誰がために−52


キラは女の子です


「ミリィ、入るよ?」

「トール・・・」



開く扉に、待ち人・・・アスランかと顔を上げたミリアリアは、そこに自分の恋人を見て、落胆したように名を呟いた。

あからさまなそれに、トールが心配そうに近寄る。



「どうした、ミリィ?」

「・・・うん、ちょっと」

「まだ、食べてないだろ?」

「今、食べたくない」

「・・・ほんとに、どうしたんだ?

 フレイに訊いても答えないし」

「・・・フレイ、どうだった?」

「どう、って・・・」



俯き加減に目を逸らしているミリアリアの前に、トールは屈み込んだ。

膝を床について、ベットに腰掛けたミリアリアを見上げる。



「やっぱり、フレイとなんかあったんだな。

 喧嘩でもした?

 らしくないぞ、ミリィ。

 いつもなら、怒って逆に元気なのにさ」

「フレイなんか、どうでもいいの!」

「ミリィ!?」



キッと顔を上げたミリアリアに、驚いたトールは上体を逸らした。

慌ててバランスを立て直す。



「な、何!?」

「キラっ。

 キラを泣かせちゃったの」

「な、なんで・・・?

 ミリィが?」

「フレイよ!

 フレイが・・・、ううん。

 私が、もっと早く止めていれば良かったのよ」

「・・・フレイがどうしたって?」

「フレイが、キラに・・・。

 キラ、に・・・」



口を開いては、閉じているミリアリアに、トールは先を促した。

躊躇うように話し出したその内容に、トールの目も次第に険しくなる。



「あいつ・・・」



吐き捨てるようなその声に、ミリアリアはトールに抱きついた。

ギュッと首にしがみつかれ、勢いでよろけたトールが尻餅をつく。



「・・・ミリィ」

「トール。

 私じゃ、ダメだったの。

 あんな風なキラ、見たこと無かったわ。

 親友だって思っていたのに・・・。

 私じゃ、慰められなかった」

「・・・仕方ないよ」



諦めたような言い方に、ミリアリアがピクッと反応した。

顔を上げたミリアリアと、トールの目が合う。

涙に滲んだ目が、トールを睨んでいた。

今度はトールが目を逸らす。



「だって、そうだろう?

 ナチュラルとコーディネイターがどうって話なんだから」

「何よ、トールまでキラを差別するわけ!?」

「違う!

 違うって、ミリィ。

 話は最後まで聞いてくれよ。

 俺だって、キラがコーディネイターかどうかなんて、どうでもいいと思う。

 だけど、キラにとっては、違うんじゃないかな。

 いや、差別するとかじゃないぜ?

 そうじゃなくて・・・、何て言ったらいいのかなぁ?

 俺にも、よくわからないや」

「わからない、って・・・トール?」



がしがしと頭を掻くトールに、ミリアリアも気の抜けたような声になった。



***



「っと、失礼」

「「!」」



自分達の体勢に気づいたミリアリアとトールは、弾けるように離れる。

そして、部屋から出ていこうとするアスランの背に、ミリアリアが慌てて声を掛けた。



「待ってください!」

「・・・取り込み中では?」

「なんでもないんです!

 それより、話を!」



引き留めるミリアリアに、もとより話を聞きたくてきたアスランは、踵を返す。

床に座り込んでしまった彼女に手を差し伸べ、立たせた。



***



「キラを、お願いします。

 私は、私達はキラのこと、好きだって伝えてください」

「わかった」

「それと・・・。

 できれば、キラはこちらへは戻らせない方がいいと思います」

「ああ、そうしよう。

 だが、君達は会えなくなるが?」

「キラが、また泣くよりいいです」



寂しそうに言うミリアリアに、アスランの頬が緩む。

ミリアリアが、本当にキラの事を考えてくれていることがわかったからだ。



*** next

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