no title - 04


キラは女の子です


「なに、あれ・・・?」



建物が、爆発した。

いくつも、そう、攻撃を受けたかのように。

さらに工廠の一つから出てきた3体のモビルスーツを、キラは呆然と見つめた。

モビルスーツが出てきたことに驚いたわけではない。

工廠はそのためのものであるから、それは、なんら不思議ではなかった。

問題は、その・・・。



「ガンダム?

 そんな、まさか!?」



キラは、軍やそれに類するものから避けていた。

だからといって、まったく何も知らないわけでもない。

今のザフト軍の主力がザクと呼ばれる機体で、かつてキラがガンダムと呼んだタイプは、使われていないはずだった。

そして。

サイレンが鳴り響いている。



「な、なんだ!?」



キラの案内役の兵士が狼狽えているのを横目に、キラはモビルスーツの動きに注目した。



動揺していて、どうするのっ。

自分で、考えなくては。

・・・サイレンは、あれが出て来る前で、その付近がまず吹き飛んだ。

なら、あれは非常事態で出てきたんじゃない!

それに・・・。



キラは、先ほどと同じ工廠から、傷だらけの兵士がよろけながら出てきて倒れるのを目撃する。



なんてこと!

繰り返すの!?

あんなことを、繰り返すっていうの!?



かつて、ヘリオポリスであった悲劇。

キラが否応なく戦争に巻き込まれた、きっかけ。

・・・モビルスーツの奪取。

ヘリオポリスでは、奪う側であったザフト軍。

今回は、奪われる側に立たされたようであった。



「ちょっと!

 アス・・・、いえ、アスハ代表は、どこにいるの!?」



震えそうになる自分を叱咤し、キラは自分の横で動揺している兵士の腕を掴む。

揺り動かされ、はっと我に返った彼は、わからないと答える。

実戦経験の無い彼には、非常時の対応が体に染みついてはいなかった。



「デュランダル議長がいる部屋を知らないの!?」

「え?・・・あ、知ってます」

「なら、案内して!」

「は、はい」



キラの勢いに押され、兵士は彼女をそこへと案内する。

・・・キラが民間人、どころか他国の人間であるにも関わらず、だ。



「何事ですか!

 その女性は誰です!?」



たどり着いたその部屋の前で、2人は誰何を受ける。

答えたのは、キラだった。



「私は、アスハ代表の秘書官です。

 彼女はご無事でいらっしゃいますか?」

「・・・議長が、工廠区域を案内していらっしゃいます」



やや躊躇いながらも、その女性兵士は答える。

その言葉に、キラの目が見開かれた。

キラだけではなく、案内してきた兵士も驚きを露わにするのを見て、女性兵士が躊躇いながら口を開く。



「あのサイレンは何ですか?

 情報が入ってこないんです。

 ご存じでしたら」

「こちらの、モビルスーツが奪われたみたいです。

 外では戦闘を始めています。

 ・・・工廠のある区域で」



事態の深刻さを知って固まる相手をよそに、キラはまたも兵士の腕を掴んだ。



「下へは、どこから降りられるの!?」

「あ、・・・え?」

「ここを出て、左手奥にエレベーターがあります。

 それで、地上に降りられます!」

「ありがとう!」

「あ、待ってください!」



答えられない兵士に代わり、先に立ち直った女性兵士がキラに説明する。

聞いたキラは、礼を言うと、後ろも見ずに走り出した。

慌てて、案内の兵士も追いかける。



***



避難中に案内を失ったアスランとカガリは、倒れてきたザクに乗り込んでいた。



「アスラン、キラは!?

 いや、他の者達も・・・っ」

「俺は、君を守らなくてはいけない。

 キラは・・・、大丈夫だ」



アスランは、自分に言い聞かせるように大丈夫、と繰り返す。

だが、キラの心配をしていられるのもそこまでだった。

ガンダムの一機が、彼らの乗るザクを攻撃してくる。

アスランはたいした武装のないモビルスーツで、応戦しなければならなかった。



*** next

Top
Novel 2


Counter