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キラは女の子です | ||
「・・・・・・・・・・・・誤解だ」 アスランの口から、声が唸るように吐き出される。 「いったい、なんだってキラまでそんな噂を真に受けるんだ? キラには、俺とカガリが恋人に見えるのか?」 「・・・さぁ? だって、2人が一緒にいるところって、見る機会が少ないし。 それだって、いつも公務中だから。 普段がどうかなんて・・・」 本気で言っているらしいキラに、アスランは大きなため息を吐いた。 そしてもう一度、キラの横に座り直す。 「カガリが好きなのは、キラ、お前だよ」 「・・・私? もちろん、私も好きよ。 血のつながりなんか抜きで。 でも、これって恋愛感情じゃないでしょう?」 「それはそうだ。 もちろん、そういう話じゃない。 カガリの中の、優先順位のことだよ。 キラの目に、俺と彼女が親しく見えるならね。 俺達は、有る意味、同じだからだ。 カガリにとって、キラは唯一残った家族。 だけど、そのことは公にはできない。 代表という立場上、キラを優先することもできない。 そんな彼女にとって、俺は都合が良いんだ」 「そんな・・・」 「キラの言うとおり、俺もカガリを好きだよ。 けど、それこそ恋愛感情じゃない」 「ほんとに?」 「本当に」 「なんだ、そうなんだ」 きっぱりと言い切ったアスランに、キラがふわりと微笑んだ。 その嬉しげな様子は、アスランに悪戯心を抱かせる。 心持ち体をキラに寄せ、優しく問いかけた。 「・・・ねぇ、キラ?」 「ん?」 「安心した?」 「え?あ、うん。 そうね、なんか、胸が軽くなった感じがする」 「そうか。 キラは、俺とカガリが恋人でなくて、安心したんだよね」 「・・・そう、なる、かな?」 その返事に、アスランの表情が変わる。 キラの見慣れたその面に、艶やかな笑み。 吐息がかかるほど顔が近づき、キラはびくっとして背を反らした。 「どうして?」 「ど、どうして、って・・・」 アスランの指が、キラの前髪をそっと梳き上げる。 額に触れるか触れないかのそれに、キラが身を震わせた。 「ア、アスラン・・・。 な、なんか、変じゃない!?」 「俺は、変じゃないよ。 キラこそ、変なことを言うね」 「そ、そう? あ、だけど、あの・・・っ。 ちょ、ちょっと、どいてくれない?」 気がつけば、キラは上体を後ろへと傾け、右腕一本で支えている。 アスランが少しずつ近づくのに対して、彼女が背を反らしていったからだ。 「それで、答えは?」 「な、なにが?」 「キラが」 「きゃあ・・・っ」 支えきれなくなった右腕が外れ、キラはパタリと倒れ込む。 彼女は痛みを予想して、ギュッと目を瞑った。 しかし、まるで痛みを感じず、そこがベットの上であったことを思い出す。 安堵の息を吐き、起きあがろうとしながら、キラは目を開いた。 「・・・っ!」 キラは息を呑む。 彼女の上に、アスランが覆い被さっていた。 両脇に腕をついて、キラをじっと見下ろしている。 逆光で、アスランの表情が、彼女にはよく見えなかった。 「あ・・・」 何かを言おうとして、だがキラは何もしゃべれなくなる。 アスランも変だけど、私も変・・・。 なんで、こんなに胸がドキドキするんだろう? どうして、声が出せないんだろう? 身動き一つせずに見上げるだけしかできないキラに、アスランが顔を寄せてきた。 反射的に目を閉じたキラの唇に、柔らかいものが一瞬触れる。 驚いて開かれたキラの目の前に、アスランの顔があった。 今の、・・・キス? 「あ・・・」 「好きだよ、キラ。 意味、わかる?」 目を見開き、キラはアスランから顔を逸らす。 瞬時に赤く染まったその横顔が、声にならないキラの返事だった。 *** next |
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