no title - 21


キラは女の子です


「・・・・・・・・・・・・誤解だ」



アスランの口から、声が唸るように吐き出される。



「いったい、なんだってキラまでそんな噂を真に受けるんだ?

 キラには、俺とカガリが恋人に見えるのか?」

「・・・さぁ?

 だって、2人が一緒にいるところって、見る機会が少ないし。

 それだって、いつも公務中だから。

 普段がどうかなんて・・・」



本気で言っているらしいキラに、アスランは大きなため息を吐いた。

そしてもう一度、キラの横に座り直す。



「カガリが好きなのは、キラ、お前だよ」

「・・・私?

 もちろん、私も好きよ。

 血のつながりなんか抜きで。

 でも、これって恋愛感情じゃないでしょう?」

「それはそうだ。

 もちろん、そういう話じゃない。

 カガリの中の、優先順位のことだよ。

 キラの目に、俺と彼女が親しく見えるならね。

 俺達は、有る意味、同じだからだ。

 カガリにとって、キラは唯一残った家族。

 だけど、そのことは公にはできない。

 代表という立場上、キラを優先することもできない。

 そんな彼女にとって、俺は都合が良いんだ」

「そんな・・・」

「キラの言うとおり、俺もカガリを好きだよ。

 けど、それこそ恋愛感情じゃない」

「ほんとに?」

「本当に」

「なんだ、そうなんだ」



きっぱりと言い切ったアスランに、キラがふわりと微笑んだ。

その嬉しげな様子は、アスランに悪戯心を抱かせる。

心持ち体をキラに寄せ、優しく問いかけた。



「・・・ねぇ、キラ?」

「ん?」

「安心した?」

「え?あ、うん。

 そうね、なんか、胸が軽くなった感じがする」

「そうか。

 キラは、俺とカガリが恋人でなくて、安心したんだよね」

「・・・そう、なる、かな?」



その返事に、アスランの表情が変わる。

キラの見慣れたその面に、艶やかな笑み。

吐息がかかるほど顔が近づき、キラはびくっとして背を反らした。



「どうして?」

「ど、どうして、って・・・」



アスランの指が、キラの前髪をそっと梳き上げる。

額に触れるか触れないかのそれに、キラが身を震わせた。



「ア、アスラン・・・。

 な、なんか、変じゃない!?」

「俺は、変じゃないよ。

 キラこそ、変なことを言うね」

「そ、そう?

 あ、だけど、あの・・・っ。

 ちょ、ちょっと、どいてくれない?」



気がつけば、キラは上体を後ろへと傾け、右腕一本で支えている。

アスランが少しずつ近づくのに対して、彼女が背を反らしていったからだ。



「それで、答えは?」

「な、なにが?」

「キラが」

「きゃあ・・・っ」



支えきれなくなった右腕が外れ、キラはパタリと倒れ込む。

彼女は痛みを予想して、ギュッと目を瞑った。

しかし、まるで痛みを感じず、そこがベットの上であったことを思い出す。

安堵の息を吐き、起きあがろうとしながら、キラは目を開いた。



「・・・っ!」



キラは息を呑む。

彼女の上に、アスランが覆い被さっていた。

両脇に腕をついて、キラをじっと見下ろしている。

逆光で、アスランの表情が、彼女にはよく見えなかった。



「あ・・・」



何かを言おうとして、だがキラは何もしゃべれなくなる。



アスランも変だけど、私も変・・・。

なんで、こんなに胸がドキドキするんだろう?

どうして、声が出せないんだろう?



身動き一つせずに見上げるだけしかできないキラに、アスランが顔を寄せてきた。

反射的に目を閉じたキラの唇に、柔らかいものが一瞬触れる。

驚いて開かれたキラの目の前に、アスランの顔があった。



今の、・・・キス?



「あ・・・」

「好きだよ、キラ。

 意味、わかる?」



目を見開き、キラはアスランから顔を逸らす。

瞬時に赤く染まったその横顔が、声にならないキラの返事だった。



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