤んだ瞳、赤く色づいた唇では、いささかならず迫力が足りなかった。 本人には自覚が無く、アスランも敢えて指摘はしない。 「普通、こういうのは、恋人同士がするものだと思う」 「俺もそう思うよ」 「じゃあ、なんで私にするの?」 「キラを好きだからに、きまっている。 さっきも言っただろう? 聞いてなかったか?」 好きだ、と。 さっきそう言われた時のことを思い出し、キラの心臓が鼓動を速めた。 「き・・・聞いた、けどっ。 で、でも、私とアスランは、親友、でしょう? 恋人になんて」 「キラも俺を好きだろう?」 「・・・・・・・・・・・・好き、だけどっ。 そ、それは、友達として、だから」 「キラは、友達とキスするの?」 「・・・っ、したの、アスランでしょ!」 「俺とのキス、嫌だった?」 「・・・それとこれとは、別!」 「別じゃないよ。 ああ、でも、嫌じゃなかったことは認めるんだね」 「そ、それはっ」 これ以上は無いというほど、キラの顔は真っ赤になっている。 彼女は至近距離にあるアスランと目を合わすまいと、横を向こうとした。 しかし、アスランの手に阻まれ、果たせない。 「ねぇ、キラ。 ちょっと、考えてみてくれないか」 「な、何、を? っていうか、ね、ねぇ、アスラン。 その前に、お、起きよう。 話、し辛いでしょ?」 「いいや」 「こ、この体勢、疲れるでしょ?」 キラの上に、アスランは上体を被せ、それを肘をついた腕だけで支えていた。 とはいえ、鍛えられたその体は、この程度で疲れるほど柔ではない。 だが、確かにこの体勢は理性が疲弊するかもしれないと、アスランは思った。 彼とて、今ここで事を進めるつもりは無い。 男として暮らしてきたキラが、本来の女性という姿に戻って、2年。 ずっと、アスランは待ってきたのだ。 こうして、彼を異性として、恋愛対象として見てくれることを。 長かった。 そして、怖くもあった。 キラの中で、アスランが特別な地位にあることは自負している。 けれど、彼女がいつか、アスランではない誰かに恋しないと、誰が言えるだろう。 だから、嬉しかったのだ。 先の発言は、キラのカガリへの嫉妬。 アスランの恋人への、嫉妬だった。 キラの心は、今もまっすぐにアスランへと向かっている。 しかしまだ彼女自身が、その想いに戸惑っていた。 それがわかる以上、彼はもう少し、待たなければならない。 もう少し、彼女の心が熟すまで。 「・・・・・・・・・そうだね」 それでも、アスランは起きあがる彼の気配に気を抜いたキラの不意をついて、その唇に触れるだけのキスをした。 *** next |
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