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キラは女の子です | ||
「ひゃ・・・っ」 背後から迫る艦からの攻撃に、ミネルバが大きく揺れる。 その衝撃に耐えようとしたキラは、うっかり怪我をした左手で椅子を強く掴んでしまった。 小さく叫んだその声で、アスランがキラに顔を向けてくる。 揺れ続けているために、彼も体勢を整えるので精一杯らしかった。 「キラっ」 「・・・あっ・・・ぅ。 ごめん、・・・平気。 ちょっと痛いけど、それだけだから。 大丈夫」 息を整えてから、ニコリと微笑み、早口にキラは言う。 実際、この程度の痛みが耐えられないわけではなかった。 自分の怪我より、このミネルバの危機の方が重大だからと。 言葉にせずとも、アスランには通じた。 キラと目を見交わし合うと、無言で頷いた彼は、意識を彼女から切り離す。 それが、キラにはわかった。 前を向き、スクリーンに映る情報とクルー達の交わす報告に、アスランの意識が集中している。 そんな彼から、キラは目を逸らした。 椅子の上で座る位置をずらし、安定し易い体勢に変える。 背を椅子に預け、目を閉じた。 どうしてまた、こんな・・・? 世界は、平穏を取り戻す。 それを誰もが願って、この2年を過ごしてきた。 平和を望むのはオーブだけではない。 それなのに・・・っ! 「キラ・・・」 「!」 呼びかけに左を見れば、カガリが心配げにキラを見ていた。 「怖いか? やっぱり、艦橋に連れてきたのはまずかったか・・・」 聞いて、キラは目を見開く。 と、キラの唇が微かに笑みを刻んだ。 今さら・・・ね。 怖くないと言えば、嘘になるけど。 「ここにいて良かった。 ・・・そう思う。 どうなっているのか、わからない方が怖い」 「・・・そうだな」 どうやら、話しているうちに、思い出したらしい。 同意するように、カガリが頷いた。 キラは戦闘に怯えたりしない。 それを避けていたことは事実だが、それは怖かったからではなかった。 怖くはないが、実のところ、キラは戦闘の様子を聞きたくないと思う。 聞いても、キラには何も出来ないからだ。 今のキラには、戦うだけの想いも、その力も無い。 死にたくない。 アスランを死なせたくない。 カガリも、ここにいる誰も、死んで欲しくはない。 それは紛れもなく、キラの本心だ。 けれど、その想いだけで戦うわけにはいかない。 それでは、本当に過去の繰り返しだった。 私は、戦うためにいるんじゃない。 そんなことのために、生きているんじゃない。 *** 「ミサイル接近!数、6!」 鋭い叫びが、キラの意識を現状に立ち返らせる。 「迎撃!」 「でも、これは・・・」 戸惑ったようなクルーの声に、キラは自然とそちらを向いた。 キラの視線は、右上方へと流れる。 と、その視界で、アスランが息を呑むのがわかった。 アスラン? 問う暇もなく、アスランが身を乗り出す。 「まずい! 艦を小惑星から離してくださいっ」 驚いて、キラはその寸前に見ていたスクリーンを見やった。 艦体に付けられたカメラが、艦体の一部と、アスランの言う小惑星の表面が映っている。 あっ! おそらくはアスランが考えただろうことが、キラにも飲み込めた。 そう、キラ自身が相手だったとして、この状況なら同じことをしたかもしれない。 しかし、アスランの先の言葉も、遅かった。 それに艦長やクルーらが反応する前に、ミサイルが着弾する。 ・・・小惑星に。 「離脱する!」 艦長の声が響くが、小惑星の欠片が艦へと降りかかり、進路を塞いでいった。 *** next |
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