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キラは女の子です | ||
「アスランは私の同行を反対しなかったわね」 「して欲しかったのか?」 「まさか」 ソファに座るアスランへと歩み寄り、キラはポスンと沈み込むようにその横に腰掛ける。 戦後に作られたプラント・アーモリーワン。 そこへと向かう艦の中、キラはアスランと2人きりで話す時間がとれた。 「だが、賛成もしていないよ」 「・・・でしょうね。 うん、わかってるのよ。 カガリが反対したのは、私のため、でしょ? 同じ理由で、アスランに負担が掛かるのも、そう。 だけど、心配しているのは、私も同じよ。 よりによって、アスランがプラントになんて。 アスランは、有名人の自覚ある?」 大戦当時の最高評議会議長、パトリック・ザラ。 その嫡男でり、プラントの歌姫と呼ばれたラクス・クラインの元婚約者。 もとより、プラント中に知れ渡っているアスランだ。 そして戦時中にパトリックにより拘束され、脱走している。 特に軍関係者には、アスラン・ザラは複雑な存在だった。 だからこそ、アスランがオーブにいることは、プラントでは暗黙の了解となっている。 と言っても、政府や軍の上層部の、さらにごく一部の者には、だ。 「だから、偽名を用意しただろう。 オーブの正規IDだ」 「アレックス・ディノ。 名前は違っても、アスランの顔だって知られているんじゃない? 私と、違ってね」 「それだが・・・。 キラも偽名にすべきだった」 「なんで? 私のこと、知ってる人なんて、ごく一部じゃないの。 その上、みんな男だって思ってるのよ。 そうと知らずに、同一人物だなんて思うものですか。 ヤマト秘書官って呼ばれている女が、ね。 アスランもカガリも、他の人も。 キラ・ヤマト、って呼ばないでしょ?」 「・・・キラも、俺を呼ぶ時には気を付けろよ」 言われた途端、キラが目を彷徨わせる。 「キラ?」 「あ、うん、そうね。 気を付けるわ。 ・・・でも、もっと違う名前、無かったの? 言いづらい」 「どんな名なら良かったんだ?」 「・・・どれも、イヤ。 そうね、アス、って呼んでもいいかな? それなら、なんとか」 「好きにしろ」 「うん、好きにする」 キラは笑顔で頷いた。 よほど、アレックスと呼びたくなかったらしい。 とても嬉しそうに綻んだ顔が、しかし次には強ばった。 「アスランは、今度のこと、どう思ってる?」 「言っただろう。 俺は口を挟まない」 「わかってる。 だから、アスラン個人の意見として、よ。 私は、無謀だと思う。 もう、2年。 移住した人も、それだけ経てば、もうそれぞれに生活が確立してる。 オーブに、地球に戻る気があれば、自分で帰って来ているでしょう。 議長だって、カガリの要望を呑むとは思えない」 戦時中に流出した人材の返還。 それはオーブがかねてよりプラントに申し出ていた事だ。 その返答が芳しくなく、カガリは直に会って話すと言う。 人材、というと言い方が悪いだろうが、カガリは、自身の国民への責務と考えていた。 それがわかっているから、キラも面と向かって反対出来ない。 そしてキラは、自分の知識や経験が足りないことを自覚していた。 アスランに、それが備わっていることも承知している。 「どうなるにしろ、カガリには必ずプラスとなるものがあるだろう。 代表として、経験を積むいい機会だ」 きっぱりと言い切るアスランの肩にキラは額を乗せ、気を付けてねと呟いた。 *** 「行ってくる」 「お気をつけて、アスハ代表。 アス、お願い致します」 議長のもとへは、随員は一名に。 そう言われてしまえば、アスランに任せるしかなかった。 キラの言葉に、アスランが微かに頷き、カガリと共に出ていく。 キラは、他の随員達と共に、別室へと案内される。 「とても、人が多いんですね」 「はい、新造艦の進水式ですので。 軍関係者以外にも、一般の招待客が数多く来ております」 接待役の1人、どうやら軍人らしい年若い青年・・・というより少年は、キラに話しかけられ、嬉しげに答えた。 「そんなに? いいですね、私も見てみたいものですけど」 残念そうなキラの様子に、彼は同情したらしい。 式典の行われる会場を、と誘われ、キラはにこやかに立ち上がった。 *** next |
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