誰がために−47


キラは女の子です


「ミリィ、フレイ」

「あら・・・、おはよう、キラ」

「ミリィ、おはよう」



キラがミリアリア達の部屋に入ると、そこには身支度の整ったミリアリアだけがいた。

キラの声に振り返ったミリアリアは、意外そうな顔をする。

朝の挨拶を交わしながらも、じっと視線を向けるミリアリアの言いたいことを察し、キラが照れ笑いを浮かべた。



「ちょっと、眠りが浅かったみたいで。

 時間通りに起きられたの」

「それにしたって・・・。

 なぁに、冷たいシャワーでも被ったわけ?」

「・・・内緒」



クスッと笑われて、キラは話を逸らそうとする。

そわそわと部屋を見回し、しかし首を傾げた。



「フレイは?

 いないの?」

「ヘアメイク中よ。

 なかなかうまくいかないんですって」



疲れたように答えるミリアリアに、キラは彼女が長い時間待たされているらしいと気づく。



「先に、行ってもいいんじゃない?」

「ダメ。

 ダメって言うのよ、あの子」

「まぁ、そうね。

 慣れない場所に、一人じゃ・・・」

「違うと思うわ」



きっぱりと、ミリアリアはキラの言わんとするところを否定した。

さらに続けて口を開くミリアリアは、ちょっと目が据わっている・・・ような気がする。



「あれはね、ただのわがままよ。

 一人がイヤだっていうのは、本当かもしれないけどね。

 夕べだって・・・」



ミリアリアが言いかけたところで、部屋の奥の扉がスライドして、フレイが出てきた。

キラが見る限り、いつものと変わりのない髪型のようだったが、まだ気にしているらしい。

部屋の壁に掛かった鏡に全身を映し始めた。



「ミリィ、まだ待っててね」

「はい、はい。

 まだ掛かるの?」

「ん・・・、どうもうまくまとまらないのよ。

 せめてカーラーがあれば良かったんだけどな」

「そんなもの、あるわけないでしょ」

「あら、ここにだって・・・」



ふと顔を上げてミリアリアの方を見たフレイと、キラの目が合う。

ミリアリアと向き合って座っていたキラは、にっこりと笑いかけた。



「おはよう、フレイ」

「来ていたんだ・・・」



キラとは逆に、フレイは笑みを消す。

すっと視線を逸らし掛けたフレイだったが、何かに驚いたようにキラに目を戻した。



「ちょっと、何よ。

 ザフトに入ったわけ?」

「あ、いえ、これは」

「それ、軍服なんでしょ?

 やっぱりコーディネイターね。

 戦争がしたいなんてね」

「そんな」

「ちょっと、フレイ!

 口を慎みなさいよ!」

「なによ、ミリィ。

 庇うことないじゃない。

 ほんとのことでしょ?

 コーディネイターが、戦争を始めたんじゃないの」



フレイの言い様に、ミリアリアが立ち上がって抗議するが、フレイは鼻で笑う。

意に介さずにさらに続けたフレイにミリアリアが諫める前に、今度はキラが叫んだ。



「違う!

 違うわ、フレイ。

 それは、違う」

「違わないわよ。

 プラントが、宣戦布告したんじゃないの。

 ほら、全部コーディネイターがいけないのよ」

「違う、違うわ!

 地球が、コロニーに核を落としたからでしょう?」

「ふん。

 プラントが、地球に逆らったからじゃない。

 ヘリオポリスまで、壊しちゃったわ。

 中立のヘリオポリスまでよ」

「壊したのは、地球軍よ!」

「何よ、キラは見たわけ、それを?」

「それ、は・・・」

「ふふん。

 どうせ、あの幼なじみって男にそう教えられたんでしょう?」



確かにその通りだったので、それについて否定しきれず、キラは唇を噛む。

代わって、ミリアリアが口を開いた。



「トールも言っていたわよ。

 地球軍の艦が、ヘリオポリスの中で砲撃をしてた、って。

 それが、コロニーを支えるシャフトを切ってしまっていた、って」



サイも、と加えられ、フレイも口を閉じるかに見えた・・・が。



「攻撃してきたのがいけないのよ」



*** next

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