no title - 20


キラは女の子です


「キラが、再びモビルスーツに乗るとは思わなかったよ」

「私だって」



このミネルバの格納庫で自分が意識を失ったらしいというところで、キラは話を終えた。

彼女の記憶は議長と言葉を交わしたところで途切れているのだから、その通りなのだろう。

コックピットから落ちたのだと言われてアスランは眉を顰めたが、結局何も言わなかった。

キラが無茶をするのは、今に始まったことではない。

まして、今回については、アスランとカガリを心配したからだ。



「逃げているだけね、私は。

 言い訳のつもり、だったのかも。

 戦争に関わる物を遠ざけて。

 普通に、平凡に生きて。

 決して私は、特殊な存在じゃないと」

「それが、いけないことか?」

「・・・え?」

「何かから、逃げることは、いけないか?

 普通に暮らしたいと思うことも?

 そんなはず、ないだろう」

「だけど!

 逃げたって、何も変わらない・・・っ」

「時が解決することだって、ある。

 後から、わかってくることだってあるだろう?」

「・・・・・・・・・・・・うん」



キラは過去を思い起こし、こくりと頷く。

またも泣きそうになっているキラの額に、アスランはキスを落とした。



「さあ、気を静めて。

 今日はもう、ゆっくりお休み」

「・・・アスランが話をさせたんじゃない」



アスランの口調が小さな子供に対するものに聞こえ、キラは拗ねたような口をきく。

興奮させたのは、自分じゃないの、と。



「もう、子供じゃないのよ、私」

「そうかい?

 でも、言いつけを守らないあたり、怪しいな」

「・・・言いつけ?」



首を捻るキラに、アスランはやや声を低めた。



「他の随行員達と、行動を共にする」

「・・・あ」

「それがなんで、1人でこの艦にいたのかな?」

「ごめんなさい!

 お、怒らないで・・・」

「怒らないよ」

「ほんと?」

「俺はね」

「・・・・・・・・・カガリは」

「怒るだろうね、間違いなく」

「そう、よね・・・。

 ね、ねぇ、アス」

「俺は、知らない。

 いっぱい、怒られるんだね」

「そんなぁ・・・」



上目遣いにとりなしを強請るキラは、アスランにあっさりと断られ、消沈したように肩を落とす。

さらに、小さく唸りながら、どうしようなどと呟きだした。

そんなキラの頭を、ぽんぽんと撫で、アスランはスッと立ち上がる。



「アスラン?」

「もう、本当に休め。

 疲れているだろう?

 俺はもう行くから」

「何処へ!?」



キラの手がさっと伸び、アスランの手首を掴んだ。



「カガリのとこ!?」

「俺の部屋にだよ」

「あ、なんだ、そっか。

 そうよね」



ぎこちなく笑い、キラの手がアスランから離れる。

その手を、今度はアスランが握った。



「さっきも言ったね」

「な、なにを!?」

「カガリが、どうした?

 俺が、なんで彼女の部屋に行くと思ったんだ?」

「わ、私、そんなこと」

「思ったんだろう?」



キラは、狼狽えたように首を横に振る。

それは肯定しているも同然だった。



「だって・・・」



アスランが黙ったまま見つめてくるのに、キラは観念したのか、小さな声で話し出す。



「アスランとカガリは、恋人同士なんでしょう?」

「・・・誰が、そんなことを?」

「いろんな人。

 マーナさんも、アスランになら姫様を安心してお任せできます、って。

 カガリが、アスランを特別な目で見てるのは私も知ってるし。

 カガリの話題は、いつもアスランのことだもの。

 それにアスランだって、カガリを好ましく思っているじゃない」



俺が?

カガリと、恋人?

キラにそう思われてる?



アスランもそんな噂があるのを知ってはいたが、まさかキラにまで誤解されているとは思ってもみなかったのだ。



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