no title - 12


キラは女の子です


「議長、それは・・・」

「心配にはおよびませんよ」



言葉を交わすデュランダルとカガリの声を聞きながら、キラは顔色を変えているアスランを見る。

今の彼は、その意識がすべてデュランダルへと向けられていた。

カガリのように、キラがデュランダルに進言することは出来ない。

公的立場が、違うのだ。



「彼を咎めようというのじゃない。

 すべては私も承知済みです。

 カナーバ前議長がとった措置のこともね」



だが、口を挟めたとして、キラに何が出来ようか?

既に、アスランの名は現実となって、この艦橋にいるすべてのクルーに聞こえていただろう。

この上、キラ自身の素性をばらすようなこと避けなければなかった。

カガリと、そしてなによりも、アスランがそれを懸念していることをキラは知っているのだから。

誰にも気付かれないように小さくため息を吐き、キラは椅子に座り直した。

艦橋内に視線を滑らせる。

こちらを向いていたクルー達が、キラの視線に気付いて、はっとしたように向き直っていった。

最後に通信を担当しているらしい赤い髪の女性クルーが職務に戻るのを確認し、キラは1つのスクリーンに目を移す。

そこには、このミネルバと、発進した各モビルスーツ、そして追跡中の艦との、相対位置が示されていた。



・・・え?

なんで?



デュランダルの声を閉め出そうとしたキラの意識が、目の前の現実へと向く。

キラの思考に被さるように、クルー達の声が艦橋を飛び交った。



「インパルス、ボギー1まで、1400」

「未だ、進路も変えないのか?」

「どういうことだ?

 なにか、作戦でも?」



こちらが捕捉したということは、相手・・・敵艦でも同じはずである。

どちらも前進しているということは、敵艦はミネルバに背を向けているということだ。

距離を縮められて、尚も転進せず、艦載機の発進もないなど、不自然極まりない。

その時、キラの横から鋭い声が上がった。



「デコイだ!」



デコイって・・・?



キラは声の持ち主・・・アスランを振り返る。

身を乗り出すようにしていた彼は、しかしすぐに悔やむ表情をした。



アスラン・・・。



口出しを悔やんだのか、それとも別に理由があるのか?

キラでも、それを窺い知ることは出来なかった。

わかるのは、あの一瞬、彼の横顔がキラの目をくぎ付けにしたこと。

オーブで、キラの傍で微笑んでいてくれたアスランとは、違う彼を感じた。

そう、戦いの中に身を置いていた頃の、アスランを。

なにか、もやもやしたものを感じたキラは、振り切るように前を向く。



あれは!



思わず息を呑んだキラは、ミネルバから発進した4機と同じ場所にいつの間にかある、別の3つの光を目で追った。

複雑に交錯するそれは、戦闘を意味している。



「ボギー1、ロスト!」



その声によくよく見れば、先ほどまであった光点がひとつ、消失していた。

ミネルバが追っている、艦。

これはつまり、ミネルバは謀られたということだ。



「ショーン機も、シグナル・ロストです!」



ショーンと言われても、キラにはわからない。

だが、それがこの艦から発進した機体のパイロットなのだということは理解出来る。



「イエロー62メートル、熱紋3。

 これは・・・、カオス、ガイア、アビスです!」



どこかで、待ち伏せていたんだ!

パワーをダウンさせて!



キラは唇を噛んだ。

エネルギーを発しないものを、レーダーは捉えることが出来ない。

そんなことは、キラだって知っている。

不意を衝かれれば、不利なのは当然だ。



じゃあ、ボギー1というのも?



「ブルー18、マーク9、チャーリーに熱紋・・・。

 ボギー1です!

 距離、500!

 さらに、モビルスーツ2!」

「後ろ!?」



後ろに、500!?

そんな・・・っ。



キラが知っている戦闘は、モビルスーツ戦である。

こんな風に、艦橋から戦闘を見ることなど、考えてみれば初めてだ。

モビルスーツでの距離と、艦同士の距離は違う。

これでは、ミネルバが相手の攻撃を振り切ることは無理とは言わずとも、かなり難しいはずだった。



*** next

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