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キラは女の子です | ||
「それで?」 話に区切りがつき、キラはふぅと息を吐く。 と、キラが落ち着くのを待っていたかのようにアスランが問い掛けた。 「・・・え?」 「キラは、さっきの質問に答えてないよ?」 「しつ、もん?」 キラに誤魔化すつもりはない。 本当に思い出せず、小首を傾げ、目を彷徨わせた。 その仕草でそれと察し、アスランは苦笑する。 「なにがあったのか、と訊いただろう?」 「え?あ・・・、うん。 でも、それはだから、アスランが・・・」 「それもあるとは思うけどね。 他にも何か、あるんだろう?」 じいっと見つめてくるアスランを、キラは不思議そうに見返した。 だが、何かに思い至ったように、その表情が一変する。 「あ・・・」 「キラ?」 「な・・・、なんでもない、から」 不自然に目を逸らすキラに、アスランは立ち上がった。 その動きに、キラの肩がピクリと揺れる。 行ってしまう? 無意識に伸ばされたキラの指先が、アスランの袖口に触れた。 そのまま掴んでしまう。 そうして縋るように見上げれば、そこにはアスランの微笑みがあった。 「あ・・・」 まるで、キラの行動をわかっていたかのようなその態度。 話を拒否しておいて、自分のとった行動に、キラは赤面する。 それを見てか、アスランの笑みは深くなった。 「話す気になった?」 「・・・うん」 なんだかからかわれているような気分で、キラは拗ねたように頷く。 話したくない気持ちより、今、アスランと離れたくなかった。 一連の騒動で忘れかけていた、一つの死。 思い出して、キラの心に重くのし掛かっている。 口にするのは、辛かった。 自分の軽率が招いたそれを、アスランに知られたくない。 そう思う一方、誰かに聞いて欲しいとも思うのだ。 そして話すなら、アスランに決まっている。 カガリではダメだった。 アスランもカガリも、とても優しく、でも厳しいことでもはっきりと言う。 キラは、そんな2人が大好きだった。 それでも、キラの中で、彼らは同列ではない。 彼女の天秤は、常にアスランの側へと傾いていた。 親しさの度合いが違い、そしてまた、彼らの立場の違いもある。 なによりも、キラにとって彼は本当に特別な存在だった。 *** 話すと決めても、キラは何から話そうかと迷う。 しかし結局、アーモリーワンで別れた後からのことを、順を追って話し出した。 言いたいことは多々あるだろうが、アスランは黙ってじっと聞いている。 そうして、もっともキラが思い出したくなかったところで言葉が途切れた。 泣きたくなる気持ちを、奥歯を噛み締めて堪える。 大きく息を吸い、息を吐くのと一緒に、体に入った力を抜いた。 「私は、迷わなかったの。 迷う、暇も無かったけど。 危険って感じて。 目の前の議長の腕を掴んで・・・。 次の瞬間には、熱い空気に押されて転がっていた。 立ち上がって振り向いたら・・・。 それまで私がいたその場所に」 その時、横に座っていたアスランが、キラの肩を抱き寄せる。 彼女の震えを止めるように。 「私が、巻き込んだの。 少なくとも彼は、そう。 私が大人しくしていれば」 「仮定に意味は無い」 「でも・・・っ」 「いつだって、道は一つじゃない。 その兵士は、自分で選択したんだ。 その結果を背負えるほど、君は偉いのか? 自惚れるんじゃない」 「・・・アスラン」 その口調とは裏腹に、アスランの声はキラの耳に優しく響いた。 彼の、穏やかな言葉が続く。 「キラは議長を助けた。 命を一つ、キラは救った。 事実はそれだけだよ」 「でも」 「この件については、譲らない。 その時に、この怪我を負ったんだね。 それで、その後キラはどうしたんだ? まだ、この艦にキラがいる理由を聞いてない」 真剣な眼差しのアスランに気圧され、キラは促されるまま話を続けた。 *** next |
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