誰がために (TV本編第1話?)


本編に添うつもりですが、最初から違います
特に、フレイ
フレイ好きな方はご注意ください
キラは女の子です


「ほら、ミリィ。

 落ち着けって」



憤慨するミリアリアとそれを宥めるトール。

そんな彼らを、キラは羨ましそうに見つめた。



ほんと、この2人って仲がいいよね。

いいなぁ。

・・・私も、会いたいな。



キラが両親と共に、月からオーブのコロニーであるヘリオポリスに来て、2年と少し。

その半年前にキラの大好きな彼は月からプラントへ行ってしまったので、もう3年も会っていない。

彼・・・アスランとは、連絡も取れなくなっていた。

月での友達とも別れ、キラは寂しくて、悲しくて、俯いてばかり・・・。

そんなキラにできた最初の友達が、ミリアリアだった。

面倒見の良い彼女は、当時の素っ気ないキラの対応にも平気な顔。

恋人のトールも巻き込んで強引にキラを引っ張り回し、ついにはキラに笑顔を思い出させてくれたのだ。

それでも、彼を思い出しては寂しくなる。



アスラン、今ごろどうしてる?

いつになったら、会えるのかな?

あのまま月にいられればよかったな。

そうすれば・・・。



2人はキラと同じこのヘリオポリスの工業カレッジに籍を置く、クラスメートだ。

ゼミも同じで、これからモルゲンレーテにある教授の研究室に向かう。



「ああ、もう!

 キラも怒りなさいよ!」



キラとの待ち合わせ場所についたミリアリアは、のんびり自分達を見ているキラへと唐突に迫った。

が、もちろんキラにはなんのことだか、わからないので、のんびりと首を傾げる。



「・・・ミリィ?

 何を怒ってるの?」

「サイったら、なんであんな女がいいのよ!」



キラに話を振ったはずのミリアリアは、キラの問い返しを聞いていなかった。

空中を見据え、拳を握って主張する。



「かわいいからじゃないか?」

「・・・・・・・・・トール」

「あ、ほら、顔は、な。

 性格はあれだけど」

「わかってるじゃない」



つい、ポロッと言ってしまったトールは、ミリアリアの発した低い声に危機感を覚えた。

慌てて言いつくろえば、ミリアリアからの視線が逸れ、トールは安堵のため息を漏らす。



「また、フレイと言い合ったの?」



ミリアリアとトールの言から、キラにも誰のことを言っているかわかった。

彼らの友人であるサイの婚約者で、一級下のフレイ。

お嬢様育ちの所為か、わがままなところがあり、同性には嫌われる傾向にあった。



「言い合ったんじゃないわよ。

 あっちが失礼なことばかり言うんだもの」

「なんて?」

「それが」

「ちょっと、ミリィ」



言いかけたミリアリアを、トールが小声で止める。

それにハッとして、ミリアリアも口を噤んだ。



「また、私のことなのね?」

「あ、ちが」

「もう、ミリィったら。

 私のことで、喧嘩したりしないで。

 私は気にしないから、ね?」



なんでもないことのようにキラが訊けば、ミリアリアは焦って否定する。

そんなミリアリアに、キラはふわっと微笑んだ。



***



「それにしても・・・。

 私、なんであんなにフレイに嫌われちゃったのかな?」



そういえば、と。

モルゲンレーテに向かうエレカの中で、キラが思い出したように言う。



「そんなの、決まってるじゃない」

「ちょっと、ミリィ」

「なによ、トール。

 良いじゃない、みんな知ってるわ。

 あのね、あれはね、嫉妬よ、嫉妬。

 キラが自分より綺麗だからよ」

「でも、フレイのが可愛いと思うわ。

 いつも女の子らしい格好してるし・・・」



言葉の途中で、ミリアリアがいかにもわざとらしく大きくため息を吐いて、キラは口を閉じた。



「ねぇえ、キラ。

 あなた、自分が女の子らしい格好じゃないって、自覚してるならさ。

 そのボーイッシュな服、やめなさいよ」

「だって、この方が動きやすいんだもん。

 スカートは慣れなくて、ちょっと」



月ではアスランについてまわっていたキラに、スカートは不向きで。

当時はまだ、キラに女の子らしい気持ちが表面に現れず、着飾ろうという気も起きなかった。



*** next

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