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キラは女の子です | ||
「あ、居た!」 看護師に治療を受けながら、声に反応してキラが顔を入り口へと巡らす。 そこには、艦橋で見かけた赤い髪の女性兵士が立ち、キラを見ていた。 居た、という発言からすると、どうやらキラを探して来たらしい。 心当たりのないキラは、首を傾げ、代わって別の声が答えた。 「・・・入って来るなり、それかね?」 「キャッ、ライラさんっ」 死角になった場所にいた医師に、彼女は気付かなかったらしい。 ため息混じりの言葉に、ちょっと飛び上がった。 「あ、あの、その人に届け物を・・・」 「・・・入りなさい」 「はぁい」 仕方なさそうな医師には近寄らず、彼女はキラの横に立つ。 左腕を看護師に預けたままなので、キラは首だけ捻って相手を見上げた。 「私に、ですか?」 「そう。 これ、どうぞ。 あ、こっちに置いておきますね」 「あの・・・?」 「服ですよ。 艦には軍服しかないから、上着はこれを着てください」 話しているうちに、キラの腕の包帯が巻き終える。 自由になった体で、キラは立ち上がった。 「ありがとう、助かります」 キラの上衣は、二度の出血で、もう着られなくなっていた。 軍のアンダーシャツは貸してもらったので、それで我慢しなくてはと思っていたところである。 しかし、受け取った服を見て、眉を顰めた。 「これ、私服ですよね。 私が着てしまって、いいんですか?」 「平気ですよぉ。 姉からお古をもらったんですけど、私には大きいんです。 差し上げますから、遠慮なく、どうぞ。 お姉さんなら、似合いますよ」 「・・・ありがとう、ええっと・・・」 「メイリンです。通信管制を担当しています。 お姉さんは?」 「キラです。 ありがとう、メイリンさん。 お姉さんにもよろしくお伝え下さいね」 「あは、気にしないと思いますよ。 でも、後で紹介しますね」 「この艦に居るの?」 「モビルスーツのパイロットなんです。 名前はルナマリア。 あ、ついでに訊いていいです?」 終始、はにかむような笑顔で話すメイリンに、キラも自然な笑顔になっている。 しかし、その彼女の顔に突如浮かんだ好奇心という名の輝きに、キラはちょっと身を引いた。 それでも、相手の無邪気な様子に、キラもすぐに肩の力を抜く。 「答えられることなら」 「キラさんは、代表やあのアスランさんとどういう関係なんですか? すごく親しげでしたよね。 お2人とも、自分や互いのことより、あなたを心配してるように見えたんですけど」 ずばりと訊かれ、さすがにキラも言葉に詰まった。 確かに、艦橋内で、うっかり気安く話過ぎたと反省する。 人前では気を付けようと自分に言い聞かせながら、変に誤解されないように説明を口にした。 「アスハ代表とは、親戚なんです。 遠縁ですけど。 彼とは幼なじみなんで」 「ああ、それで」 アスランとカガリの関わりより、どちらもキラと昔から親しい、というニュアンスを込めたそれに、メイリンも納得顔で頷く。 しかしキラは、この時うっかりしていた。 メイリンが、アスラン、と言ったのを否定していない。 そのまま答えてしまったことで、メイリンにアレックス・ディノ=アスラン・ザラと肯定したも同然だった。 もっとも、デュランダルがそう呼んだ時点で、否定しようもなかったのだが。 *** 宛われた部屋の場所を教えられ、キラは看護師に背を押されるようにして、医務室を追い出された。 てっきり誰かに付き添われるのだと思い込んでいたので、キラはたった今出てきた医務室の扉を呆然と見つめる。 えっと・・・? これって、軍艦なんだよね? 私が一人で勝手に歩いていいわけ? ・・・とりあえず、行こ。 首を捻らざるを得ない扱いに、困ってしまったキラだったが、気を取り直して歩き出した。 一人になれば、考えてしまうのは、アスランのこと。 アスランが、何かを思い詰めているのはわかるのだ。 ただ、それが何なのか、わからない。 もしかしたら、キラがそうであって欲しくないと思うことなのかもしれなかった。 傷に響かぬよう、ゆっくりと歩いていたキラは、ふと気配を感じて、横を見る。 キラの目に、俯いて顔を歪めている、アスランが飛び込んできた。 *** next |
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