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キラは女の子です | ||
「ああ、そういえば」 カガリへと事態の説明をしたデュランダルは、艦内の案内をしながら、今思い出したというように口を開く。 「申し上げるのが遅れてしまいましたが」 「まだ、何か?」 「実は、お二人以外にも、この艦に民間人を収容しているのです」 「・・・医務室で、医師が治療をしているとお聞きした。 あなたが、お連れになった女性だということだったが」 「ええ。 今、薬で眠っているので、後ほどお引き合わせ致します」 「私に?」 足を止め、カガリは怪訝そうにデュランダルを見上げた。 議長の連れと聞けば、当然プラントの人間と思うだろう。 「彼女は、あなたに随行して来たと言っていました」 「な・・・っ!?」 「キラが!?」 顔色を変えたカガリと、そしてアスランを見て、デュランダルが口を噤んだ。 立ち上がり、机に手を付いて身を乗り出すように、カガリが彼に迫る。 アスランもそれまでのポーカーフェイスを崩し、デュランダルを仰視していた。 よく見ると、その握られた両の拳は震えており、アスランが何かを堪えていることがわかる。 2人の突然の変貌に、デュランダルの横に立っていたタリアは唖然とした。 デュランダルは、カガリとアスランとを見比べ、首を傾げる。 「キラ、というのは、彼女の名前ですか?」 「私に今回同行してきたのは、キラ以外は、全て男だ。 ほんとうに、その・・・」 「彼女についていた兵士は、そう言っていました」 「そんな、あいつが、なんでこんなところに?」 「議長がお連れになったそうですが。 なぜそのようなことに?」 「ああ、それは」 「怪我は? 大丈夫なのか、キラは!?」 口を挟んだアスランに答えようとしたデュランダルを遮り、カガリが叫んだ。 「どこに? さっきの医務室だな!」 言って焦ったように周りを見回す。 今にも駆け出しそうな勢いだ。 だが、もちろん艦内を知らない彼女には、場所がわからない。 「落ち着いてください、代表」 「これが、落ち着けるか!」 「カガリっ」 耳元でアスランに呼ばれ、カガリがはっとした。 厳しい目のアスランを見て、ふっと体の力を抜く。 そうだ、心配してるのは、アスランだって同じなんだ。 私が、感情的になっていて、どうするっ。 「左腕をかなり痛めてしまったようです。 しかし、彼女もコーディネイターですから、快復は早いでしょう」 「そう、か・・・」 一抹の不安を残しながらも、カガリは頷いた。 そんな彼女に、デュランダルは軽く頭を下げる。 「私は、彼女に助けられました。 怪我をしたのも、半分はそのせいです」 「キラ、に? なんだって、議長と?」 「詳しくは、彼女自身にお聞き下さい。 私の主観で話すより、よろしいでしょう。 とにかく、彼女は私の恩人であることは確かなのです」 「キラに、会わせてくれ」 デュランダルの目配せで、タリアが近くの通信機に手を伸ばした。 短い会話で、キラがまだ眠っていることが聞いている3人にも伝わる。 *** 「え?こちらに運ばれた民間人ですか? ああ、はい。 まだ、薬が効いています。 そうですね、体質にもよりますから、なんとも。 はい、はい、わかりました。 ・・・はぁ?オーブ? はい、目覚めましたら、すぐ」 ライラは通信を終え、ふぅと息をを吐いた。 くるりと椅子を回し、立ち上がる。 「やれやれ。 民間人の上、オーブの子とは。 こうなると、アスハ代表がこの艦に来たのは良かったな。 彼女も心強いだろう」 患者・・・キラの眠るベットの横に立ち、ライラは様子を窺った。 脈を診ようと腕を手に取ると、彼女の手がピクンと反応する。 「おや?起きたかな?」 キラの瞼が、小さく震え、やがてその下の紫色の瞳が見えた。 しばし、瞬きを繰り返す。 首を巡らしたキラと、ライラの目が合った。 *** next |
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