no title - 08


キラは女の子です


「ああ、そういえば」



カガリへと事態の説明をしたデュランダルは、艦内の案内をしながら、今思い出したというように口を開く。



「申し上げるのが遅れてしまいましたが」

「まだ、何か?」

「実は、お二人以外にも、この艦に民間人を収容しているのです」

「・・・医務室で、医師が治療をしているとお聞きした。

 あなたが、お連れになった女性だということだったが」

「ええ。

 今、薬で眠っているので、後ほどお引き合わせ致します」

「私に?」



足を止め、カガリは怪訝そうにデュランダルを見上げた。

議長の連れと聞けば、当然プラントの人間と思うだろう。



「彼女は、あなたに随行して来たと言っていました」

「な・・・っ!?」

「キラが!?」



顔色を変えたカガリと、そしてアスランを見て、デュランダルが口を噤んだ。

立ち上がり、机に手を付いて身を乗り出すように、カガリが彼に迫る。

アスランもそれまでのポーカーフェイスを崩し、デュランダルを仰視していた。

よく見ると、その握られた両の拳は震えており、アスランが何かを堪えていることがわかる。

2人の突然の変貌に、デュランダルの横に立っていたタリアは唖然とした。

デュランダルは、カガリとアスランとを見比べ、首を傾げる。



「キラ、というのは、彼女の名前ですか?」

「私に今回同行してきたのは、キラ以外は、全て男だ。

 ほんとうに、その・・・」

「彼女についていた兵士は、そう言っていました」

「そんな、あいつが、なんでこんなところに?」

「議長がお連れになったそうですが。

 なぜそのようなことに?」

「ああ、それは」

「怪我は?

 大丈夫なのか、キラは!?」



口を挟んだアスランに答えようとしたデュランダルを遮り、カガリが叫んだ。



「どこに?

 さっきの医務室だな!」



言って焦ったように周りを見回す。

今にも駆け出しそうな勢いだ。

だが、もちろん艦内を知らない彼女には、場所がわからない。



「落ち着いてください、代表」

「これが、落ち着けるか!」

「カガリっ」



耳元でアスランに呼ばれ、カガリがはっとした。

厳しい目のアスランを見て、ふっと体の力を抜く。



そうだ、心配してるのは、アスランだって同じなんだ。

私が、感情的になっていて、どうするっ。



「左腕をかなり痛めてしまったようです。

 しかし、彼女もコーディネイターですから、快復は早いでしょう」

「そう、か・・・」



一抹の不安を残しながらも、カガリは頷いた。

そんな彼女に、デュランダルは軽く頭を下げる。



「私は、彼女に助けられました。

 怪我をしたのも、半分はそのせいです」

「キラ、に?

 なんだって、議長と?」

「詳しくは、彼女自身にお聞き下さい。

 私の主観で話すより、よろしいでしょう。

 とにかく、彼女は私の恩人であることは確かなのです」

「キラに、会わせてくれ」



デュランダルの目配せで、タリアが近くの通信機に手を伸ばした。

短い会話で、キラがまだ眠っていることが聞いている3人にも伝わる。



***



「え?こちらに運ばれた民間人ですか?

 ああ、はい。

 まだ、薬が効いています。

 そうですね、体質にもよりますから、なんとも。

 はい、はい、わかりました。

 ・・・はぁ?オーブ?

 はい、目覚めましたら、すぐ」



ライラは通信を終え、ふぅと息をを吐いた。

くるりと椅子を回し、立ち上がる。



「やれやれ。

 民間人の上、オーブの子とは。

 こうなると、アスハ代表がこの艦に来たのは良かったな。

 彼女も心強いだろう」



患者・・・キラの眠るベットの横に立ち、ライラは様子を窺った。

脈を診ようと腕を手に取ると、彼女の手がピクンと反応する。



「おや?起きたかな?」



キラの瞼が、小さく震え、やがてその下の紫色の瞳が見えた。

しばし、瞬きを繰り返す。

首を巡らしたキラと、ライラの目が合った。



*** next

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