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キラは女の子です | ||
「私はオーブの方々にもブリッジに入っていただきたいと思うのだが」 デュランダルが艦長と思しき女性に告げる。 アスランとカガリの陰から、キラは彼女が驚いたように振り返るのを見た。 それで当然と思うキラの前で、デュランダルが艦長を説き伏せてしまう。 「議長がそうお望みなのでしたら」 そう応えた艦長・・・タリアは、くるりと椅子を回して前を向いた。 デュランダルも椅子に座り、横に並んだ椅子を3人に勧めてくる。 足を踏み出そうとしたアスランの、その服の裾をキラはついと引いた。 「キラ?」 振り向いて小声を出す彼に、キラは躊躇いがちに訊く。 「私も、いいの?」 「キラを1人にはしておけない」 「でも」 「目を離すと、心配でならない」 「・・・ごめんなさい」 俯いてしまうキラの背を、アスランはそっと押した。 包帯の巻かれた左腕に触れないように、カガリと挟むようにキラを座らせる。 「キラ、平気か?」 「大丈夫よ、カガリ。 怪我は、たいしたことないから」 「そのことじゃなく。 あ、いや、さっきはすまない。 私の所為で、痛い思いをさせてしまった」 「ああ、あれはちょっとタイミングが悪かっただけだから」 「・・・それで、その腕のことではなく。 ここにいて、平気か?」 ここ、とは艦橋のことだと、カガリは身振りで伝えてきた。 クルーの声が響き、モビルスーツが出撃するのだとわかる。 これから、この艦は戦闘を始めるのだ。 カガリの気遣いに、キラは微かに頷く。 「どこにいても、同じだから。 それなら、2人といる方が安心できる。 ・・・大丈夫。 ありがとう」 言いながらも、キラの右手は膝の上で強く握られていた。 その手に、暖かいものが触れる。 見ると、アスランの手が、キラの手を包み込んでいた。 「アスラ・・・?」 横に座ったアスランを見たキラに、彼は無言のまま、ふわりと微笑む。 その笑顔に、キラの動悸が速くなった。 怪我のせいか血色の悪かったキラの頬が、微かに赤くなる。 それと反比例するのように、体の震えが止まった。 ゆっくりと、アスランの手がキラから離れる。 気付いたキラは、はっとしたように前に向き直った。 ア、アスランの笑顔なんて、見慣れてるはずなのに・・・。 なんで、こんな・・・? 右手で、ざわめく胸をおさえ、キラは自問する。 と、そこでデュランダルの声が耳に届いた。 「ボギー1か・・・。 本当の名前は、なんと言うのだろうね。 あの艦」 「は?」 デュランダルは、正面を見たままだ。 だが、アスランにはそれが自分に話しかけられてるとわかったらしい。 それだけ見てとり、キラは顔を戻した。 「名はその存在を表すものだ。 ならばもし、それが偽りだったとしたら」 ぎくりと、キラの体が強ばる。 その言葉が、アスランに向けられていることは、彼女にもわかった。 だから、それを肯定するような身振りはしてはいけないと、そちらを向きたい気持ちを抑える。 この人は、知っている・・・。 そう、知らないはずが無いんだった。 キラとアスランとでは、立場が違った。 彼女は地球軍に所属し、MIA認定され、さらにはその軍から存在そのものが消されている。 彼らにとって、コーディネイターであるキラの名を残したくなかったのだろうが、それは彼女にも幸いした。 オーブにおいて、キラ・ヤマトが、それも女性として生存していようと、軍に関わる必要が無いということである。 それに対して、アスランは違った。 もとより、パトリック・ザラの嫡男、そしてプラントの歌姫ラクス・クラインの婚約者として知れ渡っている。 その彼が、ラクスとともに当時のプラントから離反したことは、違えようのない事実だった。 名を変え、オーブへと籍を移していること。 評議会のメンバーであれば、当然知っているだろう。 まして、デュランダルは議長という任にあった。 「それが偽りだとしたら。 それはその存在そのものも偽り。 ・・・ということになるのかな?」 我慢できず、キラはデュランダルを睨む。 デュランダルの意図は明らかだった。 「アレックス・・・。 いや、アスラン・ザラ君?」 *** next |
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