no title - 07 | ||
キラは女の子です | ||
「誰か、いない?」 医務室入り口でルナマリアが中に向かって声を掛ける。 すぐに2人の女性看護師が、続き部屋から出てきた。 「軍医は?」 彼らがカガリの頭に包帯を巻いていくのを見ながらルナマリアが訊く。 「今、あちらで患者の診察を行っています」 「骨にヒビが入っているかもしれないので」 「艦に怪我人が運ばれてきているの?」 「そうですけど・・・」 不思議そうに訊ねるルナマリアに、看護師達は顔を見合わせた。 何と説明しようか、という顔で。 結局、2人のうち年上と思われる方の看護師が躊躇いがちに口を開く。 「軽傷者がこの艦に集められているのは確かです。 私達と医師を残して、格納庫に近い一室で応急手当をしています。 ただ彼女は議長がお連れになったのと、・・・軍人ではないので」 「ほんとに、議長はこちらに・・・って、民間人!? 他にもいたの!」 「患者がいるのよ。 静かになさい」 つい叫んでしまったルナマリアに、別の声が被さった。 決して大きな声ではないが、相手を黙らせる威厳がある。 ルナマリアはエリートの証である紅服を身につけていた。 しかし、ただのパイロットより、軍医の方が上である。 たとえザフトに明確な階級が無くとも、扱いはそうなっていた。 だが、ルナマリアが気圧されたのは、経験の差だったろう。 やっと初陣を経験したばかりの彼女と、先の大戦時に既に軍医として軍艦に乗っていたこの医師とでは、勝負にならなかった。 「そっちの民間人も怪我?」 「頭部のため、やや出血が多かったようですが・・・」 「どこで怪我したって?」 「モビルスーツのコックピットに同乗していたそうです」 「2人で? なんと、まぁ。 最近の民間人は、モビルスーツに乗れるんだねぇ」 感心するようなそれは、この2人だけを指した言葉では無かったが、ルナマリアにはわからない。 姿勢を正し、ルナマリアは彼らの素性とここにいる経緯を簡単に説明した。 医師・・・ライラは興味深げに頷く。 しかし、彼女は看護師達の話とカガリの治療を確認した上で、彼らを医務室から出ていかせた。 *** 「ライラ先生、彼女は?」 「薬で寝ているよ。 まったく、我慢強いにもほどがあるね」 大きくため息を吐いたライラに、看護師達は苦笑を交わす。 つき合いは短いが、ライラがその口調とは裏腹に、別室で寝ている患者を心配しているのがよくわかった。 「まぁ、いい。 こっちは、あの子1人だ。 お前達もあっちへ手伝いに行きなさい」 「はぁい」 「行ってきまぁす」 軽い足取りで出ていく2人の背を見送り、ライラはさらに大きく息を吐く。 仮にも軍艦の中で、こんな語尾を伸ばすような返事を聞くとは、と。 この新造艦には、経験豊富な指揮官と若い新人達が配属されていた。 衛生兵と呼ばれる彼らも同様である。 ライラを除けば、皆、大戦後に従軍したものばかりだ。 医療行為についての経験は積んでいるにしても。 「しかし、オーブの代表首長、ねぇ・・・。 で、護衛が、あれ。 あんな、素顔晒して歩いていて、平気かね? ま、あたしが心配する筋合いじゃないが」 ぶつぶつと呟きながら、事務机へと歩いていた彼女は、ふと足を止める。 眉を寄せ、たった今見たばかりのカガリ・ユラ・アスハの顔を思い浮かべた。 見覚えが、ある? はて、どこで見た? 有名ではあるが、あまりプラントのメディアに顔を出さないカガリである。 戦後に少し出ていたが、ライラはあまり興味がなく、顔など覚えてはいなかった。 ルナマリアに言われなければ、わからなかっただろう。 首を捻り、ちょっと唸った後、頭に閃くものがあった。 「そうか、あの子と似ているのかな?」 思い立ったらすぐ、とばかりに、ライラは今さっきまで自分が治療していた患者のベットへと向かう。 脇に立ち、じっとその顔を見つめた。 似てる、といえば似てる。 こっちの子のが、優しい感じだがな。 デュランダルが同行してきた民間人で、彼女がなんと、ザクを操縦してきたということしかライラは聞いていない。 民間人といってもプラントの人間だという思い込みもあり、ただの他人のそら似だろうと結論付け、首を振りながら自分の机に戻っていった。 *** next |
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