誰がために−66 | ||
キラは女の子です | ||
「・・・見られないって」 しばし呆然とキラを見つめ、ミリアリアはふっと息を吐く。 そっか、と呟き、俯いた。 「決めたんだ」 「うん」 「そう・・・」 顔を上げたミリアリアは、改めてキラを見る。 ミリアリアは躊躇いがちに、キラに訊いた。 「それが、キラの幸せなのね?」 「ええ」 「私が止めたって、無駄よね?」 「ごめん」 「いいけど。 ・・・はぁ」 ミリアリアがため息を吐いた。 すまなそうにしているキラに、ミリアリアは苦笑を浮かべる。 「仕方ないわね。 今のキラ、確かにいい感じだもん」 「今の、私?」 「自覚ないの? ・・・まぁ、幸せいっぱいって顔じゃあないけど。 とっても綺麗よ」 ニコリと微笑むミリアリアに、キラは戸惑った。 そのキラを、頭の先からつま先まで、ミリアリアの視線が辿る。 「同性の私から見ても、ね。 そんな男の子っぽい服でも、もう少年と間違われたりしないでしょうね」 「そ・・・う? ここのところ、ずっと軍服だったからかな。 スカートもだけど、上着もこういう服より動きづらかったし」 「やぁねぇ、キラったら。 そういう話じゃ、な・い・の!」 鼻先に指を突き付けられ、キラは驚いて身を引いた。 ミリアリアは、ふふっと楽しそうに笑う。 「なにか、あったでしょ?」 「なにかって、だから」 「彼と。 今度こそ、進展あったと見たわ」 言い切られ、キラの顔が瞬時に真っ赤になった。 あまりに素直な反応に、ミリアリアが唖然とする。 が、一拍置いて、なぜか不機嫌そうな顔になった。 「なんだ、やっぱり手が早かったんだ」 「あ、いや、その」 「大丈夫? ちゃんと、・・・避妊してくれた?」 「ミ、ミリィ!?」 「あら、大事なことよ。 私達は、まだ若いんですからね。 万が一にも」 「じゃ、なくて! ミリィったら、誤解してる!」 キラは慌ててミリアリアの口に手をあてて、話を止める。 顔をさらに赤くしながら、首をぶんぶんと横に振った。 と、その視界にすっかり存在を忘れていたトールが呆然とキラ達を見ているのが映る。 そのトールは、キラと目が合うと顔に血を上らせた。 「お、俺・・・。 先に部屋へ戻ってるからっ」 返事も待たずに駆け出す彼の背中を、キラは複雑な思いで見送る。 今の、絶対誤解された・・・! でも、引き留めてまで否定するのも・・・。 さらに、他の人達の注目まで集めている事に気付いた。 しかし彼らの顔つきから、幸い、話の内容までは聞こえていないらしいことを見て取る。 それでも、ここで話していては危ないと、キラはミリアリアを強引にラウンジから引っ張り出した。 辺りを見回し、人影の無いことを確認し、やっとミリアリアから手を離す。 声をひそめながら、キラは怒鳴った。 「まだ、最後までいってないの!」 「まだ、ね。 なんだ、つまらない」 「つまらなく、ない!」 「はい、はい。 もう、キラったら、やっぱり子供ね」 「子供って」 「なのに、もう生涯の伴侶を決めちゃった」 「しょ・・・、って・・・」 「そういうことじゃないの。 病めるときも、健やかなる時も。 アスランさんといるって決めたんでしょう? キラの未来は、あの人とあるのでしょう?」 「・・・うん」 キラの返事に、ミリアリアが微笑む。 「良かったね。 キラ、笑っていても、いつもどこか寂しそうだった。 でも、今は違うね」 「・・・うん、ありがとう、ミリィ」 ミリアリアの言葉を肯定するように、キラは目を潤ませながらも輝くような笑顔を親友の少女へと向けた。 *** next |
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