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キラは女の子です | ||
「カガリは?」 「部屋に」 「そう」 アスランの横へ並んで腰掛け、キラは静かに声を掛ける。 部屋に入ってきたのがキラだと、アスランにはすぐにわかったらしかった。 一度として顔を上げることなく、問いに答える。 キラも、彼に視線を向けることなく、無言で目を閉じた。 こんな時、自分には何もできない、と思いながら。 昔から、落ち込むのはキラで、慰めるのがアスランというのが当たり前だった。 だから、こんな時に掛ける言葉が出て来ない。 そもそもキラには、アスランが今どんなことを悩んでいるのかが、はっきりとはわからないのだ。 ただ。 アスランは、私が傍にいると落ち着くって。 そう、言ってたから・・・。 実際、こうして横に座っても、アスランは特に反応を示さない。 こんなことは、キラ相手以外ではありえなかった。 アスランの育ちの良さと、そして軍人であったという事実。 それが、他人が同席している場において、常にアスランの気を緩ませない。 今は、このもやもやした気持ちは、忘れよう・・・。 彼はキラの心の動きに敏感で、彼女が不安がれば、それを察してしまうのだ。 アスランは、自分で考え、自分で答えを出すだろう。 せめてその邪魔をしたくなかった。 だが邪魔は、別の方向からやってくる。 通路から、複数の話し声が聞こえてきた。 *** 「へぇ・・・、ちょうどあなたの話をしていたところでした、アスラン・ザラ」 紅の軍服に身を包んだ、女1人、男2人、そして先ほどキラが会ったばかりのメイリン。 先頭に立っていた女性が、アスランへと話ながら近寄ってきた。 キラは、残る男2人の陰に隠れたメイリンと、目で会釈する。 「伝説のエースに、こんなところでお会いできるなんて。 光栄です」 「そんなものじゃない。 俺は、アレックスだよ」 「だからもう、モビルスーツにも乗らない?」 キラは眉を顰めた。 この人は、どういうつもりなんだろうか・・・? 彼女の真意がキラにはわからない。 だが、その言葉はアスランの地雷を踏んだことはわかった。 きつく睨み上げるアスランの肩に、キラはそっと触れる。 それだけで、彼は我に返った。 しかしそこに、今度ははっきりと刺を含んだ声が響く。 「よせよ、ルナ。 オーブなんかに、いる奴に。 何もわかってないんだから」 声の主は、黒髪に赤い瞳の少年だった。 言い捨てて去っていく。 もう一人の兵士も、敬礼をして出ていった。 残ったのは、目の前に立つ彼女と、メイリンの2人である。 「でも、艦の危機は救ってくださったそうで。 ありがとうございました」 敬礼をして背を向けた彼女を、キラは慌てて引き留めた。 「あ、あの!」 「・・・何か? っていうか、どちらさま?」 「お姉ちゃん、ほら、さっき言ったオーブの」 「ああ、そう言えば、その服」 「メイリンさんの、お姉さんですか?」 「そうよ。 よろしく、ルナマリアよ」 「キラです。 この服、私が使わせて頂いてしまってすみません」 「かまいません。 メイリンにあげた物ですし、そのメイリンがいいって言うんですから。 それで?」 「・・・ああ、その、今の人は?」 「・・・黒髪がシン、金髪がレイ。 どっちも私と同じ、モビルスーツパイロット」 「あなたも?」 「ええ、変ですか? 女の私がパイロットでは?」 特に含みは無かったのだが、どうやらルナマリアの気分を害してしまったらしい。 焦って首を横に振った。 「とんでもない! オーブでも、女性パイロットはいます」 そう言うキラとてモビルスーツのパイロットをしていたのであるが、それは今言うことではない。 キラの答えで納得したのか、ルナマリアはまた笑みを戻した。 「シンの発言は、赦してやってくださいます?」 「彼は」 「オーブが嫌いなんです。 シンの故郷なんですけどね。 詳しい話は、プライベートですからお答えできません」 では、と。 もう一度敬礼をし直して、ルナマリアは退室し、メイリンも後を追うように出ていった。 *** next |
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