誰がために−55


キラは女の子です


「ま、ここなら邪魔は入らないわね」



もともとキラに与えられていた部屋へと場所を移し、ミリアリアが言った。

心配するとまずいからと、トールには部屋の内線から連絡してある。



「さて、何から話してもらおうかなぁ。

 ・・・なぁに?」



どことなく落ち着きの無いキラの仕草に、ミリアリアが眉を寄せた。

キラはしばし躊躇った後、重い口を開く。



「フレイとは、どう?」

「フレイ・・・って、ちょっと、キラ。

 あの子のことがなんだっていうの?」

「いや、だって。

 ミリィ、喧嘩してないかなって・・・」

「してるわよ。

 当然でしょ?

 ったく、お陰で寝るときしか帰ってこないわ。

 こっちも気楽でいいったら。

 ・・・ああ、もうっ。

 あんな子のこと、忘れちゃいなさいっ。

 まったくね、オーブに住んでいてあれだもん」

「でも、地球軍の人達は、あんな風に思っているんだろうね」

「それは・・・。

 そんなの、私もわからない。

 でも、みんなとは限らないでしょ?」

「だって」

「それじゃ、ね、キラ。

 アスランさんは、ナチュラルのことをどう思っている?

 聞いた?」

「アスランは、別に。

 私の両親とも親しかったし。

 ナチュラルとじゃなくて、地球軍と戦うって」

「他の人は?

 キラを連れて行った人とか、その前に迎えに来てくれた人もいたわね」

「・・・イザークさんは、あまりナチュラルのことは。

 ああ、でも。

 言い過ぎたみたいなことは言ってくれたの」

「ほらね、人それぞれなんだから」



コーディネイターを嫌うナチュラルがいれば、ナチュラルを嫌うコーディネイターだっている。

フレイは極端かもしれないが、どっちもどっちなのだ。



「じゃあ、もう、この話はこれまでね」



こくんと頷くキラに、ミリアリアは話題を変える。



「それで、アスランさんとは、どう?

 進展あった?」

「進展・・・って」

「そうよ。

 ちゃんと、告白した?

 好きって、言えた?」

「・・・言われた」

「やっぱり!

 そうよね、絶対そうだと思った。

 どう見ても、相思相愛って感じだもん。

 キスは、したわよね。

 それ以上は?}

「ミ、ミリィ!?」



既に頬を赤く染めていたキラは、さらに真っ赤になる。

そのキラの鼻先へ、ミリアリアは人差し指を突きつけた。



「あれからずっと、あの人の部屋にいたんでしょう?」

「そう・・・だけど」

「でしょ。

 でも・・・、その様子じゃ、まだか」

「当たり前でしょう!?」

「そんなに、恥ずかしがらなくても。

 キラったら、大事にされてるわね、ほんと。

 別れがたくなっちゃうんじゃない?」



言われた途端に息を呑むキラに、ミリアリアは答えを見つける。

やっぱり、と。

少し寂しげに呟くミリアリアに、キラは思っていたことを吐き出した。



「この艦を降りたら、次にいつ会えるかわからない」

「そうね」

「戦争が終わるまで、きっと会えない。

 終わっても、会えるとは限らない・・・」

「・・・キラ?」

「だって、アスランは戦っているんですもの。

 今も。

 今も、アスランは、・・・出撃したの」

「キラ」



膝の上に置かれたキラの手が震えている。

なんと言ったらいいかわからず、ミリアリアも押し黙った。



「アスラン、ここに戻ってくるって言った。

 私のいるここに、って。

 ここにいたい、私」

「・・・アスランさんには言ったの?」

「ううん、言ってない。

 反対されたら、困るもの」

「って、だけど・・・」



いたいと言って、ここに残れるわけではないだろう。

ミリアリアにも、キラの気持ちはわからないでもなかった。

好きな相手と一緒にいたいのは、誰でも同じ。

まして、ここでの別れは、再会を約束されるものではないのだから。



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