no title - 05


キラは女の子です


「・・・あれは、議長?

 アスとカガリは・・・!?」



ガラス張りのエレベーターから、キラは遠くにデュランダルを見つけた。

けれどすぐに建物の陰に隠れ、見えなくなる。



「2人は、いなかった。

 いったい、どこに?

 ・・・シェルターに入ったなら、いいけど」

「あ、あの」

「なに?」



すっかりその存在を忘れられた兵士は、キラに睨まれ、息を呑んだ。

ついさっきまで、穏やかに微笑み返した彼女との違いに、驚いている。

さらには、彼女の目の鋭さに、身を竦ませた。

兵士が言葉を継げないうちに、地上に着いて、扉が開く。

キラは飛び出し、兵士も追いかけた。



***



「デュランダル議長!」



掛けてくるキラに、デュランダルに付き従っていた兵士達が彼を庇うように立つ。

銃を彼女に向けた。



「何者だ!」

「議長!」

「近づくな!撃つぞ!」

「わぁーっ、待ってください!」



さすがに銃を前に足を止めたキラに、やっと案内役が追いつく。

息一つ切らしていない彼女の横で、膝に手を付いて息を整えた。

護衛の兵士達の目は彼に向き、キラはひたすらデュランダルを見つめる。



「か、彼女、は、・・・オーブの方です。

 代表の秘書官です」



言葉の途中で、デュランダルが兵士達を下がらせた。

キラと、向かい合う。



「アスハ代表は、どこですか!?」

「先ほど、シェルターへ案内させた」

「では、無事なんですね!?」

「もちろんです」

「それはどこ・・・逃げて!」



言いかけたキラは、何かを感じ、咄嗟にデュランダルの腕に手を掛け、引っ張りながら横に転がった。

直後、すぐ傍の工廠のシャッターが吹き飛ぶ。



「もう、なんだって・・・っ」

「怪我をしているな」



キラが地についた手に、血が滲んでいた。

ちょうど横倒しになったデュランダルに覆い被さる形になり、キラのその手が、彼の目の前にある。



「・・・すみませんっ。

 大丈夫でした!?」



そんなつもりはなかったが、結果的に相手をクッションにしてしまったことに気付き、キラは慌てて身を起こした。

体に痛みが走り、キラは息を詰める。

動かすと痛い左腕に血が滲むのに気付くが、気力で堪えた。

デュランダルも起きあがる。



「怪我は?」

「・・・たいしたことないです」

「すまない、助かった」

「いえ・・・、他の人は」



辺りを見回し、その惨状にキラが震えだした。

身を起こしたキラの見つめる先では、兵士達が倒れ臥している。

その中には、彼女を案内してくれた、あの少年兵の姿もあった。



「ああ・・・っ。

 そんな」



ふらふらと立ち上がり、キラは彼に近づく。

傍らに跪き、手を伸ばしかけて、しかし途中で止めた。

力無く、腕を降ろす。

確認するまでもなかった。

彼も、周りに倒れる彼らも。

もう生きてはいないのだ。



「私が・・・案内・・・頼まなかったら。

 こんな・・・ことで・・・。

 私、・・・あなたの名前も知らない。

 ごめん・・・なさ・・・」

「立ちなさい」

「・・・っ」



右腕を掴んだ手が、キラを力強く引き上げる。

強制的に立たされ、よろけそうになる体を、キラはなんとか踏ん張った。

涙に濡れた顔を上げる。



「避難するぞ」

「・・・は・・・い。

 ・・・あっ、足に怪我を!?」



背を向けて歩き出すデュランダルの後に続こうとして、キラはその歩き方で、それに気付いた。

問いかけに、だが、デュランダルは答えず、振り返らない。

キラは目元を拭い、周囲を見回した。

その目が、モビルスーツを捉える。

迷ったのは、一瞬だった。



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